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「東京 4月14日(ブルームバーグ):「現在の一連の問題の主たる背景は資産デフレである」−−。速水優前総裁ら日本銀行の旧執行部にとって最後となった3月4、5日の金融政策決定会合で、ある委員がこう述べている。株や不動産などの資産デフレが諸悪の根源だとすれば、それを止めるために日銀は株や不動産を購入すべきだという声が、今後ますます強まることも予想される。
冒頭の発言は、3月17日付日本経済新聞の「経済教室」で同様の主張を展開した植田和男審議委員とみられる。植田委員はそこで「一般デフレを抑えるマクロ政策は重要である」としながらも、「それだけでは持続的な経済の回復はおぼつかない」と指摘。そのうえで「問題の本質は(中略)金融仲介機能低下が低金利の景気刺激効果を弱めていることにある」と指摘した。
3月4、5日の金融政策決定会合ではこうした主張に呼応するように、ある委員が次のように語っている。「経済活動を刺激する効果という点では、単純な流動性の増加自体にさほどの意味はない」、「今後、日銀単独で行うことに限って言えば、結局(1)オペや担保資産の対象を拡張する、(2)金融資産の価格面を強く意識したオペレーションを組み立てる、といった選択になってくる」−−。
ほかがやらないのなら日銀が
福井総裁率いる新執行部が4月8日の金融政策決定会合で打ち出したのは、まさに前者の選択肢だった。日銀は「中堅・中小企業関連資産を主たる裏付資産とする資産担保証券を、時限的措置として金融調節上の買入対象資産とすることについて検討を進める」(発表文)と発表。これまで担保にとどめていた民間債務を直接買い入れるという「異例の措置」(同)に踏み込むことを決定した。
3月4、5日の決定会合で「日銀単独で行うこと」として2つの選択肢を挙げた委員は、続けてこう述べている。「金融政策判断は、現状、先行きの様々な状況を斟酌したうえで、特定の選択肢を排除することなく議論を行い、決定していくものだが、それを行う目的や論理、さらに国民経済のなかで、本来的にはだれがその担い手となるべきなのか、といった点に関する十分な議論が必要となる」−−。
日銀内にはこれまで、社債やコマーシャルペーパー(CP)など民間の債務を直接買い入れるのは、日銀の領分であるマクロ経済政策ではなく、政策金融機関が行うミクロ政策であり、限りなく財政政策に近い、という見方が強かった。それが “十分な議論”もなく、「ほかがやらないのなら日銀がやるしかない」という考えの福井総裁に押し切られる格好で、生煮えのまま決まったのが今回の資産担保証券の買い入れだった。
ETF、REITはなぜダメなのか
日銀は今回の決定について「金融機関の信用仲介機能が万全でないなかで、発展途上にある資産担保証券市場の活性化を通じて企業金融の円滑化を図り、金融緩和効果を強化することを目的とする」(発表文)と説明している。しかし、買入対象となるのは、あくまで銀行の自己査定が「正常先」の中小企業債務を組成し直したもの。「要注意先」以下の中小企業には直接的な恩恵はなく、金融緩和の波及経路の目詰まりを解消する効果は限定的、という見方も多い。
しかも、十分な市場規模のない資産を日銀が買い入れれば、市場価格に影響を与えないわけにはいかなくなる。BNPパリバ証券の河野龍太郎チーフエコノミストは「非正統的なオペ資産である資産担保証券の購入が可能ということになれば、上場株式、指数連動型上場投資信託(ETF)、不動産投資信託(REIT)といったリスク資産がなぜ購入対象にならないのか、という疑問が生じてくるはず」と指摘する。
福井総裁はリスク資産の購入に踏み切る一方で、日銀の自己資本の制約を強調しており、10日の会見でも「常に限界をはっきり認識しながらやっていく」と述べた。しかし、河野氏は「本質的には(日銀が)政府の一機関であることを考えると、日銀のバランスシートだけ取り出してその健全性を論じるのは妥当ではない。通貨への信認は日銀のバランスシートではなく、政府全体のバランスシートによって規定されているはずだ」とも指摘する。
リップサービスなのかどうか
「量的拡大」という実験を行ってきた速水路線から、福井日銀は「質的拡大」の方向に明確に舵を切った。しかし、景気回復の兆しが見えないなかで、それが量であろうと質であろうと、日銀に対して「もっともっと」という声は、強まることはあっても弱まることは考えられない。
3月20日の就任以来、矢継ぎ早に新機軸を打ち出し、政府関係者や政治家の間でも評判が悪くない福井総裁。しかし、ある日銀OBは、リップサービスのままに突っ走れば危険なことになるし、リップサービスにとどめれば、やがて失望感から苦境に立たされる、と不安を口にする。週末にワシントンで開かれた7カ国財務相・中央銀行総裁会議(G7)でも無難な国際デビューを果たした福井総裁だが、国内で待ち構えているのは厳しい現実だ。
http://quote.bloomberg.com/apps/news?pid=80000004&sid=akdwVNVetlsI&refer=top_mof