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(回答先: 朝日の闇 投稿者 再び問う 日時 2003 年 7 月 12 日 02:12:29)
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1989年(平成元年)4月20日 土曜日
朝日新聞夕刊1面
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写’89 地球は何色?
サンゴ汚したK・Yってだれだ
これは一体なんのつもりだろう。沖縄・八重山群島西表島の西端、崎山湾へ、直径8メートルという巨大なアザミサンゴを撮影に行った私たちの同僚は、この「K・Y」のイニシャルを見つけたとき、しばし言葉を失った。
巨大サンゴの発見は、七年前。水深一五メートルのなだらかな斜面に、おわんを伏せたような形。高さ四メートル、周囲は二十メートルもあって、世界最大とギネスブックも認め、環境庁はその翌年、周辺を、人の手を 加えてはならない海洋初の「自然環境保全地域」と「海中特別地区」に 指定した。
たちまち有名になったことが、巨大サンゴを無残な姿にした。島を訪れるダイバーは年間三千人にも膨れあがって、よく見るとサンゴは、空気ボンベがぶつかった跡やらで、もはや満身傷だらけ。それもたやすく消えない傷なのだ。
日本人は、落書きにかけては今や世界に冠たる民族かもしれない。だけどこれは、将来の人たちが見たら、八〇年代日本人の記念碑になるに違いない。
百年単位で育ってきたものを、瞬時に傷つけて恥じない、精神の貧しさの、すさんだ心の……。
にしても、一体「K・Y」ってだれだ。
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1989年(平成元年)5月16日 火曜日
朝日新聞朝刊1面
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おわび
本社取材に行き過ぎ 西表島沖のサンゴ撮影
四月二十日付の朝日新聞夕刊一面に掲載した写’89「地球は何色? サンゴ汚したK・Yってだれだ」に関し、地元の沖縄県竹富町ダイビング組合員から「サンゴに書かれた落書きは、取材者によるものではないか」 との指摘がありました。本社で調査をした結果、取材に行き過ぎがあったことがわかりました。
西表島崎山湾沖にあるアザミサンゴの周辺一帯に、いくつかの落書きがありました。この取材に当たったカメラマン二人のうち一人が、そのうちの「KY」という落書きについて、撮影効果を上げるため、うっすらと残っていた部分を水中ストロボの柄でこすり、白い石灰質をさらに露出させたものです。
同海域は巨大なアザミサンゴが見つかったため、海中特別地区に指定されております。
この取材は本来、自然破壊の現状を訴え、報道することが目的でしたが、この行為は、明らかにこれに反する行き過ぎであり、朝日新聞社として深くおわび致します。
朝日新聞社は十五日付で、取材カメラマンと責任者である東京本社の編集局長、写真部長に対し、処罰の措置をとりました。
(3面に編集局長の「反省」を掲載しました。)
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1989年(平成元年)5月16日 火曜日
朝日新聞朝刊3面
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サンゴ撮影 行き過ぎ取材について
朝日新聞東京本社編集局長 伊藤 邦男
四月二十日付の本紙夕刊一面「地球は何色? サンゴ汚したK・Yってだれだ」の写真について本日、一面に「おわび」を掲載いたしました。読者、関係者はじめ、みなさまに大変申し訳なく、心からおわびするとともに、この事件について、本社の考えを述べさせていただき、ご理解を得たいと思います。
今回の報道には、大きく分けて二つの点で誤りがありました。
まず、報道する「事実」に人為的に手を加えた、ということです。いうまでもないことですが、私たち報道人の使命は、事実をありのままに読者にお伝えすることです。取材対象に食い込み、新しいニュースを早く正確に伝えることに努力してきました。どんな目的があろうと、新聞人として、事実に手を加えるなどは許されることではありません。
一市民としても、守るべき環境、天然記念物、文化財に傷をつけるといったことが許されないことはいうまでもありません。自然を大切にしよう、という運動はますます広く、大きくしていかねばなりません。これは新聞記者やカメラマンの問題としてでなく、人間としての務めだと思っています。まして「自然を守ろう」という企画記事の中でのこのような行為は、弁解の余地のないものです。
今回のような間違いをなくすため、取材にあたっての基本的姿勢、環境や文化財の保護について、全編集局内で再教育することをお約束いたします。
この事件がテレビで報道されて以来、「朝日新聞には環境問題を報道する資格がない」といった、多数の厳しいご意見もいただきました。おしかりは当然であり、深刻に受け止めております。私たちはこれまで紙面などを通じ、緑や文化財を守るためにさまざまなキャンペーンを行ってきましたが、今後もその姿勢は保ち続け、いっそう力を尽くすことをお誓いします。
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1989年(平成元年)5月17日 水曜日
朝日新聞朝刊1面
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本社、編集局長を更迭
写真部長も 「サンゴ取材」で責任
朝日新聞社は十六日、写真部員が沖縄のサンゴ礁撮影で誤った取材をし、貴重な天然資源を傷つけたことについて、監督責任者である東京本社編集局長と写真部長を更迭する、次の人事異動を行った。
社長付(東京本社編集局長)取締役伊藤邦男
▽東京本社編集局長(同編集局次長)松下宗之
▽同編集局長付(同写真部長)梅津禎三
▽同写真部長兼務 同編集局次長夏目求
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天声人語
まったく弁解の余地のない事件が起きた。本社カメラマンがサンゴを傷つけ「落書き」を撮影した。何とも言えぬ気持ちだ。申し訳なさに、腹立たしさ、重苦しさがまじり合っている▼とんでもないことをしたものだ。KYと書かれた落書きを写し「サンゴを汚したK・Yってだれだ」という記事をつけた。自然を守ろう、汚すまい、と訴える記事である。ところがその写真の撮影者自身がサンゴに傷をつけていた。沖縄の西表島崎山湾沖は巨大なアザミサンゴがあり海中特別地区に指定されている▼読者から怒りの電話がたくさんかかった。もっともなことである。「長年、朝日新聞を読んでいるが裏切られた思いだ」と、多数の人からきつくしかられた。平生、他人のことは厳しく追及し、書く新聞だ。「身内に甘いのではないか」とも指摘された。「記者たちの高慢な気持ちが事件に表れている」との声が耳に痛い▼「自然保護に力を入れた報道姿勢に共感していただけに残念」という苦言も多かった。たしかに本紙も、またこの欄も、自然に親しみ、自然を愛する人々のさまざまな活動を紹介し、ともすれば失われゆく自然を守る努力がたいせつだ、と訴えてきた。常軌を逸した行動は、これまでの報道を帳消しにしかねない▼美しいサンゴに無残な傷が残る。どれほどの年月をへて育って来たものか。なかなか消えるものではあるまい。大自然への乱暴な行為を、本当に申し訳なく思う。同時に、本紙と読者との間の信頼関係に大きな傷がついたことが、まことに残念だ。これも、なかなか消えないだろう▼かつて「伊藤律との会見記」のような虚報を、紙面にのせたことがあった。そんな時に生ずる信頼感の傷を消すためには、報道の正確さを期して、長い間、地味で謙虚な努力を続ける以外にない。今回もしかり。厳しい自省に立ち、地道な努力を愚直に、毎日、積み重ねるほかはない、と考える。
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