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(回答先: 米ネオコン派は、パウエル国務長官をクビにしろ、と要求。 米中枢で強烈な権力闘争。[週刊日本新聞] 投稿者 代 日時 2003 年 5 月 30 日 23:03:12)
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哲学クロニクル 第377号
(2003年5月30日)
帝国のお手軽民主主義(5)
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さて、5月13日に、ニューヨークのリバーサイド教会でロイが行った演説がやっ
と終わります。。長い演説なので、かなりはしょっていますし、思い切った意訳
のところもありますので、ご用心(笑)。
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帝国のお手軽民主主義(5)
(アルンダティ・ロイ アウトルック・インディア、2003年5月26日号)
これが、合法的に選ばれていない大統領をかかえる世界で最強の民主主義国家の
ありさまだ。アメリカの最高裁が、贈物のようにブッシュに大統領の地位を与え
たのである。このまがいものの大統領のために、アメリカの国民はどのような代
価を支払ったのだろうか。
ブッシュが大統領になってからの3年間に、アメリカ経済は200万人の雇用を失っ
た。法外な軍事支出、企業のための福祉と富裕者の税金サービスのために、アメ
リカの教育システムは経済的な危機に直面している。ある調査によると、アメリ
カの州は2002年に公共サービス、健康、福祉手当てと教育のための支出を490億
ドルも削減している。さらに2003年にも257億ドルの削減を計画している。これ
であわせて750億ドルの削減になる。そしてイラク戦争のためにブッシュが最初
に議会に要求した予算は、800億ドルだった。
するとイラク戦争のための経費を負担したのは、いったい誰なのだろうか。アメ
リカの貧しい人々だ。アメリカの学生、失業者、シングル・マザー、病院とホー
ムケアの患者たち、教師とヘルスケア産業の労働者たちだ。では実際に戦争を戦っ
ているのは誰だろう。
ここでもアメリカの貧しい人々だ。イラクの砂漠で戦闘しているのは、富裕者の
子供たちではない。上院と下院の議員の子供たちで、イラクで戦闘に参加してい
るのはただ一人である。アメリカのボランティアの軍隊は、貧しい白人たち、黒
人たち、中南米からの移民、アジアからの移民、すなわち生計をえるため、また
は教育をうけるための方法を探している貧しい人々たちで構成されているのだ。
連邦政府のある統計によると、アフロ・アメリカンの人々が軍の全体の21%を占
め、陸軍の29%を占めている。しかし全体の人口における比率は12%にすぎないの
である。
軍隊と監獄でアフロ・アメリカンの人々の比率が、人口の比率とくらべて異様に
高いのは、皮肉なことではないだろうか。もちろんこれはアファーマティブ・ア
クションの成果だと、肯定的に考えることもできる。国民の2%を占める400万人
近くのアメリカ人が、重罪を宣告されたために、投票権を喪失している。そのう
ち140万人はアフロ・アメリカンだ。ということは、投票権のある黒人のうちの
13%近くが、公民権を剥奪されているということである。
アフロ・アメリカンの人々は、死においても「アファーマティブ・アクション」
を経験することになる。経済学者のアマルティア・センの調査では、集団として
はアフロ・アメリカンの人々の平均寿命は、中国、インドのケララ州(わたしの
故郷だ)、スリランカ、コスタリカの人々よりも低い。アメリカのハーレムで住
む黒人よりも、バングラデシュで生まれた人々の方が、40歳まで生きる確率が高
いのである。
だから戦争の費用を支払っている人々、実際に戦闘している人々が誰かは、これ
で明らかだろう。それでは誰が利益をこうむっているのだろう。数千億ドルにな
るとみられるイラクの再建契約を狙っているのは誰だろう。アメリカの貧しい人
々、失業者、患者たちだろうか。アメリカのシングル・マザーだろうか。アメリ
カの少数民族だろうか。
ブッシュはこの戦争でイラクの石油がイラクの国民のもとに戻されると保証した。
ということは、ベクテルのような多国籍企業を通じて、イラクの国民のもとに戻
されるこということだ。ここでもまた、企業、軍、政府の指導者たちで作り出し
ている小さく、緊密なサークルが登場する。すさまじい乱交、すさまじい相互汚
染としか言いようがない。
一例をあげよう。国防政策委員会は、国防政策に関して、国防総省に助言を与え
る組織だ。そのメンバーは国防省の次官が指名し、ラムズフェルド長官が承認す
る。この委員会の会合は非公開だ。公共の安全保障についての情報はまったくえ
られない。
ワシントンの公共保全センターは、国防政策委員会のメンバー30名のうちの9名
は、2001年と2002年に760億ドル相当の国防契約を受注した企業と結び付きがあ
ることを確認した。その一人のジャック・シーハンは、海軍の退役将軍で、巨大
な国際エンジニアリング会社のベクテルの上級副社長である。同社の会長のライ
リー・ベクテルは、大統領の輸入評議会のメンバーだ。
元国防長官のジョージ・シュルツは、ベクテル・グループの取締役で、イラク解
放委員会の諮問委員長である。ニューヨーク・タイムズ紙から、利益の対立はな
いのかと質問されると、「ベクテルがこれでとくに利益をこうむるかどうかはわ
からない。しかしなすべき仕事があるのなら、ベクテルは仕事を遂行できる企業
ではある」といっただけである。そしてベクテルはこれまでイラクの再建で、68
億ドルの業務を受注しているのである。
こうしてみると、アメリカ国民は、戦争の実際の経費を負担させられているだけ
でなく、この「解放」の代価として、自分たちの自由を失っているのである。ふ
つうのアメリカ人たちは、他の国で民主主義を作り出すために、自国で真の民主
主義を失うというツケを支払わされているのである。
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(c)中山 元
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