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From : ビル・トッテン
Subject : 金持ち優遇税制で景気悪化
Number : OW573
Date : 2003年5月9日
日本経済は日々悪化しているが、イラクや新型肺炎その他の報道に押されてか、国の経済政策について詳細報道があまり見られない。タマちゃんの目にささったつりばりだとか、白装束軍団がどこにいくのかといったことばかりが繰り返し報道されると、意図的に国民に知らせないようにしているのではないかとさえ思ってしまう。
(ビル・トッテン)
金持ち優遇税制で景気悪化
先日も財務省が現在非課税である遺族年金の所得への課税を検討するという記事が小さく掲載された。これは高齢者への“手厚い税優遇”の結果、現役世代の税負担が重くなっているため、世代間の負担の不公平を小さくすることが狙いだという。また税制調査会からは年金受給者の税優遇を縮小する方針も出されている。
さまざまな方法で政府は「広く薄く」税金をとろうとしているが、日本が直面している問題は、1988年に42%だった法人税率を30%に、所得税の最高税率も1999年の50%から37%に引き下げるなど、大企業と富裕層への優遇策を繰り返した結果であり、高齢者への「手厚い保護」というのであれば、該当するのは相続税を心配する一握りの富める高齢者にすぎない。そしてこの金持ち優遇税制がさらに日本のデフレを悪化させている。
景気は循環しており、好景気のあとに景気停滞期が来ることは不思議ではない。しかし昭和末期から今日までに日本政府が行ってきた税制改革は、景気を改善させるどころか、この景気循環に逆らいデフレを悪化させるだけの代物だった。
日本の政策を動かすことのできるごく一部の富裕層は、自分たちを減税すれば日本経済が良くなると本当に信じているのかもしれない。しかし、これまでの減税で経済が悪化の一途をたどったように、今後も良くなることはあり得ない。
このまま大企業と富裕層を優遇する政策を推し進めても、日本経済は泥沼に入り込むだけだ。すでに使えるお金を十分に持っている人の所得税を減税しても消費が伸びることはない。減税すべきは、もう少し所得が増えればそれらをすべて消費に回すであろう低所得者層であり、それが低迷する日本経済のけん引力となる。
私が信奉する経済学者ジョン・A・ホブソンは、19世紀末に著した『近代資本主義発達史論』で、不況の原因は機械の急増で資本設備が過剰になり消費量以上の生産能力が存在するようになり、その結果供給過剰で売れなくなり、それが製造業の経営悪化を招き失業者や倒産を呼ぶ、と記している。
これは現代の日本にそっくり当てはまる。またホブソンは、産業革命以後、人間は人々が消費できる以上のものを生産できるようになり、資本主義者、すなわち“利潤を追い求める者”は、常に可能な限り多く生産する傾向にあるとも述べた。ホブソンがこの解決策の一つとして挙げたのは、所得と富に累進的に課税していくことだった。利潤や所得を追い求めても徴税されるのであれば過剰に利潤を追い求める気持ちを抑制できる。もう一つは不足する民間または個人需要を補うために社会需要を増やすことだった。食糧自給率とエネルギー自給率を上げる。国民に生涯教育のプログラムを提供する。国民皆保険制度を充実させる。高齢者や病弱で働けない人のサービスを提供するなどなどさまざまな方法があるだろう。
ホブソンの信奉者だったケインズは、この考えをもとに大恐慌を抜け出す政策をルーズベルト大統領に提言した。ルーズベルト大統領はそれを1932年から1941年まで実行した。また20世紀になってからは、多くのヨーロッパの社会民主主義国もそれを行った。
しかし皮肉なことに、ルーズベルト大統領は原爆の開発を認め、アメリカはその後、公共事業を戦争に向けた。戦争によってアメリカの軍事産業は潤い、攻撃した国の人の生命と社会インフラを破壊したあと、アメリカ企業がそれを復興し利益を手にする。
今回のイラクもそうだ。日本はイラク復興支援に少なくとも9千億円を負担するが、それは最終的に日本国民への増税によってなされるという(三菱総合研究所)。復興事業は早々とチェイニー副大統領がCEOだったハリバートン社が受注したというのだから、実に巧妙な戦争ビジネスである。
昨年、J・K・ガルブレイスが日本の読者向けに『日本経済への最後の警告』という本を出版した。その本でガルブレイスは「政府の役割は低所得者層の生活水準を引き上げるような政策を実行し、すべての人々が満足できるような生活を保証することである。財源不足を補うために失業保険の支給額を減らしたり、健康保険料率をあげたり、負担を増加させることはまちがいであり、老齢年金や医療保険、介護システムといった社会保障制度の充実なしに国民が生活の不安や恐怖から解放されることなどあり得ない。そのような政策を取れば取るほど総需要は停滞し日本社会はますます暗くなる。今日本がすべきことは福祉面での充実をはかるための公共事業だ」と記した。
ガルブレイスはケインズの信奉者であり、この提言はケインズがルーズベルト大統領に提唱したものとまったく同じである。日本政府は今こそ、ガルブレイスの警告に耳を傾け、金持ち優遇をやめ、日本国民の福祉を充実するための公共事業の充実を図るべきだ。そしてそれが日本のデフレを解消する、唯一の方法なのである。
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著作:株式会社 アシスト 代表取締役 ビル・トッテン
発行/翻訳/編集:株式会社 アシスト
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