【ワシントン19日=前田徹】
ブッシュ大統領が北朝鮮を悪の枢軸に含めたことで韓国の金大中大統領が進めるいわゆる包容(太陽)政策との矛盾が焦点になっていたが、米政権内では一定の理解を示してきた国務省も含めて「太陽政策は失敗」との認識で一致したようだ。少なくとも核開発は停止したとして理解を示したグループも、米中枢同時テロ後、北朝鮮がミサイル技術をイランなどに提供したことを知って失敗を認めたという。
ブッシュ政権の北朝鮮政策を担当する国務省、国防総省、ホワイトハウス(国家安全保障会議)のスタッフは当初から米朝枠組み合意や韓国の太陽政策に懐疑的で、「脅威を取り除くという政策目標を考えた場合、結局は十分に機能しなかった」という認識を持っていた。
例えば懐疑派の根拠は▽北朝鮮は米朝核合意でさまざまな経済利益を得ながら核施設査察には極端に消極的▽韓国からの経済支援を受け取るだけで見返りの南北対話を進めない−などがあげられていた。
しかしその一方で国務省を中心に「(関与政策で)北朝鮮は核兵器開発を断念した。民主改革の金大中大統領を支える必要もある」という反論も存在したことから昨年夏までに政策見直しが行われ、金大中大統領の改革支持を明確にするために太陽政策支持を唱えながら▽核査察の受け入れ▽南北境界線の脅威である北朝鮮の通常兵器撤去−などといった具体的な要求を強めた「相互(成果)主義」が打ち出されたわけだ。
国務省筋によると、ブッシュ大統領がそうした相互主義を悪の枢軸発言によってさらに強硬路線に変えた背景には、「北朝鮮が同時テロ後もイランなどにミサイル技術を拡散(輸出)していたこと」があげられる。とりわけ将来の対決が予想されるイラクに対しても提供が行われた疑いがあることが決定的だったという。
この結果、それまで金大中大統領に理解を示していた国務省においても太陽政策破綻(はたん)説はほぼ定着し、ジム・ケリー国務次官補(東アジア担当)は十四日の米下院外交委員会で韓国の太陽政策について聞かれたさい「太陽は乾いた土地(北朝鮮)を耕せない」と明確に否定した。
ただし二十日から始まる米韓首脳会談などでは金大中大統領の立場を尊重し、ブッシュ大統領はこれまで通り表面上は太陽政策支持を打ち出す予定だ。