【ワシントン23日=西田令一】
インドとパキスタンが軍事的ににらみ合う現状について、米国務省当局者は二十二日までに、インドがパキスタンによるテロ対策の実行を待つ姿勢を続けていて緊張は多少緩和したとしつつも、ともに正規軍の三分の二前後の大兵力を国境近くに張り付けたままで、本格的な軍事衝突の危険は全く去っていないことを明らかにした。
米国務省当局者によると、インド側は正規軍(約百三十万人)のうち、カシミール地方をはじめ国内の治安維持に必要な部隊を除いたほぼすべての兵力に相当する約八十万もの兵員をパキスタンとの国境地帯に展開。
これに対し、パキスタン側も正規軍(約六十万人)のうち約四十万の兵力をインドとの国境沿いに投入、そのため、米側の要請でタリバン、アルカーイダの残党討伐などを目的にアフガニスタンとの国境地帯に投入していた兵力の一部もすでにインド国境方面に再配備しているほどという。
こうした大量動員は過去の印パ戦争時にもみられなかった規模で、双方ともその大兵力を「攻撃一歩手前の地点」(国務省当局者)まで進めた態勢を維持し、一部撤兵の兆候すらみせていない。本格的な軍事衝突に発展する危険は十分にあり、「偶発的な衝突」(同)も懸念されるという。
そうなった場合に心配される核兵器の使用について、国務省当局者は「軍事的緊張発生以来、双方が核を『即応状態』に置いたことは一度もない」と言明し、「通常戦争になっても核使用の回避は可能だ」との見方を示した。しかし一方で、「世界で最も核使用の危険性がある地域だ」とも強調した。
最近の緊張緩和は、テロとの対決を約束した一月のムシャラフ・パキスタン大統領演説の実行状況をインドが様子見しているためで、(1)インドが求めるイスラム教過激派二十人の引き渡しの一部実現(2)カシミールのパキスタン側支配地からインド側への過激派侵入の停止−がカギだ。侵入は「激減した」(同)が、積雪のせいとも考えられ、四月下旬からの雪解け後の状況が注目される。