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(回答先: 詳細な説明ありがとうございます − 二つほどの質問 − 投稿者 あっしら 日時 2003 年 4 月 19 日 21:53:50)
1. 中立義務違背(兵力提供)と「参戦」
形式的に申しあげると、ある規範そのものととその違反の効果は区別する必要があります。ごく単純な例ですが、殺人罪・窃盗罪がありますから、すべての人に対して、「殺すな」、「盗むな」という規範があてはまります。しかし、この規範の存在から、殺人犯や窃盗犯は「人間でない」と帰結すると論理の濫用です。中立義務に違反した国は交戦国とするのも、同様です。
ある行為を「戦争」とする実質上のメリットは、相手国兵力に対する殺傷行為と軍事施設の破壊を適法化することです(換言すると、国際社会に対して自国の戦闘行為を認めさせ、これを尊重させることです)。これに至らない程度の「違法行為」は、戦争として論ずるべきでなく、相手国ないし現代の国際法では安保理による制裁(報復・復仇)の対象となるべき国際法規の違反です。もちろん、戦争を適法とする往時の国際法に基づくなら、戦争開始の口実とされます。(しかし、自動的に戦争が開始されると考えるべきでない。)
この基準で考えるなら、韓国なども交戦国ではなく、中立義務違背にとどまると考えるべきです。
NATOに関してはちょっと別に考えるべきです。現代の国際法では、国連憲章などにあるように、国家ではなく国際機関も戦争の当事者となる可能性を認めています。
2. 政府の存在と戦争状態
戦争状態は、一般には戦争を終結する旨の交戦国間の条約、いわゆる講和条約で終了すると考えられています。一方の軍の無条件降伏や武装解除、あるいは政府の解体では終了しないとする慣習です(この段階では戦闘行為は禁止されますが俘虜の釈放なども行われません)。もっとも、国家の解体によって、国家間条約の可能性もなくなりますから、イラクがクウェートに対して行ったような「併合宣言」は、戦争終了の事由とすべきです。
今回のケースでは、新政権を作り、これを承認した上で、それと講和条約(名称は問題外ですが戦争終了を宣言する条約)を締結する形式による戦争終了が予想されます。
それ以前の段階での占領行政要員の派遣は、戦争継続中ですから兵力の提供です。もちろん、提供の形態は問題になります。外交関係は占領軍が国家でないので不可能ですが、領事関係は占領軍との間でも不可能ではありません。このような形態での派遣なら兵力の提供にあたらないことは当然です。
3. イラクに占領行政機構と対立する暫定政府の仮設例
日本の中立違背によって、自動的に戦争が開始されないと考えていますから、この場合には、暫定政府による対日制裁が問題になります。往時の国際法を前提にすれば、日本の違法行為に対して相当性を有する復仇が正当化されます。たとえば、日本国籍の私船捕獲や日本資産の没収などです。それを超える行為は、宣戦布告ないし最後通牒に基づいて行うべきです(単なる規範なので遵守されるか否かとは別論です)。
4. 日本国内における政治的な問題
小泉一派の「支持」発言当初なら、「国際法の中立義務違反」の声も、ある程度の効果があったと思いますが、現段階では、中立義務違背を責めても「当初から中立でない」と開き直るだけでしょう。「兵力提供」を議論し、その国内法的根拠などを追求する方が政治的効果もあると思います。