【ロンドン岸本卓也】伝統的な中立主義の見直しを進めるスウェーデンの与党・社会民主労働党は14日までに、最大野党の穏健党を含む3党との間で「国家の安全が脅かされた場合、他国との共同防衛に参加する」という内容の政策協定に合意した。合意は国是だった中立主義が放棄されることを意味し、同国は北大西洋条約機構(NATO)への参加に向けて踏み出すことになった。
与野党合意についてリンド外相は、国会での答弁で「軍事同盟に参加していなくても隣国や欧州連合(EU)加盟国が攻撃された場合に中立ではすまされない」と説明した。しかし、中立主義を唱える小党の左翼党などは「米国の世界支配に屈服する愚策だ」と反対している。
少数単独政権を運営する社会民主労働党は、中立主義の見直しについて左翼党や緑の党の協力を得ようとしたが、交渉は難航した。このため、社会民主労働党は昨年末の党大会で党規約から中立主義を削除し、年明けから交渉相手を中立主義の見直しに積極的な穏健党などの保守中道系政党に替えていた。
スウェーデン国内では、米同時多発テロが与野党合意を促したという報道がある。米国を中心とする「テロとの戦い」に賛同する声が高まり、与党内部で「冷戦時代の中立主義は完全に時代遅れになった」という意見が大勢を占めるようになったという。
政府は与野党合意を国会での議論に移して法制化を図る方針だ。穏健党のルントグレン党首は「今回の与野党合意によって数年以内にNATO加盟が実現するだろう」と述べた。今月に入って政府はNATOとの間で軍事演習や領空警戒の協力強化で合意した。
スウェーデンの中立主義の見直しは同じような中立主義を掲げる隣国フィンランドにも影響を与えている。トゥオミオヤ外相は「スウェーデンは国際情勢の現実の中で自らの立場を明確にした」と評価し、フィンランドも中立主義の見直しに取り組むことを明らかにした。(毎日新聞)
[2月15日11時0分更新]