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3月19日(水)東京新聞、熊田亨「ヨーロッパ展望台 アメリカ十字軍」
アメリカには「ボーン・アゲン」をなのり、そう呼ばれる人びとがいる。
人生の道半ばで、神に、キリストに、聖書に出会い、キリスト教徒として
新しく生まれ変わった人びとである。改宗ではなくて、回心と再生を誓う、
プロテスタント教会のなかの行動的な一派である。
◆40歳にして「回心再生」
ブッシュニ世はポーン・アゲンのひとりになった。飲酒にふけって、安
易な生活を送っていたのが、名高い伝道師の説教を聞いてからは、四十歳
にして酒を断ち、回心再生の人となった。
朝は祈りと聖書の読誦にはじまり、閣議も祈りではじまる。演説には聖
書のことばがちりばめられている。「アメリカに味方しないやつは敵だ」
というブッシュニ世の人物を特色づける発言も聖書からでている。「わた
しの側に立たない者はわたしに逆らう者、わたしと共に集めない者は散ら
す者である」
神仏の信仰を問わず、ポーン・アゲンの宗教体験をもつ人びとのおおくは、
個人の内面の問題として回心をうけとめている。ところが、アメリカの
「生まれ変わり」は異様に猛烈である。
かれらは公の場で回心の体験を声高に語って、人間は罪を負って生まれ
た存在であるから回心しなさい、改俊しなさいと、説得と折伏の活動に訴
えることを神に奉仕する使命と信じている。
その特徴は徹底した二元論である。人問は神に選ばれて救われる者と、
救われない者に分かれている。回心者には永遠の平和、福音に耳ふさぐ者
は悪魔の子で永遠の地獄が待っている。
善と悪、神と悪魔、味方と敵、白と黒、光と闇が現世を二分して戦って
いるという論理を用いて、迷える小羊に選択をせまるのである。
原理主義(ファンダメンタリズム)はイスラムの「専売」のように思われ
ているが、この言葉と運動ははじめて一九二〇年代アメリカの白人プロテ
スタントの環境からうまれた。
ボーン・アゲンは原理主義の三つの教条を継承している。
聖書に書かれてあることはすべて神の言葉であって、解釈や考証はゆる
されない。人間は神によってつくられた被造物で、サルから進化したなど
という「妄説」はゆるされない。やがてキリストがこの世に再臨して至福
の干年が始まるから、神への奉仕にいそしまなければならない。
◆悪魔うけいれる土壌
最近のギャラップ世論調査によると、アメリカ人の48%は神が人問をつ
くったと信じ、28%が進化論に傾いている。そして、悪魔の存在を68%が信
じている。
テロリズムも「9・11」の悲劇も、バグダッドに巣食う悪魔の仕業だ
という圧倒的な政治宣伝がたやすくうけいれられる精神的土壌がそろって
いる。
プロテスタント教会の少数派であったポーン・アゲン原理主義と、帝国
を夢みる新保守覇権主義の二つの特殊な潮流と人脈が、アメリカ政治の中
枢を乗ってとってしまった。
神の下なる道義の国アメリカの指揮官ブッシュニ世は、「万軍の王の王、
主の主」(ヨハネ黙示録)として、神の御業を実践する十字軍に立つのであ
る。
しかし、利得の追求を宗教的熱狂で粉飾した十字軍は、中東のみならず、
世界の現状にひそむ限りない複雑さと、そして、人間の惨害を無視して強
行されるのだから、前途には、とほうもない魔の陥穽が待っている、
(欧州駐在本社客員)