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(回答先: Re: 説得的根拠があれば学説・判例などご教示下さい。一緒に告発したいです。 投稿者 バームクーヘン 日時 2003 年 4 月 07 日 19:35:19)
本件は、一見すると刑法1条1項の問題に見えます。そして、「共犯の犯罪地」に関して、判例さがしなどの迷路に迷い込んでおりました(直接の判例は最高裁レベルはない。平6.12.9最1小決、刑集48.8.576は、実行行為が国内、幇助行為が国外で行われたケースで幇助犯を国内犯とするケース)。
しかし、本件での可罰性は自明とまでは申しませんが、「議論されれば多数説」でしょう。平野龍一「刑法総論2」(有斐閣)のp440は、教唆犯について、説明しないまま「自明」扱いです。
貴見にある「正犯が処罰されない」は異論ありません(外国人の国外犯だから)。この場合、幇助犯の可罰性について、その行為地の議論は実益がありません(小泉と川口が日本国民だから)。
可罰性を肯定し得るかは、もっぱら、依拠すべき共犯の要素従属性に関連して、正犯の構成要件該当性等が認められるか否かの問題です。(独立性説をとるなら当然積極、制限従属性説なら、正犯についての構成要件該当性と違法性を要する。これが消極となるのは、刑法1条1項を処罰条件と考えて、かつ、処罰条件まで正犯に従属すべしとのごく少数説の場合だけと思われます。)
正犯者の構成要件該当性と違法性を肯定すべき私見です。(以下、駄文なので、メンドウなら省略してください。)
論理的には構成要件該当性の評価が、刑法1条1項の判定に先行します。犯罪地は構成要件を前提とする概念だからです。たとえば、アメリカ国内でミサイルの発射ボタンを押す行為は、それによってクウェートからミサイルが発射され、イラクに着弾し殺傷の結果を生じたとすれば、殺人罪に関しては、行為地は「アメリカ」、「クウェート」、「イラク」の三者となります。これは、殺人罪の構成要件が、人の死亡という結果をも構成要件要素とするので、その中間因果関係の経由地と結果発生地を考慮しなければならないからです(いわゆる遍在説)。仮に、まったくの講学のための説例ですが、発射ボタンの衛生状態を保つために素手による接触を禁止する構成要件ならば、その行為地は「アメリカ」のみとなります。
このように、刑法1条1項は、その判定に先立って、構成要件該当性を判断することが予定されております。換言すれば、日本刑法の構成要件は、刑法の適用がない国においても、その該当性を判断し得る(すべき)という意味で、地域的普遍性を本質とすると考えられます。なお、余談ですが、これは個々の構成要件要素が地域性を有するという話とは矛盾しません。たとえば、アメリカにおける自動車の右側通行は、日本道交法の「道路」を日本国内の道路に限ると解釈して、道交法違反の構成要件該当性を排除すべきです(刑法1条1項の判定に先行した判断です)。
一方、刑法の構成要件的評価を離れて、実質的に考えるべき違法性については、仮に正犯者に刑法の適用がないとしても、積極とすべきです。