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今月の作家:中沢新一さん
http://book.asahi.com/authors/index.php?ppno=3&key=
(アサヒコム/作家に聞こう)
なかざわ・しんいち 1950年、山梨県生まれ。77年、東京大学大学院人文科学研究科修士課程修了。現在、中央大学教授。宗教学者、哲学者、思想家。
著書に『チベットのモーツァルト』(83年、サントリー学芸賞)、『森のバロック』(92年、読売文学賞)、『哲学の東北』(95年、斎藤緑雨賞)、『フィロソフィア・ヤポニカ』(2001年、伊藤整文学賞)、『緑の資本論』、『カイエ・ソバージュ』シリーズ(全5巻中、現在、第3巻まで刊行)など多数。
(中略)
Q:
非常に不躾な質問で恐縮ですが、せっかくの機会ですので質問させてください。
中沢先生は過去に東大問題やオウム事件でスキャンダルに巻き込まれましたよね。
僕のような一般読者からすると、受難としか思えないのですが、そうした季節を
乗り越え、中沢先生ご自身で感じられる変化はありますでしょうか? また、
いま振り返ると当時の出来事はご自身にとって、どう位置づけされるのでしょうか?
(神奈川県・「瀬川博之34歳会社員」さん)
A:
ニューアカデミズム・ブームの頃に、自分の周りでバブルに膨れ上がったイメージ
を払い落とさない限り、ものを考える人間としては大成できないな、という焦りを
いつも持っていたんです。いろいろな人がぼくのことを誤解して、例えば、NHKの
若者番組なんかに引っ張り出されたりしたのですが、本当はそういうのが一番の
大敵なんですね。ぼく自身はやりたくないと思いつつも、「ここは営業だから我慢
しよう」と思ってやるじゃないですか。そうすると、どんどんいろいろなものに
がんじがらめになっていくわけです。ニューアカデミズムというのは、いわば営業
の一種でしたから、そういうものは自分で破壊しなきゃいけなかった。その意味
では、オウム事件っていうのは、ぼくには非常にプラスに働きました。もちろん
家の前に右翼の宣伝カーが来て、大家さんに迷惑かけたりもしましたけれども、
おかげで自分の身の周りで膨大に膨れ上がった余計なもの、もう前進することも
できないぐらい手足に絡みついていたものを、一気に払い落とすことができました。
「本の売り上げ落ちたでしょう?」なんて嬉しそうに聞いてきた友人もいたけれ
ど(笑)、あまり変化はなかったですね。作家の人たちに「あなた世渡りが下手
だ」とよく言われましたが、そのときは「それが僕の才能です」と言い返しました
ね。その手のスキャンダルにまみれるのは、やはり才能の一種なんだと思うこと
にしました。それによって、より純粋になっていくんだ、と。東大問題というのは
自分でもいまだに何だかよくわからないんですが、オウム事件を通過して、ぼくは
純化されました。自分ではスキャンダルで太っていく松田聖子タイプの人間では
本来ないと思っていたんですけども、意外と強かったようですね。あ、松田聖子の
こと、尊敬してますよ。
(以下略)