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(回答先: 普通はこう考えるのではないかしら 投稿者 花子さん 日時 2003 年 6 月 17 日 20:27:11)
花子さん、レスありがとうございます。
特殊訓練を無事こなしてください。
>いくら日銀が通貨を発行しても、いくら政府が財政出動をしても、銀行やタンスに眠
>る通貨量が多ければ景気がよくならないのはもちろんのこと、通貨への信用に変化が
>なければインフレにもなりません。しかし、そうした膨大な退蔵貨幣は潜在的インフ
>レ圧力としては強力なものだと思います。
ご指摘のように、現状の日本経済は、インフレへのマグマを大きく溜め込んでいます。
日銀券の発行残高が100兆円に迫ろうとしていますから、名目GDPがほとんどかわらないどころか減っているのに、3年前に較べて50%ほども増えたことになります。
銀行の「信用創造」を考えれば、名目GDPが800兆円になっても不思議ではありません。
>「その社会の商品生産能力と商品需要」は大きな規定要因なのですが、単純な「全体
>的需給関係」が通貨価値に影響を与えないわけではないでしょう。十分な生産力(供
>給力)があってもインフレ傾向の要因となることもあるでしょう。
インフレになるかどうかは、絶対規模の問題ではなく、供給量の増加と需要貨幣量の増加の兼ね合いです。
供給量の増加が需要貨幣量の増加と併行か上回っていれば、インフレになることはありません。
戦後長い間インフレが一般的な傾向でしたが、それは、需要貨幣量の増加が供給量の増加を上回り続けたことを意味します。
その主たる要因は、「信用創造」(1兆円で8兆円といった貸し出しができる)・「赤字財政支出」・「経常収支黒字」(70年以降ですが、外貨が日本円に転換されて使われる)です。
その他、オイルショックなど輸入財の価格上昇も上げられますが、それが全般的なインフレになるためには、上記の需要通貨量の増加がなければなりません。(需要通貨量が増加しないと、無い袖は振れないので、必需財が高くなっても、その他の財は販売不振になって価格上昇が抑えられ、厳しい不況になります)
>全ての商品(サービス)が需要の増加に追いつくペースで生産量や輸入量を増加させ
>られるはずはないし、中には特定特定地域・特定条件の不動産のように限られた量し
>かないものもあります。そうした商品や不動産の価格上昇が全社会的総生産物(総商
>品)の生産コストに影響を与えるはずです。
>十分な生産力があれば単純な全体的需給関係がハイパーインフレを引き起こすことは
>ないかもしれませんが、インフレ要因にはなりえます。
>また、好景気になれば「百円ショップ」とかの「薄利多売事業」は、不動産価格の上
>昇とより高利潤の投資先の増加によってなくなっていくだろうから、好景気(単純な
>需要量の増加)はやはりインフレ要因なのです。
ご指摘のように、個々の財の供給量増加や価格変動のばらつきは常にあります。
物価変動は、そのような個別的な動きの総体的な評価としてのGDPデフレータを考えています。
建物は別ですが、土地の価格も通貨流通量に規定されます。土地の供給増加を上回って土地購入に向かう通貨量が増えることで地価は上昇します。(ここでも無い袖は振れないという論理が通用します)
生産コストの上昇は販売商品の価格引き上げを志向させますが、それがきちんとインフレとして実現されるためには、やはり需要通貨量が増大しなければなりません。
需要通貨量が増大しなければ、生産コストが上昇しても販売価格に転嫁できずに、売れ残ったり、利益が出なくて倒産することになります。
生産コストの上昇がスムーズに価格上昇に結びつくためには、需要通貨量の増加が必要なのですから、生産コストの上昇がインフレの要因というわけではありません。(企業は供給する財やサービスを常に高く販売してより多くの利益を得たいと考えています)
>「国債の日銀引き受け」とか「政府紙幣の発行」とかを政府が行うと、通貨が政治的
>都合によっていくらでも刷られるのだということを社会に公表することになります。
>それは人々に、「通貨がタダ同然でいくらでも作れるものなら要するに紙切れじゃな
>いか」とか「この国の通貨はいくらでも何の裏打ちもなく刷られて市中に出回るもの
>なのだ」という印象を与えます。
>そして人々は、「いずれ我々の保有している通貨は、市中で容易に使われ、容易に手
>に入るものとなるのだ。」と考えるようになります。つまり、「価値が下がる」と予
>想されてしまうわけです。
多くの国民は、都合によっていくらでも刷られるものであることがわかっても、それが自分の懐にいくらでも入ってくるものだとは思いません。
政府や銀行という理や利に一応縛られたところだけが、何の裏打ちもなく刷られているのに購買力がある通貨をタダで手に入れられるというのが現実です。
ペーパーマネー(紙切れ)だから起こりっこないと思われたのにデフレ・スパイラルが起きていることで経済学者も悩んでいます。
じゃぶじゃぶベースマネーを増加しても、市中で容易に使われ、容易に手に入るものにならないわけを見極めなければならないのです。
>さらに、「いくらでも刷るのだから、通貨の価値は歯止めなく下落する」とか「そう
>いう世間の憶測がひどいインフレを引き起こす可能性が大きくなった」とか、「要す
>るに政府・中央銀行はインフレを起こそうとしているのだ」とか考えるようになれ
>ば、銀行のとりつけ騒ぎのように皆で通貨を手放して商品・不動産や債券類に変えよ
>うとするようになるでしょう。
>そうなれば、ハイパーインフレです。「政府・通貨システム・通貨価値の安定性への
>信用」がなくなれば、ハイパーインフレになるのです。
政府・中央銀行はハイパーでなく緩やかなインフレを起こそうとしていますが、ご指摘のような動きは見られません。
そうならないのは、余裕資金を持っている人が現実をちゃんと見ているからです。そういう動きは、実際にインフレの兆候が起きてからでいいと思っているはずです。
(そういう人は欲しい商品は既に買っているのでよほどの物好き以外があまり買わないでしょうし、債券類にも投資しているでしょう。不動産への動きはあると思っています)
インフレ予測で大きく動くのは企業です。設備を更新しようと考えている企業は、それを早める動きを見せるはずです。原材料も少し先取りするかたちで仕入れるかもしれません。
肝心なのは、インフレになると思っても、ご指摘のような動きを起こせるだけの余裕通貨を保有している人がそれほど多くなく、給与が上がらなければ身動きできないという人が多いということです。(無い袖は振れないのです)
さらに言えば、余裕資金を持っている人が商品・不動産や債券類に変えようとすることでインフレになっても、余裕資金を使い果たした段階でインフレは終息し、そのために増産されていれば、反動のデフレが起きます。(投機目的の不動産はその影響をもろに受けて下落します)
「通貨がタダ同然でいくらでも作れるものなら要するに紙切れ」であり、「この国の通貨はいくらでも何の裏打ちもなく刷られて市中に出回るもの」であっても、現在の経済的枠組でデフレ・スパイラルから脱却するのは至難の技なのです。
>単純な話、政府や国民経済が危ういとか外国勢力にのっとられそうだとかと思えば、
>国民は財産を通貨からモノに変えようとして通貨価値はさがりませんかしら。
それだけではなんとも言えませんし、そのような動きが起きても、前述のように一過性のインフレ(通貨価値下落)で終わる可能性が大きく、再びデフレ(通貨価値上昇)に転じるはずです。
継続的なインフレになるためには、供給量の増加を上回る継続的なフローの増加が必要です。
金融資産(ストック)の取り崩しによる需要増は一過性です。