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多くの国の経済発展や経済維持に米国の“需要”が大きく貢献しているからです
http://www.asyura.com/0304/dispute10/msg/315.html
投稿者 あっしら 日時 2003 年 5 月 12 日 18:48:18:

(回答先: 丁寧な解説ありがとうございます。米国は史上最大の輸入超過の大赤字なのに、なぜ大丈夫なの? 投稿者 ジャック・どんどん 日時 2003 年 5 月 12 日 02:33:32)


「ジャック・どんどん」さん、こんにちわ。

『相互扶助論』(クロポトキン)と『チャタレー卿夫人の恋人』(D・H・ロレンス)はなかなか面白い取り合わせですね。
面白いといえば、著述イメージとは逆に、クロポトキンが貴族階級の出身で、ロレンスが労働者階級の出身だということについても言えますね。

(ビートルズが貧乏人の子供たちでローリングストーンズがお坊ちゃんたちということにも通じるのかもしれません。『帝国以後』でも指摘されているロシアの共同体性がロシア貴族出自のクロポトキンに『相互扶助論』を書かせたのかもしれません。近代主義に唆された皇帝のほうがロシアに対する裏切り者であり、クロポトキンのほうがロシア的だと言えます)
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>アメリカは史上最大の輸入超過の大赤字が何年も続いているのに、なぜ経済のシステ
>ムが崩壊しないのでしょうか?国民経済のことなど、どうでもよいのでしょうか?

経済のシステムが崩壊しないのは、金融主義(消費=寄生)と産業主義(生産=宿主)の対立が、米国の経常収支の赤字を通じてバランスがとられるという歪なかたちになっているからです。

日本などの産業主義国家は、金融主義国家米国に余剰ドルを貸し出しすることで、自国国民経済の維持や拡大を図ってきました。(輸出超過が利潤の源泉です)
一方、金融主義国家米国は、ドルの国際基軸通貨性を基礎に、巧妙な金融取引を拡大させて自国へのドルの還流を図ってきました。

端的に言えば、放っておけば財の供給過剰でデフレ不況に陥る国家が、放っておけば表面的な通貨不足と財不足に陥る国家に資金を融通することによって、自国経済と世界経済をなんとか維持してきたという構図です。

逆説的に言えば、米国が経常収支の赤字を均衡させようと輸入を縮小させると、もっと早く戦後世界システムは崩壊していたはずです。

産業競争力を誇る国家が対米輸出に精を出しそれから得たドルの余剰分を対米証券投資で還流させる、すなわち、金持ち企業が貧乏のふりをしている人にお金を貸して商品を買ってもらうという仕組みが85年以降の世界経済を支えるものになっています。
ここ10数年の日本は、自分の財布から自分の利潤を充当してきたとも言えます。

(『帝国以後』は、この実状を、アリがキリギリスに嬉々として物を運んであげていると説明しています)

日本は、失業者が380万人にも達し経済苦で年間2万人が自殺しているという経済苦境にありながら、通貨的富が偏在していることで財政難や貿易収支赤字に陥っている米国に資金を貸して商品(財)を買ってもらっているのです。

米国は、国富(ストック)として貧乏なわけではありません。
通貨的富の偏在が米国問題の本質的要因です。米国は、通貨的富がありながらそれを増やすことしか考えない人たちに保有されていることで、国民経済(フロー)では外国から通貨的富を吸い上げて散財に励むというとんでもない振る舞いを続けています。

『帝国以後』でも、米国が帝国から略奪者に変容したと説明する一方で、米国の略奪は(国際的)「ケインズ主義政策」でもあると説明しています。

米国が膨大な貿易収支(経常収支)赤字を計上し続けても、米国経済及び世界経済が崩壊しないのは、それが(国際的)「ケインズ主義政策」だと受けとめられていることが究極の要因だと考えています。
そして、それを支えているのは、軍事力ではなく、ドルが紙切れの国際基軸通貨であることです。

ドルが紙切れの国際基軸通貨であるが故に、中南米諸国にファイナンスことは危険だと認識されても、ドルの発行元である米国にファイナンスすることに危険性を感じていないわけです。
紙切れのドルは必要に応じて発行されると考えられ、国際商品がドル決済で購入できる現実から、対米輸出国は、余剰ドルを米国債に変換して保有しています。


そして、そう遠くない将来に訪れる米国の覇権喪失及び戦後世界システムの崩壊は、壮大な(国際的)「ケインズ主義政策」の瓦解によるものです。

これは日本の「財政危機」や「財政破綻」とまったく同質の問題ですが、米国の場合は、「国際的なケインズ主義政策」であることでより大きな問題を孕んでいます。

米国連邦債務は、6兆4千億ドル(約765兆円)に達しています。
この利払いだけで2500億ドル(約30兆円)を超えます。これは、元本の償還を別として米国連邦予算の25%に相当します。
そして、「国際的なケインズ主義政策」ですから、利払いの70%である1750億ドル(約21兆円)は国外に流出します。(日本は95%が国内にとどまります)

さらに、貿易収支の赤字が4000億ドル(約47兆円)、連邦財政赤字が3000億ドル(約35兆円)あります。連邦財政赤字が減少すれば、貿易収支赤字も減少するのでそのまま合算はできませんが、富裕者増税をしない限り、毎年5000億ドルを外国からファイナンスしてもらわなければなりません。
米国株式市場や米国企業業績は芳しくありませんから、90年代後半のレベルで外国からの対米投資が行なわれると考えることはできません。

毎年5000億ドルのファイナンスができなければ、連邦財政赤字の縮小を余儀なくさせられたり、貿易収支の赤字が縮小することになります。
これは、米国経済の縮小と米国国民の生活悪化を意味します。
(米国の地方財政も赤字(債務)に苦しんでおり、債務の長期化が許されていないことから、職員の首切りや支出削減が横行しています。これが米国経済をさらに低迷させています)

フローのファイナンスができなくなり国民経済がおかしくなれば、連邦対外債務の履行により流出する通貨を抑制したくなるのが自然の流れです。
(国内向け債務であれば、その履行が国民経済的に循環する可能性が高くなりますが、国外的債務の場合は、その割合が低くなります)

ブッシュ政権が財政赤字の拡大に拍車をかける減税政策や軍事拡張路線を打ち出しているのは、連邦債務とりわけ対外債務の履行を既に断念しているからだと判断しています。
(ざっくばらんに言えば、外国から借りられるだけ目いっぱい借りて、返さないと腹を括っていると考えています)

米国が経済苦境から抜け出す手段は富裕層からの徴税と産業力の回復ですが、金融主義と富裕層減税を至上命題としているブッシュ政権がそのような政策をとるとは思えません。(ブッシュ政権ではなくとも、メディアとシンクタンクを富裕層が抑えている現状で、そのような政策が多数派を形成することも考えられません)


米国連邦政府が「デフォルト」を避けるもう究極の手段はドルの増刷ですが、『米国の「デフォルト宣言」→新世界通貨体制』( http://www.asyura.com/sora/dispute1/msg/237.html )で書いたように、民間組織であるFRBや富裕層が、自分たちが保有する通貨的富の価値が大きく劣化してしまう政策を採ることは考えられません。


米国及び世界支配層そしてある範囲の諸国家の支配層は、自分たちの利益が問題であり、「国民経済のことなどどうでもよい」と考えています。


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※ 参照書き込み


『【国際情勢を考える手掛かり】 {(近代産業主義 Vs. 近代金融主義) Vs. (イスラム近代派 Vs. イスラム利権派)}という対立図式 − 日本が立っている歴史的岐路 −』
http://www.asyura.com/2003/dispute8/msg/632.html

『【国際情勢を見る手掛かり】 世界の対立構図は今後どのように変容するのか』
http://www.asyura.com/2003/dispute8/msg/638.html

『【世界経済を認識する基礎】 “あっしら”的経済概念の説明:国民経済と財政 《ケインズ乗数理論と公共事業》〈その10〉 』
http://www.asyura.com/2002/dispute2/msg/111.html

【デフレ問題再考 <その1>】 デフレの基本をもう一度考える
http://www.asyura.com/0304/dispute9/msg/1250.html

『【デフレ問題再考 <その2>】 “強い国際企業”を抱える日本とドイツが「デフレ不況」に陥る経済論理  − 中国のデフレは19世紀型 − 』
http://www.asyura.com/0304/dispute9/msg/1251.html


<【世界経済のゆくえ】>

『【世界経済のゆくえ】世界経済にとって70年代はどういう時代だったのか』
http://www.asyura.com/sora/dispute1/msg/787.html

『【世界経済のゆくえ】経済支配層は70年代に何を考えたのか』
http://www.asyura.com/sora/dispute1/msg/788.html

『【世界経済のゆくえ】産業資本的利益育成から金融資本的利益収穫へ』
http://www.asyura.com/sora/dispute1/msg/789.html

『【世界経済のゆくえ】80年代以降の金融資本的収穫を支える価値観と経済政策』
http://www.asyura.com/sora/dispute1/msg/791.html

『【世界経済のゆくえ】日本経済が突きつけたマネタリズムへの“最後通牒”』
http://www.asyura.com/sora/dispute1/msg/792.html


『【世界経済のゆくえ】「定常状態」あるいは「歴史段階的動態均衡」という経済状況』
http://www.asyura.com/2002/hasan12/msg/1190.html

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