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(回答先: 1株当たりの株主資本額を超えた額面価格などでの増資はできないのですか? 投稿者 あっしら 日時 2003 年 5 月 22 日 16:37:26)
「1株当たりの株主資本額を超えた1株価格で増資はできるのか」を検討しましょう。今回の場合は上場企業ですから「1株当たりの株主資本額」を市場価格と等置しておきます。(前のコメントで「ナイーブな仮定」と申し上げた仮定ですが、事業不継続も問題になるような会社ですから、将来への期待を反映しない市場価格が形成されるとすれば、理論的にはよく連動するはずです)。そうすると、新株の発行価額と市場価格に関する商法その他の法律上と政治上の制約の問題となります。
増資引受けは新株主と会社の契約で、その内容は当事者の自由と一応は考えられます。しかし、第三者に有利な価格で新株を発行するときは、既存株主の利益を害します(「有利な価格」とは、上場会社の場合は市場価格を数パーセント以上下回る価格とされています)。この場合は株主総会の特別決議を要します。契約自由の原則の例外ではなく、個々の株主の利害に関する契約について、会社代表者の権限を制限していると考えた方がよいでしょう。極端な場合は、新株発行の効力が争われることもありますが、全株主が同意していれば問題になり得ないという意味で、「契約の自由」の範疇に入ります。
以上に対して、有利な価格であっても、株主に対して割り当てるときは何ら問題が生じません(既存株主の利益を害しないから)。特別決議も不要です。書いておられるように、以前では額面による新株発行の例があります(数十年前は額面による新株発行で株主割当が慣行です)。もっとも、現在においては、平成13年改正でそもそも「額面」がなくなりました。同時に、額面を最低限としていた発行価額の下限の規制もなくなりました(以前から無額面株式については規制がない)。いずれにしても、株主割当では発行価額は問題になりません。
逆に今回の問題ように、市場価格を大幅に上回る発行価額による新株発行は、今までほとんど問題になったこともありません。わざわざ、市場で取得できる価格以上を払って、新株を引受ける者は、ちょっと想定できないからです。
仮に新株主が国庫であっても、この原則を正面から破ることは無理と考えております。もちろん、政府の「支援」を発表するだけでも、市場価格そのものに影響を与えることはできますが、「支援」を理由に何倍も高騰させ、その価格で引受けるのは、ちょっと政治的にも不可能です。もちろん、市場価格が50円前後のときに、「500円で」と発表するのは内閣の自殺行為です。
これは、もちろん「サジ加減」の余地がないという意味ではありません。最初に申し上げましたが、市場価格は、正常に形成されているなら、1株当たりの株主資本をよく反映すると考えております。もちろん、決算発表レベルではなく、市場参加者が推測する「現況」の株主資本です。新株発表前にサジ加減を少し厳しく、あるいは甘くした検査などを実施すれば、それなりの影響を受けることになるでしょう。