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「合作がなければこうはならなかった」を米軍側から考える
http://www.asyura.com/0304/dispute9/msg/963.html
投稿者 あっしら 日時 2003 年 4 月 15 日 23:52:09:

(回答先: 「あっしら」さんへ。失礼ですが,『ブッシュ−フセイン合作戦争劇』に賛成できるだけの根拠は認められません。 投稿者 ピースゲーム 日時 2003 年 4 月 15 日 20:31:24)


ピースゲームさん、こんばんわ。
「ブッシュ−フセイン合作戦争劇」説をいろんな視点から叩いてもらうことに大きな意味があると思っていますので、レスをいただき感謝しています。


>今回の「戦争」(実態は,途中からのイラク軍の全面的戦線離脱)の不可思議な展開
>を説明する上で,「合作があった」と仮定すると,確かにうまく説明ができそうで
>す。しかしそれは「十分条件」にすぎず,「合作がなければこうはならなかった」と
>いう「必要条件」にはなりません。簡単な論理的命題です。


ご指摘のように、「「戦争」(実態は,途中からのイラク軍の全面的戦線離脱)の不可思議な展開」というイラク側の動きからだけでは、「合作がなければこうはならなかった」という「必要条件」にはならないと思っています。

まず、「途中からのイラク軍の全面的戦線離脱」問題は、途中からではなく初めからだということを説明します。

途中から全面的な戦線離脱が生じたように見えるのは、クウェートから侵攻し南部地域を北上する過程の戦いが激しかったために生じている錯誤だと思われます。

同時並行的に進められた北部地域の戦いを考慮すれば、初めから異様な展開なのです。

イラク側の対応を取り上げても、「合作がなければこうはならなかった」という説明にはならないので、米英侵略者側の動きを取り上げて考えます。


■ 「合作がなければこうはならなかった」を米軍側作戦から考察


● 南北の戦力配分

合作がなければ、フセイン政権の基盤である北部地域がバングダッド進撃にとって最大の障害(激戦)になると判断するのが作戦計画立案者の合理的思考です。

最終標的がバグダッドだとすれば、フセイン政権中枢メンバーほとんどの出身地であるティクリート攻略もあるので、北部のほうに戦力を厚くしてバグダッド進撃が南北からシンクロするようにしたいと考えます。

クルド人自治区が味方であることから、距離的には北からバグダッドに攻め込むほうがずっと近いのですが、フセイン政権の影響力が強い北部地域により大きな戦力を投入する作戦をとるのが合理的です。

元々トルコ領から侵攻する米英軍の戦力は4万5千人規模で南部よりも少ない計画でした。
これは、クルド人一部勢力を傭兵化することや最強師団と言われている第4歩兵師団を投入することを考慮すれば、一概に誤った作戦だとは言えません。

北部で陸上戦力が不足していると判断した時点で、空爆をその分重点的に配分すれば補うことができます。


● トルコ領からの侵攻が不能になったときの対応

トルコ領からの陸上侵攻がトルコ政府から拒否されたことで、特殊部隊を送り込み、クルド人一部勢力を傭兵化してクルド人自治区から南進する戦術をとらざるを得なくなりました。

(トルコ政府の拒否も今となっては出来レースとも言えるのですが、それはたいした問題ではないと思っています。なぜ、出来レースでトルコ領からの陸上侵攻ができない状態にしたかということを簡単に推測すると、戦闘のみを機能としている第4歩兵師団を侵攻させると、合作を知らないかれらが猛攻を仕掛ける可能性があることを指摘できます。特殊部隊は謀略部隊でもあり、武装もたいしてしていない部隊ですから、そのような心配はありません。トルコから第4歩兵師団を侵攻させると、事情を知らない彼らの猛攻によって、“同盟者”であるイラク側部隊に被害が出すぎるということです)


そして、開戦後5日ほど経ってから、空挺部隊1000人を必要もない降下させて送り込みました。
なぜ、夜間降下という危険な手段が必要ないかと言えば、クルド人自治区に米軍が使用できる空港(一つは3000m級滑走路)が二つあるので、そこに輸送機を着陸させれば済むからです。

私が「合作がない」米軍の作戦立案者であれば、砂嵐や暑さを考慮して3月20日に開戦するとしても、北部地域での陸上部隊の進撃は、トルコ側から侵攻させる予定であった部隊をクルド人自治区の空港にある程度輸送してから始めます。

そのため、トルコが陸上部隊の通過を拒否した時点で、宙に浮くことになる第4師団の兵員と装備を急ぎクウェートもしくはカタールの基地に移動させます。そして、元々貧弱なイラクの防空網をさらに徹底的に叩くことで輸送航路の安全を確保します。
南部の進撃を進捗させることよりも、この作戦を重点的に行ないます。

しかし、現実は、第4師団がクウェートに到着したのは、先週の半ばだと言われています。
これは、米軍の作戦責任者が端から北部地域に大きな戦力が必要ないと判断していたことを推測させるものです。

北部地域に戦車1台が初めて投入されたのは、侵略軍がバグダッドに突入した前日です。(その後も輸送されたかどうかは不明です)


● 北部地域での作戦状況

激戦が予想されていたのに、北部地域の戦況に関する報道が少なく、映像付きで報道されたものは、アンサール・イスラムという反フセイン政権勢力の掃討作戦やアルジャジーラが撮影した小さな町に対する猛空爆の惨状を除けば、特殊部隊とクルド人傭兵が野歩きをしているかのようなものがほとんどでした。(一度、イラク側から迫撃砲の攻撃を受けている最中の映像が流れました)

北部戦線の戦況は、戦車も装甲車両もない軽武装の特殊部隊と同じく軽武装のクルド人が南に進むと、イラク側部隊も南に後退するという報道が、進撃の最初からずっと続きました。
(北部でまず行なわれた作戦はアンサール・イスラムの掃討作戦ですから、その後からはということになります)

フセイン政権の牙城であるティクリートでは、野ざらしの戦車が整然と並んだまま破壊されていない“戦後”映像や前面と側面に盛り土をして防御した戦車が損傷を受けていない映像が撮られています。
(格納庫のような場所が空爆されたような損傷を受け、数十台の戦車や装甲車輛が転がっている映像や破壊されて錆びが出ている戦車が2台ほどある映像は流れました)

私が「合作がない」米軍の作戦立案者であれば、もっとも抵抗が強いと推定できる北部地域を戦車も装甲車両もない軽武装の特殊部隊と同じく軽武装のクルド人が進撃するという危険な作戦をとらざるを得なくなった時点で、防衛陣地や兵器庫への徹底的な空爆を敢行します。
防御側ならたいした火力がなくても戦えますが、攻撃側はその3倍の戦力が必要とされているのですから、装甲車輛も重砲もない侵略軍が今回とった戦術は基本的に無謀極まりないものです。

(逆に言えば、猛空爆を受けていたとしても、北部地域のイラク側戦闘部隊が南部地域と同じように果敢に戦っていれば、南部地域の戦果を格段上回るものになっていたはずです)

このようなことから、モスル・キルクーク・ティクリートなど北部諸都市にどれくらの空爆があったのかを検証すべきだと提起しています。(これは、「合作戦争劇」の大きな「物証」だと思っています)

先週末から流れ始めたモスル・キルクーク・ティクリートの映像を見た限り、空爆はあったようですが、それほどひどいものではありませんでした。
陣地化された戦車や野ざらしで整然と並んでいる戦車数十両が無傷のままだということは、激しい空爆があったわけではないという傍証になります。

なお、軍事拠点ではありませんが、ティクリートの大統領宮殿は無傷で残っていました。1個所だけ、瓦礫になった建物が映されていました。

モスルやティクリートの街では、略奪や破壊行為で荒れた映像は流れても、空爆の跡は流れていません。

限られた映像を見ただけで空爆の規模はなんとも言えないので、実地調査と聞き取り調査をするしかないと思っています。


入手できている情報が少ないので推論の域を超えませんが、「なぜ、フセイン政権の基盤地域である北部の部隊が弱い相手に後退を続け、反フセイン色が強い南部の部隊が強い相手に果敢に戦ったのか、そして、米軍も、まるでそうなるかことがわかっていたかのような作戦をとったのか」を検証していくことで、「合作戦争劇」かどうかが見えてくると考えています。


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>「フセイン死亡説」(死亡時期が問題ですが),「フセイン逃亡説」,「政府高官裏
>切り説」のいずれでも,今回の「戦争」の奇妙な展開をそれなりに説明できます。
>「十分条件」の資格があるのです。「合作説」だけが飛び抜けて確証が高いとする根
>拠は見当たりません。(私としては,別の書き込みにもある「政府高官裏切り説」に
>傾いています。詳細は省きますが,これが一番合理的な説明がつくからです)。

是非とも、「フセイン死亡説」(死亡時期が問題ですが),「フセイン逃亡説」,「政府高官裏切り説」のいずれでも,今回の「戦争」の奇妙な展開をそれなりに説明していただけませんか。

私は、ここまでの「イラク侵略戦争」を見つめてきて、そのなかのどれであったとしても、自分を納得させる説明ができませんでした。

>(どこかで「シリアのアサドもエージェントでないかぎりシリア攻撃はないと思いま
>す」と書かれていらっしゃったのには,正直言ってあぜんと致しました)。

虐殺と破壊であれば米軍の戦力をもってすれば好き放題ですが、ある国を占領支配するための戦争は極めて困難なものです。

「イラク侵略戦争」も、合作のありなしに関わらず、これからが本当の戦いになります。占領支配というのは、戦後日本に押しつけたように、自分たちの価値観や政策を制度として現実化させることです。

英国が1919年から2年間ほどイラクを支配できたのは、オスマン帝国の崩壊という権力的空白期だったからです。それでも、英国は2年間で形式には独立させなければならない状況に追い詰められています。


「ベトナム戦争」では、政府及び政府軍が米国側でありながら、政府を維持することさえできませんでした。

アサド政権がエージェントでない限り、米国は、シリアに対して虐殺と破壊の軍事作戦を展開できても占領支配はできません。
米国政権はそれくらいわかっていますし、米国政権の中東戦略は、虐殺と破壊ではなく、「近代化」を目的としたものです。

このようなことから、アサド政権がエージェントでない限り、無謀で意味のない攻撃を仕掛けることはないと判断しました。

「イラク侵略戦争」も、最終的には勝利できない無謀で意味のないものだと開戦前から主張しています。

「合作戦争劇」という見方にいき着いても、だから踏み切ったのかと思うだけで、最終的に勝利できないという見方は変わっていません。


>「自説に固執することなく一歩退いてもうすこし冷静にさまざまな可能性を探ってい
>ただきたい」と申し上げておきます。

固執しているように受け止められるかもしれませんが、自説に固執しないことをモットーにしていますので、固執しているわけではありません。

「合作戦争劇」ではないと納得できる情報や論証に遭遇すれば、なぜ「合作戦争劇」という誤った判断をしたかをきちんと説明して自説を撤回します。


※ 参照書き込み

『自分の「世界」に信を置いて物事の理非を判断することです』
http://www.asyura.com/0304/dispute9/msg/542.html

『【補足】自分の「世界」にも縛られないことです』
http://www.asyura.com/0304/dispute9/msg/543.html

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