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米英系メディアはしかたがないとしても、日本のメディアまでが「イラク侵略戦争」の米英側勝利が間近だとはしゃいでいる。
ここ数日の米英侵略軍側発表が事実だとしても、それが米英侵略軍の勝利近しを意味するわけではない。
そうであるかどうかは、米英侵略軍が攻撃を開始して以降イラク側がとってきた戦術を考え合わせなければならない。
■ 自国及び国際そしてイラク世論向けのデモンストレーション活動に走る米英侵略軍
『米軍の「戦況」発表が本当なら、ブッシュ政権が“自殺攻撃”を強いたことを意味する』( http://www.asyura.com/0304/war30/msg/739.html )で書いたように、先週中盤までの補給状況が嘘でなければ、米軍第3歩兵師団先遣隊(第7騎兵連隊中心)は、戦況を良く見せるためのデモンストレーション活動を強いられていることになる。
カルバラ・ナジャフ・ナシリアなどで今なお激戦が続いていることから、先週の金曜日や土曜日の時点で補給状況が改善されたとは考えにくいし、それまでの補給状況報道も、電撃バグダッド侵攻を成功させるための虚偽宣伝だとは考えられない。
イラクのハサフ情報相だけではなく、ロシア人サイトの戦況分析に拠っても、第3歩兵師団が、デモンストレーション活動を行なったことで損失を被っていることは間違いない。
逆にいえば、宣伝活動に駆り出されたことで、きちんとした手順を踏めば避けられた犠牲者をわざわざ出しているのである。
バグダッド市内に入り込む作戦活動は、第一義的に米国世論の流れを変える目的であり、第二がジャックしたTV電波とラジオ電波を使ってイラク国民とりわけバグダッド市民に恐怖感を与えることであろう。
報道で知る限りの戦力(最大で4万人ほど)で、バグダッドを陥落させることはできない。さらに言えば、米軍兵士に多大な犠牲者が出ることを避けられないバグダッド市街戦を敢行する決断もついていないはずである。
大統領宮殿に突入したことで勝利間近を印象付けた今日の作戦行動を見てわかるのは、戦車部隊の進路をA10攻撃機などを繰り出して露払いしていることである。
雑な表現をすれば、戦車や戦闘車という固い殻に閉じ篭った兵士が、大きな脅威がないことを前提に、銃撃を加えながら目的地まで走行して、旗を掲揚するなどして遊んだというものである。
(非武装のイラク人が銃撃されて土手を転げ落ちる映像も流されていた)
■ イラク軍の対応
サダム国際空港が現在どちらの支配下にあるかは判然としないが、バグダッド近郊の大規模空港に米軍部隊を入れさせたイラク側の意図は読み切れない。
防空能力が大きく低下しているはずのイラク側は、国際空港を取られれば兵員・物資の輸送・出撃拠点として利用されるのみならず、長距離砲を据えられることで戦局を不利にしてしまうからである。
米軍部隊が国際空港に入りこんだのが、ハサフ情報相が言うように意図的に招き入れたものなのか、防御ラインを後ろに下げているあいだに虚をつかれて突入されたものなかはわからない。
国際空港は放棄して市街戦に戦力を集中する戦術をとっているのか、国際空港を防御するほどの戦力的余裕がないのかわからないが、国際空港の放棄は危険度が高い戦術だと思う。
(開放スペースとターミナルビルから構成されている空港の防衛が空爆の餌食になりやすいことは確かである)
バグダッド市内で示威活動をしている米英侵略軍が圧倒的優位に立っているとしたら、イラク軍の戦力が大きく削がれたことでそれが可能になっているときである。
しかし、この間の犠牲者数や捕虜の数から、イラク側が手も足も出ず、市街地に立て篭もっての市街戦に全面的に依拠せざるを得ない状況とは考えられない。
(捕虜の半分は、BBCなどの報道でもわかるが、非戦闘員を拘束したものであろう)
以前にも書いたが、イラク側は、進撃する侵略軍部隊にはあまり攻撃せず、拠点都市を守り抜くことと、補給部隊を攻撃することに終始してきた。
バグダッド外周部に設定された防御ラインも、死守すべき防御ラインというより、敵の進撃速度を落とさせる程度のものだったと推測する。
壊滅させられたと言われるバグダッド師団も、フル動員された師団構成なのか、元々限定数での防御態勢だったのか不明である。
戦力で圧倒的に劣っているイラク側が、決戦の場所としてバグダッド市街地を選択していることは間違いない。
そうであるならば、バグダッド外周に強固な防御線を敷くこともなければ、バグダッド市街地に強固な戦力を集中させることもない。
イラクが決戦場をバグダッドとしていれば、進撃速度を落とすレベルの反撃はしても、バグダッドまでは侵略軍を進撃させる戦術をとるはずである。
逆に、圧倒的な戦力差で勝つことができない平地の戦いに執着し、決戦場で敵を撃滅する戦いを挑む前に戦力を消耗させてしまうのは愚かな戦術である。
バグダッド市内に最精鋭部隊は配置していないと推測する。最精鋭部隊は、米英侵略軍主力がバグダッドに入った段階で外から襲う役目を担うはずである。
(外が、地下なのか完全にバグダッド市外なのかはわからない)
内側に精鋭部隊を投入すれば、どん詰まってせっかくの戦力を活かせないことになる。
建物に篭った内側の部隊が侵略軍部隊を迎え撃ち、外から重火器を持った精鋭部隊がそれに襲いかかるという挟撃戦に持ち込むはずだ。
イラク側が大統領宮殿に突入した侵略軍部隊に本格的な反撃を仕掛けていないのは、冷静さと賢明さの証である。
米軍のデモンストレーション活動には、敵の防衛部隊をおびき出し空から叩きたいという意図も含まれているはずだ。
イラク側は、米英侵略軍のつまらない挑発を受けて作戦を変更するという愚を犯してはならない。
主力部隊が市内に入るまでは、我慢に我慢を重ね、散発的な反撃でとどめなければならない。
イラク側の戦術と残存戦力がわからない段階で、バグダッド陥落やフセイン政権崩壊を云々するのは性急過ぎる判断である。
米英侵略軍のバグダッドに対する挑発活動を冷静に受け止めているイラク側にまだ余裕があるとも言える。
100両やそこらの部隊では、バグダッドを陥落させることもできなければ、数時間は可能でも一日単位でその場所を“制圧”することもできない。
もちろん、ここで書いた以上のことを侵略軍司令部は理解している。
バグダッド市街戦は避けたい米英侵略軍は、「衝撃と畏怖」という恥知らずの名前を掲げた虐殺と破壊の空爆を強化するはずである。
この18日間の空爆でいわゆる軍事目標は破壊しつくしているはずだから、今後ますます民間人を直接標的にした空爆が増加するはずだ。
ここ数日の民間人犠牲者の増加が既にそれを物語っている。
米英政権と国際社会は、現在に至るまでただの1箇所でも反フセインの蜂起が起きていない意味を考えなおすべきである。
バスラであれバグダッドであれ、侵略軍が包囲しているというのだから、フセイン政権よりも米英支配を望む人々は、街からすべて脱出するか、米英侵略軍に呼応した蜂起に踏み切るはずだ。
バグダッド市内を見ればわかるように、侵略軍に総力をあげて抵抗するため市民に銃火器が配られている。
イラク国民がフセイン政権よりも米英支配を望むのなら、間違いなく蜂起が生まれる条件が整っていることを忘れてはならない。
米英侵略軍が拠点都市の包囲を狭めれば狭めるほど、イラク国民が何を望んでいるかがわかり、ブッシュ政権が唱えている「イラクの自由」がどれほど独り善がりの妄言であるかがわかるのである。
恥ずべき“戦争犯罪人”小泉首相は、このような現実認識さえできずに、イラク政府に早期降伏を勧めているアホである。
勧めるべきは、米英政権への早期撤退である。
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※ 「イラク侵略戦争」に関する参照書き込み
『米英軍の「イラク侵略作戦」を読む − 長期化の可能性 −』
(http://www.asyura.com/0304/war26/msg/497.html)
『【イラク侵略戦争のゆくえ】 傲慢者らしく“願望”と“信仰”で作戦計画を立てたブッシュ政権 − 戦闘の勝利さえ危うい実情 −』
( http://www.asyura.com/0304/war26/msg/826.html )
『【イラク侵略戦争のゆくえ】 南部地域の点も面も抑えられないままのバグダッド攻略は失敗する − 「反乱」は米英侵略側:1・イラク側:ゼロ −』
( http://www.asyura.com/0304/dispute9/msg/321.html )
『【「イラク侵略戦争」のゆくえ】 開戦前からは大きく変わった「バグダッド陥落」の戦略的意義 − 「バグダッド攻防戦」に至る前に政治的決着を −』
( http://www.asyura.com/0304/dispute9/msg/359.html )
『【「イラク侵略戦争」の戦況】 ばったり途絶えた「戦況報告」の裏側(実態)を読む − 米英侵略軍がバグダッドまで到達できずに敗退する可能性 −』
( http://www.asyura.com/0304/dispute9/msg/447.html )
『米英のイラク“武装解除”がアダに/補給や補充は問題なし/米英軍兵士の“反抗”問題』
( http://www.asyura.com/0304/dispute9/msg/456.html )
『ラムズフェルド長官とマイヤーズ統合参謀本部議長の記者会見 【長期化必至】』
( http://www.asyura.com/0304/war26/msg/530.html )
『破壊や虐殺の軍事作戦と占領支配とは次元が異なります。』
( http://www.asyura.com/0304/war26/msg/720.html )
『ハイテクとローテク − HPM兵器が効力を発揮するのは米英軍に対して使ったとき −』
( http://www.asyura.com/0304/dispute9/msg/334.html )
『ラムズフェルド長官とマイヤーズ統合参謀本部議長の記者会見 【長期化必至】』
(http://www.asyura.com/0304/war26/msg/530.html)