国防相勢力と個人的確執か
カルザイ議長 治安部隊の強化要請も
【イスラマバード17日=岩田智雄】アフガニスタン暫定行政機構のアブドル・ラーマン航空・観光相暗殺事件で、背景にある同航空相と北部同盟・イスラム協会内のファヒーム国防相の勢力との確執は、タリバンによるカブール陥落前から続く根深いものであることが十七日、分かった。カルザイ議長は「個人的反目によるもので、政治的動機ではない」としているが、ゲリラ勢力の寄せ集め集団である暫定行政機構の土台のもろさを露呈した形となった。
カルザイ議長は十七日、記者会見し「ファヒーム国防相とカヌニ内相が十五日、国防省の人間による犯行であると話した」と、国防省幹部による犯行であることを確認した。
イスラマバードの消息筋によると、ラーマン航空相はジャララバード医大を卒業後、政治団体の指導者となったが、ソ連のアフガン侵攻後、ラバニ前政権大統領のイスラム協会に参加。マスード司令官(故人)やファヒーム国防相らタジク人を中心とするナザール評議会もイスラム協会に加わった。
ラーマン航空相は、一九九六年のタリバンによるカブール陥落までマスード司令官の副官を務め、ラバニ政権発足後は航空相や内相も務めた。しかし、神学生集団であるタリバンとの戦闘を拒否したラーマン航空相はインドへ亡命。最近、ザヒル・シャー元国王派に加わっていた。
ラーマン航空相はマスード司令官に関する情報を数多く知っているとされ、パキスタン紙ニューズによると、最近その内容を周辺に漏らしていたという。これらの行動について、ナザール評議会出身のファヒーム国防相の勢力内部が警戒心を持っていたとされる。
カルザイ議長は記者会見で「逮捕者は裁判のうえ、裁きを受ける。アフガンが過去へ逆戻りすることはない」と述べるとともに、今後治安が維持できなければ国際治安支援部隊(ISAF)の大幅な権限強化を要請する考えを表明した。
一方、暫定行政機構が逮捕したとみられていた国防省幹部三人は、これまでの逮捕者七人の中に含まれておらず、サウジアラビアに逃亡中であることが分かった。カルザイ議長はサウジに身柄確保と引き渡しを求めているが、フランス通信(AFP)によるとアジズ内相は十七日、「三人は巡礼者の中にはなく、逮捕もしていない」としている。