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イラクに最後通告を突き付けたブッシュ米大統領の判断を、過去の国連安保理決議に基づいて正当と解釈した小泉純一郎首相の説明は、国際常識と一致しない。全面的な米国支持には疑問が残る。
イラクからフセイン大統領らが退去しない限り武力を行使するというブッシュ大統領の決断は、日本にとっては、戦後の外交で旗印としてきた「国連中心の国際協調」と「日米安保関係重視」の両政策の衝突を意味する。
米国は先月下旬、英国、スペインと共同で、対イラク攻撃容認を事実上盛り込んだ新決議案を国連安保理に提出したが、可決に必要な票数が見込めず、採択は幻に終わった。
首相は、イラクが義務違反を続ければ深刻な結果に直面するなどとした一連の過去の安保理決議が武力行使の根拠になり得ると説明したが、この見解には無理がある。現段階における安保理の意思は、むしろ新決議の採択失敗に表れていると判断すべきであろう。
一方、首相が会見で強調した「日米関係の信頼を損なうことは国家利益に反する」という見解は、是認してよい。
新決議案に対する拒否権の行使を事前に表明したフランスは、米国との関係が気まずくなった。武力行使の覚悟を固めた米国に対して、同盟国のはずの日本が冷淡に反対の態度をとれば、同様の副作用を招くだろう。
北朝鮮の危険な行動に対処する必要性や、緊密な経済関係を維持する必然性を考えれば、米国との信頼関係を傷つけるわけにはいかない。
首相の「過去の安保理決議が武力行使の根拠になる」という解釈は、日米関係の維持と国際協調主義の堅持との両立を図るうえで、好都合な論理だ。しかし、国際常識と一致しない無理な解釈を強弁すれば、今度は首相の外交感覚、政策全体の信頼感が損なわれる。
米国がイラクとの戦争に踏み切る場合、日本国内では戦後復興に対する協力をめぐる論議が本格化する。首相が信用を失えば、財源確保や支援の在り方などで理解を幅広く得るのは容易でなくなるに違いない。
外交に信頼をつなぎ留める出発点は、首相の率直で的確な説明にあるのではないか。国際法上、米国の行動には問題があり、無条件支持は困難であること。半面、米国に正面から反対するのも国益に反すること。
その二つの結論を合理的に結び付ける論理構成は難しいが、説明に苦悩する姿を素直に見せることが今後の信頼維持につながるはずだ。