イランに亡命しているアフガニスタンのヘクマチアル元首相(52)は、どこへ行くのか。19日付のイラン紙トーセエは、イラン政府が来週中に国外追放すると報じた。しかし、アフガンもパキスタンも「うちには来るな」と拒否している。政治的立場がめまぐるしく変わり、元側近からも「権力の亡者」と批判される元首相をめぐって、さながら「やっかい者の押し付け合い」の状況となっている。
ヘクマチアル氏は、対ソ戦で米国の支援を受けた“功績”で短期間ながら首相を務めたが、ラバニ元大統領派やタリバーンとの権力闘争に敗れて96年にイランに亡命。昨年、米国がアフガン空爆を始めると、「タリバーンと共闘する」と言い出し、ボン合意を「米国の押しつけ」と批判している。元首相の側近だったマンガル・フセイニ氏は、「彼には特定の政治思想はなく、ただ権力を欲しがっているだけ。アフガンの不安定要素だ」とこきおろしている。
「悪の枢軸」と名指しするなどイラン批判を強める米国は、「イラン政府は特定勢力を支援してアフガンの内政に影響力を維持しようとしている」と指摘。これを受ける形で、イランは元首相の事務所を閉鎖し、追放の方針を打ち出した。
これに困ったのがアフガン暫定政権だ。テヘランにあるアフガン大使館のマンスーリ公使は「治安上の理由から、わが国は元首相のイランからの追放を望まない」と発言している。
米国内では、イランは米国の警告に応じたと受け止められている。しかし、テヘランの外交筋は「追放されたら、元首相の行き場はアフガンしかない。それは米国も望まない。イラン政府は米国の要求にこたえると見せて、実は米国をけん制している」と分析している。(20:21)