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長崎・幼児誘拐殺人事件 広がる防犯カメラ設置−−少年補導のきっかけに
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◇問われるプライバシー保護
◇法律、条例制定の動き
長崎市の幼児誘拐殺人事件で、中学1年の少年(12)を補導するきっかけとなったのは商店街に設置された防犯カメラだった。今、全国で犯罪防止を目的に、防犯カメラの設置が広がっている。プライバシー保護の観点などから運用の透明化が求められる中、法律や条例制定の動きが出ている。
【長崎市のケース】
少年の姿を写していたのは「浜市商店連合会」(約160店加盟)が設置したカメラだった。連合会では、店のシャッターが破られるなどの被害が相次いだため、先月9日、約360メートルの道路沿いに18台を設置した。
連合会では、プライバシー保護の観点から既に設置している他地域の状況などを調査したり、問題点などを理事会で半年間にわたり議論した。カメラは、10日間分の映像をハードディスクに記録でき、それ以前の映像は自動的に消される。通常は映像をモニターせず、記録映像は、幹部役員のみが知るパスワードを使わないと見られないようにした。
映像の提供を警察から求められた場合、運用は「理事会にはかって決める」と規定し、緊急の場合は、役員ら幹部に連絡し了承を得る。今回は、県警の「映像を見たい」との申し出を受けて、役員らへの電話連絡で了承を得たうえで、映像を提供したという。
連合会の松田祥吾副会長は「安心して買い物できる街にするために導入したカメラが、大事件解決へのきっかけになるとは」と話している。
【カメラの実情】
街頭などに設置されている防犯カメラは、主に3分類される。それぞれに、捜査への利用や映像管理など運用の規則が定められている。
警察庁が01年度から設置を進めているスーパー防犯灯。緊急時に通報ボタンを押すと、警察官と通報者がインターホンで直接話ができ、周囲の映像が警察のモニターに映し出される。映像は、24〜48時間単位で上書きされる。消去前の映像は、決められた取扱者のみ見ることができる。
各県警が設置するカメラもある。警視庁では昨年2月、新宿・歌舞伎町地区に50台を設置、今年新たに、池袋や渋谷地区にも計30台を備え付ける。映像は1週間単位で上書きされ、捜査に必要な場合は、該当警察署などへの任意提出の手続きを取っている。
長崎市のケース同様、商店街や自治体などが独自に設置するカメラもある。東京・上野の宝飾問屋街で先月、設置したカメラの映像は、24時間で上書き消去され、捜査目的以外に外部には出さない規定だ。
カメラ設置により、いずれもひったくりの件数が減るなど防犯面で効果があり、歌舞伎町地区では約1年間で29件の事件検挙につながるなど、捜査にも有効性が認められるという。
【条例や法制化の動き】
東京都杉並区は、区内の防犯カメラの設置・運用基準を検討するため、専門家4人による検討会を今月発足させ、10月には運用のルールを定めた全国初の条例作りに着手する。同区は「指針として条例を定めるメリットは大きい」と説明する。
また、国会では民主党が、国の行政機関がカメラを設置する際の基準とする法案をまとめた。設置場所や期間・目的を明示する。同時に映像について本人による開示請求や苦情処理に関する手続きを明確化することなどを盛り込んでいる。
◇ルール確立が課題−−石村耕治・白鴎大教授(情報法、税法)の話
プライバシー保護のため設置しないという考えは合意が得られにくい時代で、長崎の事件を見ても有用性は否定できない。問題は、どう運用されているのか一般市民が知らずに設置が増えていることだ。設置や運用のルールの確立などが今後の課題だ。
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◇市民団体、監視網強化に危ぐ表明
長崎市の幼児誘拐殺人事件で、防犯カメラ映像が中1少年補導の決め手になったが、福岡市の市民団体が16日、「警察による監視網強化が犯罪を防ぐことにはならない」とする声明を出し、九州の報道機関などに送った。
石村善治・福岡大名誉教授(憲法学)ら3人が共同代表を務め、九州各地の学者・市民でつくる「住基ネット差し止め裁判を進める会・九州」の声明では、「監視網の強化が市民の安全を守るただ一つの方法という錯覚が国民のなかに染み込みつつある」としている。さらに「『被害者も加害者も子供』の今回の事件は深刻で根が深い。警察を中軸とした監視網の強化で防ぐことにはならず、むしろ犯罪は監視の目をくぐり、より巧妙、凶悪となるに違いない」と指摘している。【反田昌平、田倉直彦】
(2003年7月17日毎日新聞朝刊から)
http://www.mainichi.co.jp/news/article/200307/17m/056.html