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UBSウォーバーグ証券会社・経済調査部チーフエコノミストの白川浩道さん(Hiromichi Shirakawa/ Chief Economist, UBS Warburg (Japan) Ltd.)は今日のポイントとして、「量的金融緩和の縮小を」を挙げる。
<これこそ、金融当局に求められる政策だ!> 銀行部門の健全化にとって真に必要なことは、その「収益力の回復」であり、収益力の回復のために、まず必要なことは、「不稼動資産の徹底したオフバランス化」である。続いて必要なことは、「稼動資産に対する利ざやの改善」である。これは貸出市場におけるオーバーバンキングの是正にほかならない。金融当局に求められている政策は、「不稼動資産のオフバランス化推進とオーバーバンキングの是正である」と強調する。しかし、「現在の金融行政はほぼ正反対の動きをみせている」。当局による銀行への安易な公的資金注入は、不稼動資産のオフバランス化を遅らせるとともに(今回の公的資金注入は地域経済の安定を目的にした貸出維持政策である可能性が高い)、貸出市場におけるオーバーバンキング状態を維持することになってしまう 。銀行部門全体の収益力が回復する可能性は極めて低い。「銀行行政は決定的な誤りをおかしているのではないだろうか」と、危惧する。
<本来の公的資金投入、「破綻処理」で利用されるべき> 市場経済には企業の収益力が回復するメカニズムが内包されている。(1)成長期待に基づいた業容の拡張が過剰供給状態を招くことで企業の収益力を低下させれば、企業は過剰設備や過剰雇用の廃棄を行う。そして、(2)一部では企業倒産が起こり、 供給過剰の是正を加速させる。この結果、(3)生き残り組みの収益が改善し、彼らが改善した収益力をバックに新商品の開発等を行い、需要を喚起し、経済が新たな成長経路に入っていく。
こうしたメカニズムは、「銀行部門にも基本的に当てはまる」と言う。ただ、一般企業との違いは、銀行部門が生産している財が預金といった特殊なものであり、その縮小は「決済システムの機能不全」を通じて、健全な経済にも大きな外部効果を与えてしまうことである。ここに政府介入の根拠がある。しかし、これは、短期的な経済安定を目指した、資本増強目的の公的資金注入が正当化されることを意味しない。公的資金の投入は、不稼動資産のオフバランス化を必然的に伴う「金融機関の破綻処理」に利用されるべきものであって、「安易な資本増強に用いられるべきではない」
<誤った金融行政、銀行過保護行政の破綻はいつ?> こうした誤った金融行政、銀行過保護行政が破綻するのはいつであろうか。「破綻」という言葉を使うのは、「抵抗勢力が存在する限り、政府主導で政策転換が行われる可能性が低いから」である。政府が主導しないのであれば、破綻のトリガーを引くのは、個人預金者、企業、銀行自身、日銀しかない。しかし、個人預金者の行動は当面変化しそうにない。むしろ、安易な公的資金注入によって銀行預金に対する彼らのコンフィデンスは改善する可能性が高い。企業部門も、一部の優良企業を除けば、銀行に対する保護行政に異を唱えることはないだろう。銀行自身はどうか。優良銀行が不稼動資産のオフバラ化を思い切り積極化させる可能性である。しかし、貸出の思い切ったスリム化は優良銀行の収益にとってむしろ不利になる可能性がある。利ざやの改善が望めないからである。先に動いても損をする可能性が高い。(つづく)