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【バグダッド＝久保健一】フセイン政権時代最大の政治犯刑務所として知られるイラク中部のアブグレブ刑務所内で２１日、同政権崩壊直前の今月上旬にイラク当局に処刑されたと見られるイラク人政治犯の遺体約１００体が発見された。
同刑務所近くの墓地でも、過去に処刑された政治犯のものと見られる遺体が多数発見されたと報じられており、米軍が首都に迫る中、フセイン政権が大量の政治犯の扱いに困り集団虐殺を行っていた可能性が強まっている。
荒野の真ん中に立つフセイン大統領を称賛する高さ１０メートル近い大壁画を取り囲むように囚人棟が点在する。その一角で、付近の住民らが地中から掘り出した遺体をビニールシートに包み、ベニヤ板製の棺に移していた。
遺体発見は同刑務所で服役していた政治犯アリ・カーゼムさん（２９）の証言が発端となった。
カーゼムさんによると、バグダッドが陥落した４月９日までの数日間、バグダッド市内の情報機関施設内に収容されていた政治犯約１０００人が同刑務所に連行され、一部は釈放されたが、少なくとも１００人が銃で頭を撃ち抜かれるなどして処刑された。刑務所内にいたカーゼムさんが、それを目撃したという。
処刑された政治犯は、イラク戦争開戦後、フセイン政権崩壊を確信して亡命先のシリアから帰国し、イラク当局に拘束された反体制派だったという。
遺体収容に当たった住民によると、遺体は１つの穴に約１４人ずつ埋められ、穴は少なくとも７つ見つかったという。
バグダッド西方３０キロにある同刑務所は、フセイン政権の強権支配の象徴とも言え、昨年１０月の大統領信任国民投票で支持率１００％を達成した際に同刑務所の政治犯ら数百人が恩赦で釈放された。
(2003/4/22/11:07 読売新聞 無断転載禁止)
http://www.yomiuri.co.jp/world/news/20030422i303.htm
★ カーゼムさんの「バグダッドが陥落した４月９日までの数日間、バグダッド市内の情報機関施設内に収容されていた政治犯約１０００人が同刑務所に連行され、一部は釈放されたが、少なくとも１００人が銃で頭を撃ち抜かれるなどして処刑された」という証言が検死や記録文書などを通じて事実ということがわかれば、崩壊直前のフセイン政権の動きを示す出来事として重要である。
米軍がバグダッド西南にある“国際空港”を制圧し、バグダッドを遠巻きに包囲したという時点で、バグダッド市内からバグダッド西３０Ｋｍにある刑務所に政治犯約１０００人を移送した（する気になった／できた）わけは何なのか？
また、このような移送と処刑が行なわれたということは、４・９の時点まで、フセイン政権の指揮命令系統もそれなりに生きており、命令に従う人も多くいたことを示唆する。
さらに、フセイン政権の崩壊が危惧される状況で、フセイン政権が閉じ込めてきた政治犯をフセイン政権側がわざわざ移送して処刑するという行為は尋常ではない。
なぜなら、それが発覚すれば、米英占領政府や新たなイラク政権から、それだけを理由に極刑に処せられる行為だからである。
政権崩壊直前には、これまでの罪から逃れようとしたり軽くしたいと考える幹部が、率先して政治犯を釈放するようなことを行うものである。
政権崩壊という土壇場で過去の罪にわざわざ上積みするような処刑を行なったとは考えにくい。
推測できるのは、その時点で処刑を行なっても、フセイン政権に代わる新政権から罪を問われない政治犯だから処刑したということだろう。
銃で頭を撃ち抜かれるなどして処刑された１００人ほどの政治犯がどのような性格の政治犯だったのかを調べれば、政権崩壊直前でも処刑した意図がわかるはずだ。
政権崩壊直前に起きたとされるこの「集団処刑」がうやむやにされ、真相究明と責任の追及が行なわれなければ、新たな支配者も死んでもらったほうが都合がいいと判断する人たちが処刑されたということだろう。
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