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(回答先: 第三回水フォーラムで主張されたトリック 投稿者 世怪水フォーラム 日時 2003 年 4 月 09 日 19:14:37)
そしてダムが作られる
日本の水が高くなった原因は、ダム利権者たちの政治力に負けてダムを造らされたためであ
る。この部分をいじらずに、配分だけ民営化しても水が安くなるはずがない。実際、公営の状
況でも水供給部分についての合理化は進んでおり、料金の高さは自己資本率(つまり負債の大
きさ)と設備利用率(つまりピークの大きさ)との関わりが大きい。これらはダム建設と密接
に結びついた、過剰設備・過剰投資の問題である。確かに公営のままでは、政治圧力に負けて
新規のダム建設が進むだろう。その一方、営利企業なら利益の最大化を求めて、ボトル水販売
による差益を利用するだろう。そのどちらも解決策にはならない。特に最悪なのは、「運営=
自治体、販売=民営化」のパターンだ。なぜなら公営であるためにダム建設を拒否できず、販
売が民営であるために収益が最大になるボトル水が進められるためである。この解決策は公営
維持でも民営化でもない。「水事業の市民事業化、市民の共同管理による運営」である。日本
でいうなら中間法人化こそが望ましい。中間法人の内容はすでに「市民社会の創り方」で述べ
たが、非営利事業として、市民参加による事業運営を行い得ることが、政治圧力と営利圧力を
かわす方法となるからである。
そもそも水の供給量は表層水よりも伏流水の方が多い。これを地盤沈下を起こさない、持続
的なレベルで使うなら、水の利用可能量は大きく増える。身近な雨水利用という方法もある。
日本では1平方メートルあたり年間1.4トンの雨が降る。小さな家の屋根でも年間84トン
の雨が降っている見当だ。そのうち8割だけ利用できたとしても、家庭の水需要の2割程度を
カバーできる。風呂・トイレ・炊事・洗濯の水利用量がほぼ同量なのだから、節水しながら風
呂の残り湯を洗濯に、雨水をトイレにと利用すれば、半分近くまで水の消費量を減らすことも
可能だろう。これが小さな家での話だから、地方の家なら十分にカバーできるだろう。しか
も、これが世界106位の日本での話なのだ。私たちに足りないのは「一人当たりの水」では
なく、賢くリサイクルして使う「知恵」なのだ。
世界水フォーラムでは、「一人当たり水量」という概念によってダム建設が推し進められ、
その結果水道料金を高くする。すると高くなったことを理由にして、水事業の民営化が行わ
れ、結局貧しい人に水が届かなくなる。「一人当たり水量」というトリックが、一部の政治力
や金のある人間に水を独占させる。衛生を理由にして下水道が進められ、水のリサイクルも困
難にされていく。この会議は人々のためになるだろうか。私は残念ながら人々のためになると
は思えない。私たちはトリックに欺かれることなく、市民の手に水を持ち続ける道を選択しな
ければならない。
●田中 優 Yu Tanaka
1957年東京都生まれ。地域の反原発運動から環境問題に入り、さまざまなNGO活動に関わる。「未来バ
ンク事業組合」理事長、「日本国際ボランティアセンター」理事、「自然エネルギー推進市民フォ
ーラム」理事等を務める。著書「環境破壊のメカニズム」「日本の電気料金はなぜ高い」共著に「どうして
郵貯がいけないの」「非戦」などがある。
http://www.hotwired.co.jp/ecowire/tanaka/030401/03.html