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【北京1日=杉山祐之】
外交筋が1日語ったところによると、中国は先月上旬、射程約8000キロの新型戦略ミサイル「東風(DF)31」の各個誘導多核弾頭(MIRV)化のための飛行実験を行った。ミサイルは空中で爆発、実験は失敗に終わったが、米ミサイル防衛(MD)網計画の推進を踏まえ、MD網突破に有効なMIRVの開発・実戦配備を急ぐ中国の決意を象徴するものだ。
MIRV化された大陸間弾道ミサイル(ICBM)や潜水艦発射弾道ミサイル(SLBM)は、1基に複数の核弾頭を搭載し、核弾頭を1発1発、敵ミサイル基地など、個別の地上目標へ誘導する能力を持つ。核弾頭は「宇宙バス」と呼ばれる運搬装置に載せられており、「バス」は宇宙空間でミサイルから切り離された後、小型ブースターを用いて姿勢などを変えながら個別の攻撃目標に向け次々と核弾頭を打ち出していく。今回の飛行実験は、この「バス」技術に関するもので、「MIRV化に向けた初期ステップの一つ」(同筋)とされる。
実験ミサイルは、山西省の人民解放軍戦略ミサイル部隊(第二砲兵)基地から発射され、目標の新疆ウイグル自治区ロプノル地区に向け飛行中に爆発したという。爆発原因は不明。中国は現在、米本土を攻撃できるICBM20基程度を保有している模様。だが、いずれも単弾頭搭載式で将来、米MDの迎撃能力が高まれば無力化しかねないとの見方も強い。
しかも、ブッシュ米大統領は昨年12月、弾道弾迎撃ミサイル(ABM)制限条約からの脱退をロシアに通告、MD網構築を加速する姿勢を明確にした。
これに対し、戦略ミサイルを「台湾問題などでの対米抑止力」(中国筋)と位置付ける中国は、米MD網を突破する手段として有力なMIRV開発を急いでいる。米中央情報局(CIA)が先月公表した「弾道ミサイル脅威に関する報告書」は、中国のICBM数は2015年までに75―100基に達しMIRV化が実現する可能性も指摘した。
今回の実験で使用されたICBM・DF31は、開発中のSLBM「巨浪(JL)2」のベースとなっている。
実験失敗が示す通り、中国のMIRV計画にはなお多くの技術的困難がある。弾頭小型化に必要な核実験も停止している。しかし、戦略核戦力の強化は、台湾海峡をにらむハイテク局地戦用近代装備とともに、中国軍の最優先分野。この方針は、予算配分の面などで今後さらに徹底される見通しだ。
(2月2日00:25)