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(回答先: 「知恵の輪」で大脳活発化、うつ病治療に効果?(読売新聞) 投稿者 シジミ(ミミズ改め) 日時 2003 年 7 月 22 日 05:19:24)
http://medwave2.nikkeibp.co.jp/wcs/med/leaf?CID=onair/medwave/tpic/258187
20歳代前半はうつ病を一番発症しやすい年代だが、その年代の男女847人を対象としたニュージーランドの研究で、「セロトニン」という脳内物質に関わる遺伝子の個人差が、うつ病の発症しやすさを左右していることがわかった。失恋や失業など大きなストレスが一度にかかった時、うつ病になる確率には遺伝子の違いにより2倍以上の差が現れたという。
この遺伝子の多型は性格や気質に関連していると言われており、既にうつ病になっている人で特定の遺伝子型が多いことはわかっていたが、うつ病の「発症」との関連が示されたのは初めて。研究結果は、Science誌7月18日号に掲載された。
この研究は、ある地区で生まれた子供を継続的に追跡し、発達や病気の発症率などに関連した遺伝情報などを調べるコホート追跡研究「Dunedin Multidiciplinary Health and Development Study」。ニュージーランドのダニーディン(Dunedin)で、1972年4月から1973年3月に生まれた子供847人を定期的に診察、成人してからは本人の同意の下に調査票にも答えてもらった。
今回、うつ病の発症に関与していることがわかった遺伝子は、セロトニントランスポーター(5-HTT)遺伝子の上流にあるプロモーター領域の遺伝子。5-HTTは、セロトニンによる脳内の情報伝達を担う蛋白で、神経終末から放出されたセロトニンを再び取り込む役割を果たしている。
5-HTTのプロモーター領域は、5-HTTの発現量をコントロールしているが、人によって長さが違う。長いタイプ(l型)の遺伝子を持つ人では、短いタイプ(s型)の遺伝子の人よりも、5-HTTがたくさん発現していることがわかっている。
このように同じ遺伝子でもタイプが違うことを「多型」と呼ぶ。私たちは父親と母親から一組ずつ遺伝子のセットを受け継いでいるので、多型の組み合わせは、両親からl型を受け継いだ「l/l型」、s型を受け継いだ「s/s型」、片方ずつ違う遺伝子を受け継いだ「l/s型」の3通りになる。研究の参加者ではl/s型が51%と最も多く、次いでl/l型が31%、s/s型が17%だった。
研究グループは全員に、21歳の誕生日から26歳の誕生日までに起こった「ストレスの多い出来事」を記録するよう依頼。パートナーとの別離、失業、親しい人の死去などの「ストレス事象」の数と、うつ病・うつ状態になる確率に、5-HTT遺伝子のプロモーター領域多型がどう関わっているかを調べた。
その結果、s/s型やl/s型の人、つまり一つ以上s型の遺伝子を持っている人では、ストレス事象の数が多い人ほどうつ病の発症率が高まることが判明。一方、l/l型の人、つまり二つともl型の遺伝子を持っている人では、ストレス事象の数とうつ病の発症率とには関連がみられなかった。
さらに、こうしたストレス事象が短い期間に二つ重なった人だけで調べると、s/s型の人は43%、l/s型の人は33%がうつ病を発症。ところが、l/l型の人では発症率が17%で、s型の遺伝子を持つ人より明らかに「ストレスに強い」ことがわかった。なお、多型の頻度や多型とうつ病発症との関連に、男女差は認められなかった。
ちなみに、5-HTT遺伝子のプロモーター領域多型の頻度は人種による差が大きく、日本人にはl/l型の人はほとんどいない。どうやら我々日本人は、ストレスに弱い人種だということになりそうだ。
この論文のタイトルは、「Influence of Life Stress on Depression: Moderation by a Polymorphism in the 5-HTT Gene」。アブストラクトは、こちらまで。(内山郁子)