【イスラマバード24日白石徹】
アフガニスタンのカルザイ暫定政権を公然と非難するヘクマティアル氏(元同国首相)が、亡命先のイランから今週中にも追放されることになり、アフガンの内紛激化が懸念されている。タリバンが出現するまでヘクマティアル派を支援し続けたパキスタンは、同氏の受け入れを早々に拒否。行き場を失った同氏はアフガンに戻る可能性が強い。
ヘクマティアル氏はアフガン国内に武装勢力を温存しているとされ、カンダハルの暫定政権高官は「政権の不安定化を狙い攻撃を仕掛けてくるかもしれない」と、同氏の帰国に強い警戒感を示している。
米国から「悪の枢軸」と名指しされたイランは国内にあるヘクマティアル氏の事務所二カ所を閉鎖、国外に追放することを決定した。しかし、この追放劇がアフガン国内に新たな火種を持ち込むことになり、「イランはヘクマティアル氏と組んでアフガンを混乱させるつもりだ」との憶測も呼んでいる。
また、パキスタンの消息筋は「パキスタンが受け入れることはもちろんなく、かと言ってそのままアフガンに戻れば逮捕されるだろう。まずは支持者が多いパキスタン国境のトライバルエリア(部族地域)に潜んで様子を見るのではないか」と語った。
パキスタンは旧ソ連軍のアフガン侵攻が本格化した一九八〇年代、ゲリラ八派の中でも特にヘクマティアル派支援に力を入れ、同派勢力の急拡大につながった。しかし、暫定政権を支える米国との関係改善を最優先する方針に転換したムシャラフ政権には、同氏を受け入れる余地はない。
ヘクマティアル氏は九三年、当時のラバニ大統領と和解して首相に就任。ところが、翌年にはドスタム将軍派と手を組んでラバニ派を攻撃、内戦の口火を切った。現在のアフガン混乱の原因をつくった張本人だけに、暫定政権の懸念は強い。