現在地 HOME > 掲示板 > 国家破産28 > 655.html ★阿修羅♪ |
|
来年の次期年金改革をめぐる論議が最終コーナーに差し掛かっている。
社会保障審議会年金部会の意見書案に続き、坂口厚生労働相も改革試案を公表した。
年金制度への不信感を、いかにしたら払拭(ふっしょく)できるのか。年金改革の課題は、この一点に尽きる。若い世代が支え手になることを拒否すれば、賦課方式の年金制度は、たちまち崩壊するからだ。
だが、示された改革案の中身は不十分で、不信感の払拭にはほど遠い。
問題点は二つある。
第一は、改革の前提となる財源の確保だ。基礎年金の国庫負担を、来年には三分の一から二分の一に引き上げることが法律で決まっている。
制度の安定と世代間の不公平緩和には欠かせない措置だが、二兆七千億円に上る財源のめどは全くついていない。意見書案や試案も明示を避けている。
財源には、全世代が広く、薄く負担し合う消費税の福祉目的税化しかない。しかし、国民の反発を恐れ、政治が正面から取り組むことを避けてきた。悪(あ)しきポピュリズムの典型といえよう。
小泉首相も消費税論議の必要性は認めながら、在任中の消費税引き上げについては再三否定している。もちろん、引き上げるとしても、ある程度経済が回復してからになるのは当然だが、道筋をつけることは必要である。それさえしないのでは、政治の責任放棄ではないか。
第二は、給付と負担のバランスだ。年金を支える現役世代は減り、受給する高齢世代は増え続ける。少子高齢化が進むほど、現役世代の負担は重くなる。
改革案では、現役世代の保険料に上限を設定し、その範囲内で給付水準を調整する新方式を提唱した。従来よりも現役世代に配慮した方式だが、それでも長期にわたって徐々に保険料は上がり、給付は下がる。これでは若い世代の理解は得られない。
年金改革には、全世代が満足する「最適解」はない。それぞれの世代が痛みを分かち合うしかない。高齢者に手厚い公的年金控除を縮小するなどし、年金財源に回すこともやむを得ないだろう。
約百四十七兆円に上る巨額な年金積立金の活用も重要だ。坂口厚労相は、年金積立金を九十五年間かけて取り崩し、給付に回すという提案をしている。もっと期間を短縮し、保険料の上昇と給付の減少をできる限り抑える工夫を、さらに検討すべきだ。
年金改革は一筋縄ではいかない。国民に率直に痛みを語り、合意を得る。これこそ、政治の仕事である。
(2003/9/5/23:27 読売新聞 無断転載禁止)