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(回答先: Re: 《共同的資本主義論》の生まれ 投稿者 マルハナバチ 日時 2003 年 7 月 31 日 21:02:11)
> 馬場さん、今晩は。
こんばんは.
> 相変わらず私にとって《共同的資本主義論》は難物なのですが、宜しければお伺いさせていただきたい事があります。
はい.
> 何にしてもシステム設計はその解決すべき問題と、解法を導いている趣旨があって実現すると思うのですが、《共同的資本主義論》の生まれは、何を実現させたいという願いによるものなのか教えていただけませんか。
直接には我々(私)の「現在の苦境から何とか脱出したいという願い」と言えるとは思いますが...
それ(苦境)が逆に,このようなことにヒマをつぶす余暇を与えてくれたとも言えます.
これを最初に書いたのは,某自然科学系のメーリングリストです.最初のテキストの末尾で
ご紹介した"Fractional Reserve Banking as Economic Parasitism"は実はその
リストの主宰者であるウラジミールが2002年5月に発表したものです.このリストでは経済学
のトピックを扱うことはほとんど無いのですが,たまたま興味深い経済学関係のリンクがポスト
されることがあり,「アメリカ連邦準備銀行の秘密」に関して書かれた論文(末尾リンク参照)を
読んだのがきっかけでなかったかと思います.
> 経済論に慣れた方でしたら、論考そのものから理解できると思うのですが、私にはまだ出来ません。
私の論稿を読むのにはとくに専門的予備知識は必要ないと思いますが,心当たりがあるとすれ
ば,多分「通貨」と呼ばれるものの実態に対する直感的な把握ではないかと思います.もちろん,
「通貨」と言えば子どもにも通じますが,これは実体として「キャッシュそのもの」を意味している
のではないということです.ハイ・パワード・マネーとかマネー・サプライとかの区分がありますが...
それと,銀行のいわゆる「信用創造」と呼ばれているメカニズムの理解が必要だと思います.
> 私は境界が見通しやすく、制度設計の趣旨も地域と結びついて解りやすい「地域通貨」の理解からはじめて、「地域通貨」に対抗し、時には潰そうとする国家通貨の性格が逆照射されて見えてくる事へと向かって金融の実世界を認識しようと思っていました。
そういう戦略もあると思います.とても興味深く思ってますし,その有効性に疑問があるというの
でもありませんが,私自身は前便でも触れたようにあまり買ってません.
たとえば,上記のリストで議論してるうちに,ゲゼルの「劣化する貨幣」理論はダメだという結論に
達しました.劣化する貨幣というのはご存知かと思いますが,時間とともに価値を失ってゆくという
一種の地域通貨で,これはちょうど利子を裏返したようなもの,つまりマイナス金利と呼べるもの
です.確かにこの貨幣は早く人に渡してしまいたいという動機から流通速度を加速する作用があ
るので,一時的に経済活動が活発になる可能性はあります.しかし,長期的には,その貨幣自体
が忌避されて流通しなくなってしまうことは避けられません.《共同的資本論》におけるゼロ金利下
では,お金は経済活動に対し,完全に中立でそれ自体は増えも減りもしません.ただ貨幣が移動
する瞬間においてのみ,運動抵抗としてのトランザクションタックスがかかるという仕組みです.
> 趣旨とは、いわば、生みへの“想い”と言えるのではないでしょうか。
そうですね.「貨幣」とか「銀行」のようなほとんど水や空気と同じくらいなじんだシステムに
一度深刻な疑問を突きつけるというところが出発点かなという気もしますが.
> 通貨が必然的にその働く国土や人への結ぼれ方を孕むものなら、これは国生みへの“想い”かと推します。
私は他に代わるものがないのでとりあえず政府とか政府貨幣ということばを使っていますが,
本当はまったく違う呼び方をしなくてはならないのではないか?という気もしています.
> カオスやアトラクタは大変に興味がありますし、私の作業を環境科学等のフィールドと統合する時(エントロピーとともに)避けられない媒介ツールだろうと思っています。
私は(公言したことはありませんが)かなりインチキなところもあるような気がしています...
> それにしてもまず私には経済学…です。
全銀協のリーフレットから「信用創造」の部分の説明をちょっと端折って引用します.
「XさんがA銀行に100万円の預金をしたとします.A銀行はそのうちの10万円を金庫に残し,
90万円をP社に貸し出します.P社はこのお金でQ社から90万円の資材を購入し,Q社はそ
れをB銀行に預金しました.この結果預金の全体は190万円,つまりXさんの預金額の1.9倍
になりました.このようにして最初の預金の9倍,10倍の預金を創り出すことができます.
これを銀行の信用創造機能といいます.」
ロスチャイルドが大金持ちになるきっかけについては色々な説がありますが,うろ覚えにな
ってしまいますので,フィクションと思ってください.「R家はある王室の金庫番となったが,
その金庫に退蔵されている金貨を《運用》して大金を儲け,ついには王室財産をしのぐほど
になった,とします.これは犯罪にならないでしょうか?」
最初の話と後の話はまったく違うもののように聞こえるかもしれませんが,実はまったく同じ
事柄について述べています.上記した論文のタイトルにある "Fractional Reserve Banking"
という用語は,http://www.investorwords.com/によると,次のように定義されています.
fractional reserve banking:
A banking system in which only a fraction of the total deposits
managed by a bank must be kept in reserve. The amount of the deposits
equals the amount of the reserves times the deposit multiplier.
In the U.S., this system is maintained by the Federal Reserve Board.
部分的払い戻し準備銀行制(仮訳):
銀行で取り扱っている全預金の一部だけが払い戻し準備金として保管される銀行システム.
預金額は準備金×準備金乗数に等しい.米国ではこのシステムは連邦準備理事会が監理.
Fractional Reserve Banking システムというのは,預かった金庫の中身を勝手に
「運用」して巨富を築いたR家のやり方と手法的にはなんら異なるものではないということが
ご理解頂けるでしょうか?日本語でこの fractional reserve banking という用語を何と訳し
ているのか探しましたが,見つかりません.アメリカではこのこと (fractional) に関して
執拗な議論が続いていますが国内では翻訳されることすらなかったのではないでしょうか?
http://www.independent.org/archive/banking.html
"Banks Cannot Create Money" by Hulsmann
"Should We Let Banks Create Money" by Selgin
英治