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(回答先: 漁業生産量減少、43年ぶり600万トン割れ [読売新聞] 投稿者 あっしら 日時 2003 年 4 月 25 日 22:55:10)
★まず以下の記事を踏まえた上で…
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■中国の水産物輸出額が世界1位に 国連報告 [人民網日本語版]
2003年04月24日18:22
国連食糧農業機関のレポートによると、2002年の中国の水産物輸出額が初めてタイを上回り、世界1位となった。
輸出量は208万5千トン、輸出額は46億9千万ドルに上り、世界の水産物輸出総額の約7%を占めた。主な輸出先は、日本、米国、韓国、EU。輸出拠点は、山東、広東、遼寧、浙江、福建各省に集中している。
http://j.peopledaily.com.cn/2003/04/24/jp20030424_28273.html
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★ひところ中国産の養殖うなぎの輸入が話題になり、今も日本の水産物輸入の多くを中国に依存していますが、中国の水産物輸出と、多くの人口を抱える国内での食糧供給を賄う漁業生産量を支えているのは、やはり「養殖」で、1998年度までの統計によると海面漁業は全体の約1/3、そして海面養殖と内水面養殖がそれぞれ約1/3だそうです。その後は2000年度では総漁獲量4,279万トンをあげ、そのうち「養殖」生産量は2,578万トンで全体の約60%を占めるということなので、その割合の推移は変っていないようです。沿岸部以外の内陸ではもちろん淡水養殖=内水面養殖のみが可能なわけで、近年は淡水魚をすり身にした保存可能な加工品の製造に力を入れているようです。
関連
中国の淡水養殖事情 【画像を拝借しました】
http://www.japanfoodnews.co.jp/professor/01-8-31fukuda000.htm
漁業データベースの作成 【日本の漁業に関する分かり易いグラフデータ】
http://www.ehime.info.maff.go.jp/sokuhou/14-03.pdf
★そして以下の内容はすべて2001年11月12日に発行された「加工流通課通信NO.38」からの、中国の水産業に関する部分の抜粋です。グラフを参照したい場合は、以下のPDFファイルを開いてください。
引用元
http://www.pref.iwate.jp/~suisan/tuusin/38.PDF
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■今日の中国水産加工産業
水産総合研究センター中央水産研究所 福田裕
1.中国の食糧問題と水産業
アメリカのワールドウオッチ研究所のレスターブラウン所長が著書「誰が中国を養うのか」で、「中国の巨大な人口が世界中の食糧を食い尽くす」と警鐘を鳴らしたのが1994年でした。これに対して中国政府は、1996年には食糧生産計画を4年前倒しで5億トンを突破した実績から、「中国は食糧生産を自給可能にする」と反論を展開しました。2000年には、5年連続の大豊作のため価格が低迷し、農家は豊作貧乏の状態にすらあります。中国政府は減量作戦の一例として、農地拡大のため埋め立てられた湖沼を現状に戻し、淡水魚・カニ・エビの養殖の奨励を行っています。しかし、人口が今後16億人まで増加が見込まれるので、「食糧問題」は厳然とした問題です。
レスターブラウンは水産にも警告を発してます。「日本は年間1,000万トンの水産物を世界中から集めているが、同じ魚食民族の中国が日本と同程度に水産物を食べようとすると、世界全体の漁獲量に匹敵する1億トンを必要とする」としています。これは極論であるが、中国政府はこれに反論はしていません。中国は漁獲量の増大に加え、輸入量も1999年には131万トンと急増中であります。結果として、水産物の消費は1995年に世界平均に達し、1998年には世界平均を10kg上回る32.7kgとなりました。こうした状況のさなか国際農林水産業研究センターでは中央水産研究所などの協力を得ながら「中国の主要食糧資源の持続的生産と利用技術の開発」プロジェクトを企画し1997年から中国の食糧問題の支援研究に乗り出しました。私図1 中国の漁業生産量の推移はこのプロジェクトの一部、即ち伸張著しい淡水漁業資源の「有効利用技術開発の共同研究」を担当し、上海水産大学ですり身化の研究を行いました。その間、見たり聞いたり調べたりした中国水産加工産業の今日を紹介いたします。
2.巨大な中国の水産業
中国は2000年に総漁獲量4,279万トンをあげ(図1)、これは世界の約35%に相当します。そのうち養殖生産量は2,578万トンで中国全体の約60%に相当します。漁獲量の半分以上を養殖生産量が占める国は中国以外にありません。もう一つの特徴は、内水面の淡水養殖生産量が1,517万トンをあげており、いずれも驚くべき数字であります。なお、中国の漁業生産量は、牛、豚、鶏、鶏卵、ミルクなど他の動物タンパク質資源の伸びを上回る最速の速度で増加しており、中国食糧問題の解決に少なからず貢献をしていること加えておきます。ただ、この中国の水産統計数字に内外から疑問や批判がないではありません。これに対して中国の国家統計局は1999年に、様々な機関が勝手に集計し勝手に発表することを禁じる異例の通達を出すなど、かなり神経質になっており、また水産統計も従来の数字を訂正するなど、正確な統計数字を発表すべく信頼の回復に務めていることが報道
されています。
3.「水産大国であるが、まだ水産強国ではない」
日本の漁獲量の凋落を後目に中国の漁獲量が日本を追い抜いたのは1989年でした。中国の水産関係者は「我が国は世界一の漁獲量を上げているので、水産大国であるが、総合的な力はまだ足りないので、水産強国ではない」と挨拶の枕詞によく使います。これは自国の水産業に対する自信の現れであり、いずれ総合力でも「水産強国」日本を追い抜くぞという圧力を感じました。中国水産業の歴史は、「3年混乱期」、「文化大革命」など、時代に翻弄されギザギザの発展を遂げてきており、大ブレイクスルーはつい最近のことです(図1)。
4.水産業の振興に果たした経済の改革開放の役割
統計では(図1)、1954年に368万トンであったのが2000年には4,279万トンと約12倍に拡大しました。しかし、この大ブレイクスルーは1985年以降に起ります。中国政府の経済の改革開放政策が重要な鍵となるわけです。それまでは「囲湖造田」、つまり湖沼を埋め立て田畑を作ることに見られるように、農業が主で水産は従である政策が続き、500万トン前後の漁業生産量でしばらく停滞していました。文化大革命が終焉した1979年の「水産物価格の魚種・鮮度等による価格差是認」、1985年の「生産責任制・市場経済システムの導入」、1992年の「社会主義市場経済制度」等が打ち出されると、所得向上が水産物の需要を喚起し、魚価の上昇が起こり、それが漁業生産性の向上につながり、生産量の増大へと連動したようです。なお、発展の一方で、中国沿岸水産資源の枯渇が重なって来ていることは見逃すことができません。
5.動き始めた水産加工産業
水産加工品生産量(図2)が上昇に転ずるのは、漁業生産量の場合の1985年頃よりやや遅れて1993年頃からです。1993年の加工生産量は286万トンであり、2000年は652万トンとこの8年間に2.3倍と大幅な増加を示しました。これは同時期の漁業生産量の増加率の2.0倍より高く、最近の中国の水産加工産業の急速な成長を示しています。しかし、中国各地の水産加工場を視察した際の印象では、日本企業が関わっている合弁工場等は概ねフル稼働していたがそれ以外は夏場の温度の高いときは休むなど、一般に稼働率が低く設備も貧弱なものが多く、特に国有の水産加工場は少ない原料に多くの工員が群がり非能率の印象を受けました。また、氷の使用が非常に少なく鮮度保持の点でも改善しなければならない課題が多くみられました。統計上の生産能力に対する生産量の割合を稼働率とみなすと、1993年から2000年まで横ばい状態で平均値は57%でした。やはり設備の半分くらいしか活用されていない様子も数字に表れます。%
6.水産加工産業は一部地域に集中している
水産加工品の生産量を地域ごとに比較すると(図3)、山東省が全国の約35%の230万トンを生産し、次いで福建省、浙江省、遼寧省、広東省と続き、以上5自治区で全国の約89%を生産しています。これらは漁業生産量とも関連がみられます。一方、20ある内陸部の自治区では加工品の生産量は合計しても13万トンにしかなりません。内陸部にも淡水養殖を主体に886万トンの生産があるにもかかわらず、その加工産業がまったく発達していなのです。淡水魚の加工品として統計上唯一記載されているのが冷凍品です。その数量は6.6万トン(2000年)と淡水漁業生産量の0.4%にすぎません。
7.多様化の兆しが見える中国水産加工品
2000年の水産加工生産量の内訳(図4)をみると、冷凍水産品が343万トン(52.6%)と半分以上を占め、次いで動物タンパク質飼料(多くは魚粉である)が12.4%、乾燥品が11.4%で、塩蔵・燻製品の3.2%、すり身・練り製品が1.7%と続きます。次に1993年と2000年を比較してみます(図5)。冷凍水産品は202万トンから343万トンと伸びているが、割合は70.8%から52.6%と減少していました。つまり加工品の割合が少しづつ増えていることを示しています。日本に比べると製品の品質は高くありませんが、多様化の兆しが表れてきました。冷凍水産品(図6)の中身をみると、業務用の大型ブロック凍結魚の生産量の伸びは小さくなり、消費者用の小袋包装冷凍食品は35.9万トンから82.0万トンへ8年間で2.3倍に急成長し、スーパー等での冷凍食品の需要が増加していることがよくわかります。この一部は日本にも輸出されてきています。中国の加盟はこの動きWTOを更に加速することでしょう。加工品の中で最も大きな変化は魚粉です。この8年間で12.1万トンから80.6万トン、4.3%から12.4%と生産量も比率も大幅に増加しています。これは、近年の中国の水産養殖業・畜産業の飼料需要が爆発的に伸びていることを反映したものです。しかし、国内生産だけでは魚粉は到底賄えず、輸入量も1993年の43.1万トンから1997年には98.5万トンと世界中の魚粉の半分以上を中国が輸入しています。余剰水産物や加工残滓を魚粉へと転換することが求められおり、資源のリサイクル利用、ゼロエミション化は中国にとっても重要な開発目標です。
すり身・練製品の生産量はこの8年間に2.6万トンから10.8万トンと着実な歩みを示してます。中国沿岸の北部や南部では魚団子として魚肉練り製品の人気は高く中華料理のスープに入ります。その生産は零細な企業によるものが殆どです。一方、家庭やレストランで調理されるものはかなりの数量に上ると推測されるが、統計数値として収集されにくいので、実際の生産量はかなり多いように推定されます。最近、おでんは中国のコンビニエンスストアーで非常に人気があります。中国では単品で食する習慣はあまりなく、料理の中に様々な具材をミックスして調理することが多いので、おでんは中国の食習慣に受け入れられ易いからではないでしょうか。その他、乾燥製品、塩蔵・燻製品は順調に伸びているが、水産調味品(珍味など)、缶詰等はここ10数年あまり増加はみられません。
8.低温流通設備の普及
水産業の発展に欠かせない重要な要件に、低温流通システムの完備があります。中国では、「物を製造する」と「それを売る」の間を繋ぐ「流通の概念」が近年浸透してきているものの、低温流通・貯蔵設備の整備は遅れています。詳細なデータがないので冷凍に関する統計(図6)から類推すると、冷凍貯蔵能力はこの10年で1.8倍も伸びたが、それでも128万トンです。日本の冷凍貯蔵能力は約3,500万トンですから、日本の20倍の面積を有する中国の冷凍貯蔵能力は日本の20分の1よりまだ小さいのです。しかし、小さいながら冷凍貯蔵設備は沿岸部の山東省、浙江省、遼寧省等の主要な水産都市に集中しているので、ごく限られた地域でのコールドチェーンは繋がりつつあるようです。
9.あとがき
中国はついにWTOに加盟しました。巨大な中国の胃袋は「食品産業のビッグビジネスの機会到来」と世界の食品メーカが押し寄せるでしょう。そしていずれその反動は日本の水産加工産業に影響が及ぶのは必至です。日本の水産加工産業は足腰を鍛え、長期的な視点に立って慎重な対応が必要となります。一方、私が関係した中国の淡水漁業資源は膨大であるにも関わらず、いまのところ世界市場から殆ど注目されていないので、幸か不幸か今のところひっそりと眠ったままです。日本人は淡水魚はあまり食べませんが、中国の人々は淡水魚は大好きなので、淡水漁業資源を中国国内で有効に利用できるかどうかは、将来の世界の水産物の需要供給動向に少なからず影響を及ぼすように思えてなりません。
(独立行政法人水産総合研究センター中央水産研究所福田裕)
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