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国内生保大手10社の2003年3月期決算が先週末に出揃った。保険契約者の生保離れ、株安、逆ざやの3重苦が引き続き財務基盤を圧迫しており、特に株安の影響が深刻となっている。スタンダード&プアーズは本日、生保3社の格下げを発表した(*)。破綻前の予定利率引き下げ制度導入を機に生保離れが加速するおそれがあるなど、事業基盤の一段の悪化も懸念され、日本の生命保険業界の中期的見通しは引き続きネガティブである。
(*)本日付プレス・リリース「S&P、日本、住友、朝日の3生保を格下げ」参照
株安が生保の財務力を着実に蝕んでいる。東証株価指数(TOPIX)が1年間で26%下落した結果、主要10社の株式減損処理額は前の期を上回る1兆7,500億円に達した。株式含み損益は1年前の1兆8,800億円の含み益から3,800億円の含み損へと転落した。株式の時価基準を月末値から月中平均値に変更する会社が相次いだことを勘案すると、実質的な悪化の度合いはさらに大きかったいえよう。かつて生保経営のバッファーだった保有株式の含みは今では経営の重荷でしかない。1.2兆円の逆ざやを負担してもなお2兆円の基礎利益を計上できる高い保険収益力を有しながら、最終損益である当期剰余はわずかに3,500億円と、国内生保大手の多くがいかに株価変動リスクを抱えているかが浮き彫りとなっている。2002年3月期に続く株安の打撃で、将来のリスクに対するバッファーの多くが失われた会社もある。今なお株式を大量に保有する会社は、さらなる株安が進行した場合、保険財務力が一段と悪化するリスクを抱えている。
保険収益の源泉となる保有契約高は、大同生命保険、富国生命保険、太陽生命保険の3社が微増となったのに対して、その他の7社は3.3−8.5%の減少となった。保険引受収支である基礎利益は全体で2兆円とまだ高い水準を維持しているが、保有契約高の純減傾向から脱しない限り、基礎利益の減少は避けられないであろう。
こうした中、予定利率など契約条件の変更を可能とする保険業法改正法案が5月23日に今国会に提出され、予定利率引き下げの概要がついに公開された。事前の報道内容とは異なり、変更対象契約者による異議申し立てについては、反対者数と反対者債権額がともに1割を超えることが否決の条件となっている。予定利率引き下げの影響が少ない定期保険などに比べ、影響が大きい養老保険や個人年金などの保険金額は低くなりがちであるなど、保険契約者の利益に照らして争点となりそうな項目は数多い。保険契約者の視点に立った幅広い議論が今後どう展開されるのか注視していく必要があろう。それを欠けば、保険契約者の生命保険に対する信頼を損ない、保有契約高の減少に歯止めがかからなくなるおそれがある。
国内の生命保険業界を取り巻く環境が一段と厳しさを増していく中でも、資産運用リスクを適切に管理し、堅固な顧客基盤と財務力を維持している生保会社は存在する。今後も、そうした会社と、それ以外の会社との間で保険財務力の格差が広がっていく可能性が高い。
http://www.standardandpoors.com/japan/newsbriefs/