【ワシントン13日=林路郎】
パウエル米国務長官は12日、上院予算委員会の公聴会で証言し、ブッシュ大統領が先に「悪の枢軸」と名指しした3か国について、「イラン、北朝鮮とは対話を望むが、イラクについては体制転覆に向けあらゆる選択肢を検討中」と明言し、イラクを他の2か国と明確に分け、軍事オプションを探っていく方針を示した。また、12日付のUSAツデー紙は、国連安保理が対イラク制裁見直しを協議する5月を境に、米国が軍事行動に踏み切る可能性があると伝えた。
長官は、公聴会では、「現時点で戦争プランはない」と述べた。しかし、軍事行動に乗り出す際の議会手続きについても踏み込んで説明し、「国連決議を受け武力行使支持決議を議会に求めるのか、宣戦布告を求めるのか、大統領が軍最高司令官として出動を命ずるだけになるのかは今後決定する」と述べた。米政権内では軍事行動に向けた足並みが着々とそろいつつあり、対イラク軍事攻撃が一段と現実味を増してきた。
また、同紙は軍事行動の可能性があるとする根拠として、高官発言などに加え、〈1〉中央軍司令部の各部隊司令官らが続々と湾岸へ移動中〈2〉ベンエリエザー・イスラエル国防相が先の訪米時に、湾岸戦争時のようなイラクからの報復攻撃を受けた場合の対応を米国と協議した〈3〉トルコ、サウジアラビア、ヨルダンは条件付きで軍事行動容認・支持を米国に伝えた〈4〉中央情報局(CIA)はイラク体制転覆の秘密工作プランの実行を検討中――などを挙げた。
チェイニー副大統領も3月中旬に英国と中東10か国を歴訪。フセイン政権打倒に向けた協力策を同盟国との間で探り、事実上の戦争準備に入る。
5月をめどとする狙いについては、単独軍事行動に訴える場合でも、安保理を通じ国際社会と協議したとの実績を残した方が得策との読みがある。軍事行動をちらつかせることで、イラクから大量破壊兵器関連施設への査察受け入れについて譲歩を引き出す狙いもありそうだ。ただ、ブッシュ大統領はイラクの「フセイン体制」を問題としており、大量破壊兵器でイラクが譲歩したとしても米軍が軍事行動を控えることには必ずしもつながらない。
アフガニスタンでの軍事行動も5月ごろには現状と比べて縮小し、米軍が相当規模の作戦を展開できる余地が生ずることも、5月説の背景となっている。
ブッシュ政権が検討している軍事オプションは、特殊作戦を中心とした小規模のものから、イラク反体制派を本格支援し、最大20万の米兵を投入した本格的な侵攻作戦まで多岐にわたるという。
(2月14日01:56)