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(回答先: 【長崎幼児殺害事件】 上:大人たち 投稿者 エンセン 日時 2003 年 8 月 11 日 20:43:53)
更生に被害者への視点
埼玉県北川辺町の飯島京子さんは長男の友樹さん(当時15)を失った悲しみを静かに語った。
5月9日、京都医療少年院。相手は出院に向けた教育を受けている33人だった。
飯島さんは99年、少年9人による集団暴行で息子を奪われた。生後10日目の写真から高校入学直後の写真までを、話しながら掲げると「食い入るようにみてくれた」。
同じように、16歳の息子が2人の少年の暴行で亡くなった、滋賀県の青木和代さんも語りかけた。2人が語り終えるころ、少年たちの顔は少し紅潮していたという。
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97年、当時14歳の少年が逮捕された神戸の連続殺傷事件は、少年法見直し、とりわけ刑事処分可能年齢の引き下げ論議に火をつけた。しかし、この事件をきっかけに変わったのは、少年法だけではなかった。
「更生とは何か」が問われ、少年院は「被害者を視野に入れた教育」を試行錯誤しながら始めた。重大事件の少年は少年院の収容期間が長くなり、罪や被害と向き合えるようにすることが目標の一つになった。
飯島さんらは、NPO法人「犯罪被害者支援の会 アピュイ」に所属する。昨年11月から、受け入れてくれる少年院などで体験を語っている。
少年たちからは「自分たちは憎まれて当然なのに、優しい言葉までかけてくれた。驚いたし、恥ずかしかった」などの感想が寄せられたという。
胸中は複雑だ。「人の命を奪ったら命で償ってほしい。だが、いずれ社会に出るなら、自分のしたことと向き合うために、被害者の生の声を聴いてほしい」と思う。
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もう一つの変化は、少年事件にかかわる情報のあり方だ。
神戸事件で、神戸家裁は97年10月の審判終了時、A4判8枚にわたる決定の要旨を報道発表した。「詳細で、非公開を原則とした少年法の趣旨に反する」と、少年の付添人が抗議した。当時は異例の対応だったが、それ以後、20以上の事件で家裁が決定要旨を発表している。
少年法に詳しい立命館大の葛野尋之教授は、決定要旨の内容は「まだ試行段階」としながらも、要旨の公表を評価する。
「非行が映しだした問題を人々が真剣に受け止めて、自省的に社会のあり方を変えていくために必要な情報は、家裁裁判官は積極的に社会に説明するべきだ。少年が特定されず、本人や関係者を傷つけてはならないが、少年司法に、市民の理解と信頼は欠かせない」
衝撃を与えた少年事件は、新たな対応策を社会に模索させる。米国では、コロラド州・コロンバイン高校銃乱射事件(99年)を受け、当時のクリントン大統領が青少年暴力の原因と防止策の調査を命じた。
国立衛生研究所などが司法の専門家と共に、暴力の危険を高める因子や、予防策、再犯防止プログラムについて調べた。
「青少年の凶悪事件は、被害者や加害者だけでなく、社会や国に長く傷跡を残す」。そう考え、公衆衛生の問題として取り組んだことが特徴だ。
報告書は、少年の環境や家族にも働きかけるプログラムが、さらなる暴力を防ぐためにも効果的だと評価している。
国立保健医療科学院の小林秀資院長は、この報告書(01年)を翻訳して、同院のホームページに載せている。「日本でそのまま当てはまるわけではないが、取り組みの姿勢は参考になる」
12歳の少年が4歳児を殺害したとして補導された長崎事件から、この社会はどんな対応策を導くのだろうか。
(朝日新聞2003年8月10日朝刊紙面)
http://www.asahi.com/special/nagasaki/030810.html