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マイケル.ムーア(寺島研究所別館より)
http://www.asyura.com/0304/war32/msg/825.html
投稿者 キャプテン 日時 2003 年 4 月 24 日 02:52:21:

マイケル.ムーアのオスカー賞受賞スピーチ全文とその後について掲載されているものを見つけました。

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僕はローマ法王に感謝したい(オスカー受賞でのスピーチ)

http://www.michaelmoore.com/words/message/index.php

マイケル・ムーア、2003年3月27日

[翻訳:寺島隆吉+岩間龍男]公開2003年4月4日
http://terasima.gooside.com/moore030327thanksthevatican.html

将来のオスカー賞受賞者へ一言アドバイスしたい。教会へ行くことで、オスカー賞の日は始めないほうがいい。これはマサチューセッツ州のサンタ・モニカ大通りのグッド・シェパード教会で気づいたことだった。この日曜日の朝に僕は妹と父と一緒に協会に行ったのだ。

僕のカトリック教のミサについての問題は、牧師さんが言うことを聞いたあとに、僕は時々自分の気持ちがとりとめのないものになってしまうことに気づくことだ。そして人々を殺害するのは誤りだとか、本当に自己防衛でないならば別の人間に対して暴力を使うことは許されないというような狂気じみたことを考え始めてしまうことだ。

 そのことをローマ法王は単刀直入に述べた。「イラクでのこの戦争は正義の戦争ではない。したがってそれは罪である。」と。

 その考えはその日の朝以来ずっと僕の心の中にあった。その日の朝、僕は教会を去り、小銭を物乞いするホームレスの前を通り過ぎ(アメリカの子どもの6人に1人が貧困の中で生活していることは、別の形の暴力だ)、コダック劇場を回って通りに出た。僕のスタジオのリムジーンでそこを通り過ぎた時、戦争に反対している人たちが逮捕されているところだった。

 
僕はドキュメンタリー映画『ボーリング・フォー・コロンバイン』でまさかアカデミー賞を取れるとは思っていなかった。(『ウッドストック』以来ドキュメンタリー映画で大当たりをした作品はなかった。)だから、僕は授賞式のスピーチを準備していなかった。いづれにせよ、僕はたいしたスピーチ作成者ではない。その上、オスカー賞に至るまで既に色々な賞を受けていて、受賞の際には同じようなスピーチをしてきた。このような虚偽の時代に僕たちが生きている時には、ノンフィクション映画が必要だということを僕は述べた。

僕たちは、虚偽の選挙の結果選ばれた、虚偽の大統領を擁している。(もし3000人の年配のユダヤ系アメリカ人が―その多くはホローコーストの生き残りであるが―2000年に西パーム・ビーチでパット・ブキャナン[米国の政治家・ジャーナリスト]に投票したとあなた方がまだ信じているなら、フィクションの美の、真の愛好家だ!)

大統領は現在虚偽の理由により戦争を遂行している。つまり、僕たちは世界第2位の石油供給源を得るためにイラクに実際はいるのに、サダム・フセインは大量破壊兵器を備蓄しているためと主張しているのだ。

 それが、中産階級への贈り物だと偽って通過させた減税であろうが、アラスカの未開地に穴を開けたいという要求であろうが、僕たちはいつもブッシュのホワイトハウスから次から次へと虚偽の物語で攻め立てられている。
だからこそ、そのすべての嘘を暴露し人々に知らせることができるように、映画製作者がノンフィクション映画を作ることが重要なのだ。人々が民主主義社会で無知であるならば、民主主義はほとんど全く実現されずに終わってしまう。

 こういったことを僕はこの間(かん)言い続けてきた。多くのアメリカ人もこのことには同意してくれると思う。僕の著書『愚かな白人』Stupid White Men[松田和也訳『アホでマヌケなアメリカ白人』柏書房として日本では邦訳が出版されている]はいまだにベストセラー本のナンバーワンだ。(現在のところ53週間ベストセラーナンバーワンで、この年のノンフィクションで最もよく売れている本となっている。)

映画『ボウリング・フォー・コロンバイン』はドキュメンタリー部門でこれまでのすべての記録を打ち破った。僕のウエッブ・サイトは現在1日で2000万のアクセスがあるようになりつつある。(これはホワイトハウスのサイトより多い。)

僕のアメリカの状況についての意見は、未知でも少数意見でもなく、大多数の主流の意見と同じだ。世論調査によれば、大多数のアメリカ人はより強力な環境の法律を求め、「ローとウェード裁判」を支持し[大変な議論の後、1973年に妊娠中絶を認めた裁判]、国連やすべての同盟国の支持なしでこのイラクとの戦争をすることを望んでいなかった。

これが現在のアメリカの状況だ。それはリベラルなものであり、平和を求めるものであり、アメリカの指導者をただ黙認しているだけなのだ。なぜならそれが戦争中にすべきことだとされているし、あなた方の子どもたちがイラクから生きて戻ってくることを望んでいるからだ。

 ドキュメンタリー部門のオスカー賞優秀賞が発表される前の、コマーシャルの休みの時間に、僕はこの映画人の集まりもアメリカ人の大多数の一部であると突然に思った。その彼らが僕の映画に賛意を示して投票してくれたのだ。第3世界に対する侵略行為を可能とするために人々を恐怖で操作するブッシュ政権と、部分的には対決する、この映画に。

僕はノミネイトされた友人に身を乗り出して、彼らに言った。「万一僕がアカデミー賞を取ったら、僕はブッシュ大統領とイラク戦争について発言するつもりだけど、君たちもステージの上で僕に加わりたいかい。僕はもうアカデミー賞を獲得したような気分なので、今度は君たちにもその瞬間を持てるように、ステージを僕とぜひ共有してほしいんだ。」

(彼らはみな優れた映画を製作しており、僕は人々にその映画制作者を見てほしかったし、できれば彼らの映画を見てほしかったからだ。)

 彼らは皆同意してくれた。

  そのすぐ後に、ダイアン・レインが封筒を開き受賞者を発表した。「ボウリング・フォー・コロンバイン。」メインフロアーの全員が立ち上がって拍手をしてくれた。僕は本当に感動し謙虚な気持ちになった。そして他のノミネートされた友人たちに、ステージの上で僕と僕の妻(映画のプロデューサー)に加わるよう合図した。

 そして僕は他の授賞式でこの1週間言ってきたことを言った。しかし数人の他の人々しか僕が言ったことを聞き取れなかったと思う。なぜなら、僕が偽(にせ)大統領につての最初のセンテンスを言い終わる前に、マイクロフォンの近くの2,3の男が大声で叫び始めたからだ。(それは僕の左側にいた「舞台係」だったという報告もある。)そして上のほうのバルコニーにいたグループがこれに加わった。

僕がスピーチを続けている時に、とても混乱したのは、この[スピーチの邪魔をする]雑音は聞こえたのだが、メインフロアーを見ている限りは誰一人としてやじる者がいなかったことだ。しかしバルコニーの大多数の人々は僕のスピーチを支持してくれて、ヤジを飛ばしている者をヤジり始めた。

 それは叫び声と激励と嘲笑のものすごくでかい不協和音となった。そして僕が思ったのは「おい、僕はこのためにタキシードを着てきたのか」ということだけだった。

 私は最後の下りを述べようとした。(最後の下りは「ローマ法王もディキシー・チックス[米カントリー・ミュージックのグループ]も大統領であるあなたに反対していることが分かれば、あなたはもうホワイト・ハウスには長くいられない。」)

そしてオーケストラがその混乱を終わらせるために曲の演奏を始めた。(数人のオーケストラ員が後に僕の所にやって来て、僕が言おうとしていたことを聞きたかったと言って謝罪した。)

僕のスピーチは55秒だった。許可されていた時間より10秒長いだけだった。僕の行為は適切だったのだろうか[それとも不適切だったのか]。

しかし僕にとって不適切なことは、このスピーチで何も言わず、僕のエージェントと弁護士と僕の着付けをしてくれたデザイナーであるシアーズ・ロウブックにただ単にお礼を述べるありきたりのスピーチだっただろう。

僕は国内でも世界でも暴力を使いたいというアメリカ人の欲望についての映画『ボウリング・フォー・コロンバイン』を作ったのだ。僕がスピーチで述べたことは、僕の映画が言いたかったこととぴったりと一致している。

もし鳥や昆虫についての映画を作ったのならば、僕はそのことについて話をしていただろう。僕は銃について、そして世界と他人に対してそれを使うアメリカ人の伝統についての映画を作った。

 ステージに近づいた時、僕はマサチューセッツの教会での、その朝の説教のことをまだ考えていた。過ちが犯されているのを見ている時、もし黙っているならば、それはその過ちを自らが犯しているのと全く同じことだということを考えていた。そして僕は自分の良心と感情に従った。

 オスカー賞授賞式の次の日、ミシガン州のフリントに帰る途中で、二人の客室乗務員が「フライトもせずフリントで一晩中釘付けになり、時給で給料が支払われているので、その日はたった30ドル稼いだだけで終わってしまった」ことを話してくれた。彼らはそのことを僕が他の人たちに話してくれることを期待して僕に話しているのだと言っていた。というのは、彼らや彼らのような何百万人もの人々には、発言権がないからだ。

僕たちがいつも見てきた退役将軍のように、彼らはケーブルニュースの解説者を始めることもない。(米軍はABC/CBS/NBC/CNN/MSNBC/Foxなどのメディアから軍隊を取り除いてくれるよう僕たちは要求できないものだろうか。)彼らは、映画を作ってオスカー授賞式の晩に10億の人々に語りかけ始めることもない。

彼らは、自分たちの息子や娘をイラクに送り込むよう求められているアメリカの大多数の人たちだ。そして、ブッシュの仲間が石油を手に入れることを可能にするために、恐らく死ぬようもとめられているのだ。

 
もし僕が話さなければ、誰が彼らの代弁をするのか。それが、毎日の人生で僕がやっていることであり、やろうとしていることである。2003年3月23日[アカデミー賞授賞式の日]は、僕の人生の中で最も素晴らしい日のひとつであり、今後長く大切にしたい名誉の日であったが、僕の人生のその毎日と何の違いもないのだ。ただし、この日を教会で始めたということを除いては。


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2003年3月17日(月曜日)

戦争前夜のマイケル・ムーアからジョージ・W・ブッシュへの手紙

原文

翻訳:寺島隆吉+岩間龍男(公開2003年4月11日)

http://terasima.gooside.com/moore0letterbush030317.html


親愛なるブッシュ大統領殿

 今日は「フランスと世界の他の国々が検討中のカードを示さねばならない日」で、いわゆる「決定的瞬間」だね。この日がとうとうやって来て僕は喜んでいるよ。僕は、君が嘘をつき共謀してきた440日間を生き伸びてきて、正直なところ、これ以上きみをやっつけることが可能か自信がないからね。だから僕は今日が「真実の日」だと聞いて喜んでいるんだよ。君と分かち合いたい幾つかの真実があるからね。


1.戦争を始めることに情熱を尽くす奴なんて、アメリカには実質的には誰一人としていない。(ラジオのトーク番組の気が狂った連中やフォックス・ニュースは除いてだけどね。)

このことについては僕を信用してくれよ。ホワイトハウスを出て、通りに出て、イラク人を殺したいと情熱的に考えている5人のアメリカ人を見つけてみろよ。絶対に見つけられないぜ。

どうして?だって。だってイラク人が、これまでに、ここに来て僕たちの誰かを殺したことなんてないからさ。そんなことをやろうとしたイラク人は誰もいないぜ。

次のように平均的なアメリカ人は考えるんだよ。つまり、かくかくしかじかの事が、僕たちの命の脅威になっていると考えられないならば、僕たちはその人を殺したりしたくないんだ。まさかと思うかもしれないけど、物事はそんなふうに進行するんだけど、面白いだろう。

2.大多数のアメリカ人は、大統領選挙の時に君には投票していないけど、君の「大衆注意拡散兵器」(weapons of mass distraction)にはだまされていないよ。僕たちの日常生活に影響を与える本当の問題が何であるのか僕たちには分かっているからね。また、これらの問題はIで始まったりQで終わったりするものは何もないということも分かっているからね。

[weapons of mass distraction 大衆注意拡散兵器と weapons of mass destruction 大量破壊兵器の違いに注意!名門イエール大学(学部)、ハーバード大学(大学院)卒業も全て親父の威光のおかげであり、ブッシュ大統領の知能指数IQが極めて低い(母語能力すらあやしい)ことを暗にほのめかしている(詳しくは『アホでマヌケなアメリカ白人』柏書房を参照)と最初は考えたのだが、このHPの読者である伊藤加奈子さんから、「Iで始まったりQで終わったりするもの」は「IRAQ」を指し、「僕たちの日常生活に影響を与える本当の問題はIRAQではない」ということを意味しているのではないかとの指摘があった。不明を恥じるのみである。]

僕たちを脅かしていることが沢山ある。たとえば、君が大統領になってから250万人の人が職を失い、株式市場はきついジョークとなり、退職金があるのかどうか分からず、いまガソリン代はほとんどリッタ当たり2ドルもかかるんだ。

こんなことは他にもまだいっぱいある。イラク爆撃をしたってこのことは解決できないよ。君が解決すべき問題から逃げることができるだけさ。

3.ビル・マーヘルが先週も言っていたように、サダム・フセインについての人気コンテストをやれば、君はどれほど最悪な状態にならざるを得ないか、分かってるかい。ブッシュさん、世界はみんな君に反対しているんだよ。アメリカ人で君の仲間がどれだけいるか数えてごらん。

4.「この戦争は間違いであり罪である。」とローマ法王はのたまわれた。ローマ法王が、だぞ!おまけに、ディキシー・チックス[アメリカ・カントリー・ミュージックのグループ]すら、いま君に反旗をひるがえしている!

どれほど事態が悪化すれば、君はこの戦争に従事しているのがアメリカだけだということが分かるのかい。

もちろんこれは、君自身が[死の危険を冒して]戦う必要のない戦争だけどね。貧しいアメリカ人が君の代わりにベトナムへ送り込まれている時に、君は[親父の威光を使って]無許可で離隊したようにね。[戦って死んでいくのは、いつも貧乏人だ。]

5.米国議会の議員535人のうち、たった一人だけ(サウスダコタのジョンソン上院議員)が、軍隊に息子や娘を入隊させているだけだ!

君が本当にアメリカのために立ち上がりたいのなら、今すぐ君の双子の娘をクウェートに送って化学兵器戦争用のスーツを彼女たちに着せてやり給え。そして軍隊に入れる年齢の子どもを持つ米国議会の議員が、どれだけこの戦争努力のために自分たちの子どもを犠牲にしているのか、調べてみよう。

君はこのことについてどう言うのだろう。君はそんなこと考えにも及ばないよな。うーん、おい、ちょっと聞いてくれよ。僕たちもそんなこと考えにも及ばなかったよ。

6.最後に僕たちはフランスを愛している。そうだな、フランス人はろくでなしの国王や王妃を引っぱりだしちゃったね。そうだよな、そのろくでなしの何人かは、はなはだしく迷惑なやつらだ。

[今もフランスは拒否権を使ってアメリカの行動を阻もうとしている。イラク人民の解放を邪魔しようとしている。君たちは、そう言いたいのだろう。]

でもなあ、フランスがなかったら、アメリカのこの国を僕たちは持つことができなかったということを君は忘れていないだろうか。アメリカ独立戦争で勝利をもたらしたのは、フランスの援助のおかげだったのではなかったのかな。

トマス・ジェファーソンとかベンジャミン・フランクリンなどの僕たちの偉大な思想家と創立者はパリで長年過ごしている。そこで彼らは考え方に磨きをかけて、僕たちの独立宣言と憲法を生み出したんだ。

自由の女神を僕たちにくれたのはフランス人だった。シボレーを作ったのはフランス人だった。映画を発明したのは二人のフランス人兄弟だった。そして今フランス人は、よき友人だけができることをしているんだよ

君に戯言ではなく率直に真実を述べているんだよ。フランス人に小便をかけるのは止めて、今度ばかりは真実を教えてもらったことで彼らに感謝しようじゃないか。

君は政権担当者になる前に、実際もっと旅行を(以前のように)しておくべきだったね。君の世界に対する無知は君をバカに見せるだけでなく、抜け出せない窮地に君を追い込んだ。

まあ、元気を出してくれよ。いいニュースがあるんだ。もしこの戦争を最後までやり遂げるつもりなら、この戦争はすぐに終わるよ。サダム・フセインを守るために喜んで命を捧げるイラク人はそんなに多くはいないと思うよ。

君はこの「戦争」に勝ってから、人気投票でとてつもなく大きな上昇気流に乗る事ができるだろうね。誰でも勝者が好きだからね。そして善良なバカどもがしばしば喚声をあげるのを見たくないものは誰もいないからね。(特に第3世界のばか者の時には!)そしてアフガニスタンの時と同じように、自分たちが爆撃して勝利した後は、その国に何が起きていようが忘れてしまうだろう。

この勝利をさらに来年の大統領選挙につなげるよう最善を尽くしたまえ。もちろんこれはまだまだ道のりが長いので、僕たちはみんな逞しい時(ハッハ冗談じゃないぜ)を持ち始めるだろう。その間、俺たちは経済が沈み込んでトイレに流れていくのを眺めることになるんだ。

おい、でも大統領選挙の数日前にたぶんきみがオサマを見つけることになることは誰にも知られていない。分かるだろう。そんなふうに考えて希望を持ち続けてくれ。イラク人を殺せ、彼らが僕たちの石油を所有しているんだから!

敬具


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マイケル・ムーア

オスカー賞授賞式での、僕のスピーチに対する反響

2003年4月7日

『アホでマヌケなアメリカ白人』が再び第1位に
『ボウリング・フォ・コロンバイン』が新記録に

オスカー賞授賞式のステージでブッシュとこの戦争に反対意見を述べて以来、僕の状況がどのようなものだったのかを、以下に説明するので、それをあなた方に理解してほしい。そして以下の、僕が言おうとしていることを読んで、自らに開かれている公開討論の場であれ、他のどんな方法であれ、あなた方が声を上げることの、ほんのわずかな励みにでもなればと僕は期待している。

http://terasima.gooside.com/morre030407speechaward.htm(翻訳:寺島隆吉+岩間龍男+寺島美紀子)公開2003年4月21日

親愛なる友人たちへ

 ブッシュ政権はこの数日のうちにイラクを植民地化することに成功するように思われる。こんな大間違いはない。僕たちは来るべき何年もの間この代償を支払わなければならないだろう。これは死んだ数千人のイラク人はもちろんのこと、軍服を着たアメリカの若者の、たったひとりの命すら失う価値のない戦争だった。僕は彼らすべてに弔慰と祈りを捧げたい。

 この戦争の口実となった大量破壊兵器はいったいどこにあるのか。このことについて僕は言いたいことが多くあるが、後ほどのためにとっておこう。

 僕が今一番関心があることは、あなた方すべてが、この戦争を最初から支持していなかった多くのアメリカ人が、偉大な軍事的勝利としておおげさに宣伝されるものによって、黙り込まされたり恫喝されないようにしてほしいことだ。以前にも増して現在は、平和と真実の声を上げるべきだ。

深い絶望感を持ち、間違った愛国心のドラムと爆弾によって自分たちの声がかき消されてしまったと思っている人々から、僕はたくさんのメールをもらった。彼らのうちの何人かは、職場や学校や地域社会で報復されることを恐れている。実際に声をあげ平和を支持したからだ。「いったん祖国が戦争を始めたら、それに抗議するのは『適切』なことではない、そして現在の我々の義務は『米軍を支持する』ことだ」と何度も繰り返して彼らに説得がなされてきた。

 オスカー賞のステージでブッシュとこの戦争に反対意見を述べて以来、僕の状況がどのようなものだったのかを以下に説明するので、それをあなた方に理解してほしい。そして以下の、僕が言おうとしていることを読んで、あなた方が自らに開かれている公開討論の場であれ他のどんな方法であれ、あなた方が声を上げることの、ほんのわずかな励みにでもなればと僕は期待している。

 『ボウリング・フォ・コロンバイン』がアカデミー賞で最優秀ドキュメンタリー映画の受賞者として発表された時、観衆は立ち上がった。これは素晴らしい瞬間であり、僕はこの瞬間をいつも大切にしたいと思っている。彼らは立ち上がり僕の映画に歓呼してくれた。その映画は、僕たちアメリカ人が比類なく暴力的で、お互いに殺しあうため、そして世界中の多くの国々に対して使うため、大量の隠匿した銃を使っていると主張している。観衆は僕の映画に拍手喝さいをしてくれた。

その映画は、ジョージ・W・ブッシュは嘘の恐怖を使って人々を脅し、彼に好きなことは何でもできるようにしていると主張している。そんな映画を彼らは支持してくれた。その映画は、最初の湾岸戦争はクウェートの独裁者を再び就任させる試みであり、サダム・フセインはアメリカ製の武器を装備していたのであり、経済制裁や爆撃によって過去10年以上にわたるイラクでの50万人の子どもたちの死にアメリカ政府が責任を負っていることを述べていた。そんな映画を彼らが声援してくれたのだし、それが彼らが投票をしてくれた映画だった。

だから僕はそれが僕のスピーチで告白すべきことだと心に決めたのだった。こうして僕はオスカー賞受賞のステージで次のように述べた。

「プロデューサーであるキャスリン・グリンとマイケル・ドノバン(カナダ出身)を代表して、僕はこの賞を頂いたことに対してアカデミーに感謝をしたい。だから僕はドキュメンタリー映画でノミネイトされた他の人たちをステージに招いたのだ。ノンフィクションが好きだという理由で、僕たちはここで連帯している。僕たちは虚偽の時代に生きているから、ノンフィクションが好きなのだ。

僕たちは偽りの選挙結果で偽りの大統領を擁する時代に生きている。僕たちは今、偽りの理由で戦争を戦っている。それがダクト・テープの作り話であろうが、偽りの「オレンジ警戒態勢」であろうが、僕たちはこの戦争には反対である。ブッシュ大統領よ、恥を知れ!ローマ法王やディキシー・チックス(アメリカ・カントリー・ミュージックのグループ)が君に反対しているからには、おまえの命運も尽き果てた。」

 僕のスピーチの途中で、聴衆の何人かが声援を始めた。そうするとすぐにバルコニーにいたグループがヤジを飛ばし始めた。すると今度は僕の主張を支持する人たちが彼らに大声で反対し始めた。ロサンジェルス・タイムズの報道によれば、ショウのディレクターが僕のスピーチをさえぎるため「音楽!音楽!」とオーケストラに叫び始め、楽団は義務的に演奏を始め、僕のスピーチの時間は終わった。

(何故そして何を僕が言ったのかについて、もっと知りたければ、ロサンジェルス・タイムズに僕が書いた特集記事を読めるし、さらには僕のウエッブ・サイトでアメリカ中の他の反響を読むことができる。)

 翌日、そしてその日から2週間のうちに、右翼の学者やラジオのびっくりディスクジョッキーが僕を叩くために動員された。この騒動は僕を傷付けただろうか。彼らは僕を「黙らせること」に成功しただろうか。そこで僕のアカデミー賞受賞の反響を見てみよう。

 アカデミー賞授賞式で僕がブッシュとこの戦争を批判した次の日、アメリカ中の劇場の『ボウリング・フォ・コロンバイン』の観客数は110%にはね上がった(情報源:Daily Variety/Box Office Mojo.com)。次の週末には、切符売上金の総計が桁外れの73%に上がった(Variety)。現在これはアメリカの商業上の封切り映画としては最高のロングランを記録している。26週間上映が続けられ今もまだ上映中である。オスカー賞受賞以来この映画を上映している映画館の数は増加し続け、ドキュメンタリー映画の以前の切符売上金を300%近く凌ぐものとなっている。

 昨日(4月6日)、『Stupid White American』(『アホでマヌケなアメリカ白人』)はニューヨーク・タイムズのベストセラー一覧の中で第1位に返り咲いた。これはベストセラーの50週目であるが、このうちの8週が第1位であり、今回で4度目の1位への返り咲きである。こんなことはほとんど起こりえないと言ってもいいくらいだ。

 オスカー賞受賞後の一週間の間に、僕のウエッブ・サイトには1日に1000万から2000万のアクセスがあった。(ホワイト・ハウスへのアクセスより多い日もあった。)送られてくるメールは圧倒的に僕の意見に肯定的で支持を与えるものであった。(そして抗議のメールは滑稽なものであった!)

 オスカー賞受賞の後の2日間は、オスカー賞最優秀作品賞の『シカゴ』のビデオより『ボウリング・フォ・コロンバイン』のビデオをアマゾンで予約注文する人のほうが多かった。

 この1週間のうちに僕は次のドキュメンタリー映画の融資を獲得したし、(テレビ番組の)『テレビ国家』/『恐ろしい真実』の最新版の製作に関する仕事の持ち場の提供を受けた。

 僕たちがずっと言われてきたメッセージを打ち消したいために、僕はこういったことをあなた方に話している。そのメッセージというのは、もし政治的な発言をすれば後悔することになるだろうというもので、そのことによって通常は財政的になんらかの形で損をするとか、仕事を失ってしまうとか、雇ってもらえないなどなどのことだ。

 ディクシー・チックス(アメリカのカントリー・グループ)を例にとってみよう。彼らのリード・ヴォーカル・シンガーが、「ブッシュは彼女の故郷・テキサス州の出身であるであることをどれほど恥ずかしく思っているか」と述べたために、彼らのレコード売り上げが「落ちこみ」、そしてアメリカの放送局が彼らの音楽を流すことをボイコットしているということは、あなた方も今までにきっと聞いたことがあるだろう。しかし、実際は彼らの売り上げは下がっていない。

あれほど彼らを攻撃しても、彼らのアルバムは「ビルボード・カントリー・チャート」で今週もまだ1位である。「エンターテイメント・ウイークリー」によれば、この騒ぎの間の、ポップ・ミュージックのチャート売り上げ順位表で、彼らは第6位から第4位に上がっている。ニューヨーク・タイムズで、フランク・リッチはディクシー・チックスの来るべきコンサートのチケットをどれでもいいので見つけようとしたが、すべて売り切れていて購入できなかったと報告している。

(昨日のニューヨーク・タイムズの、リッチのコラムを読むと、『ボウリング・フォ・コロンバイン』がここに来るそうだ。彼はそれをとてもうまく展開していて、僕の次の映画とそれが潜在的に持つ衝撃について話をしている。)

彼らの歌「トラベリング・ソルジャー」(美しい反戦のバラード曲)は、インターネット上で先週最も多くリクエストされた曲だった。彼らは全く傷つけられていない。これはメディアがあなた方に信じ込ませようとしたことと大きく違っている。どうしてそうなのか。違った意見を言い続ける人々や疑問をあえてぶつける人々を沈黙させることが現在何よりも大切であるからだ。

平均的なアメリカ人に、声高に明確に[彼らの]メッセージを汲み取らせるためには、2,3の有名な芸能人を嘘でやっつけるのが一番良い方法である。その結果、「わぁー、彼らが万一、ディクシー・チックスやマイケル・ムーアにそんな攻撃ができるのなら、僕のような弱い立場の者には何をするだろう。」ということになる。こうして弱者を黙り込ませるんだ。

 友人諸君、これがオスカー賞を取った僕の映画の本当に言いたかった点だ。つまり、政権担当をしている人々は、恐怖心を使って、いかにうまく民衆を操って、言われることは何でもするように追い込むかということをあの映画は訴えているんだ。

 もし僕たちに良いニュースがあるとすれば、それは僕も他の人たちも黙り込まされておらず、僕たちと同じように考えている何百万ものアメリカ人とつながりができたことだ。軍事日程の設定や討論の専門用語よって、偽りの愛国者に脅迫されないようにしよう。戦争を70%の人々が支持しているという世論調査に負けないようにしよう。

世論調査を受けたアメリカ人は、その子ども(あるいは近所の子ども)がイラクへ送られている同じアメリカ人であることを忘れてはならない。彼らは軍隊のために恐怖に陥り、望んでいない戦争を支持するよう脅迫されている。彼らは友人や家族や隣人が死んで戻って来ることはましてや望んでいない。すべての人は、兵士たちが生きて戻ってくることを支持している。僕たちはみんな連絡を取り合い、彼らの家族にそのことを知らせるべきだ。

 残念ながらブッシュとその仲間は、まだ命運がつきていない。この侵略と征服は、彼らが再び他の場所で同じ事をすることを助長することだろう。この戦争の本当の目的は、世界のすべての国々に「テキサスに干渉するな。俺たちが欲しいものをお前たちが持っているなら、すぐ行って、それを手に入れるのだ!」と言うことだ。

平和なアメリカを良しとしているからには、今は、僕たち大多数が沈黙している時ではない。大多数の声を聞かしてやろう。人々がどれほど引き裂かれていようとも、アメリカはまだ僕たちの国なのだ。

敬具

マイケル・ムーア



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