【ワシントン布施広】
パウエル米国務長官は12日、米上院予算委員会の公聴会で証言し、ブッシュ政権が「悪の枢軸」と呼ぶ朝鮮民主主義人民共和国(北朝鮮)、イラン、イラクに対する武力行使計画は「現段階ではない」と明言した。だが、イラクについては「政権を変える選択肢を常に検討している」とし、最も強い懸念を抱いていると強調した。
長官は「北朝鮮と戦争を始める計画はなく、イランと事を構える計画もない」と述べる一方で、イラクについては「イランや北朝鮮とは別の範ちゅうにある」と「悪の枢軸」の中でも、イラクが別格であるとの立場を示した。だが、長官は攻撃の可能性については「明日から軍事行動を始めるべきだという(大統領への)進言があるわけではない」と語った。
12日付の米紙USAトゥデーは、米高官の証言を基に、近く中東諸国を歴訪するチェイニー副大統領がフセイン・イラク政権の転覆計画を関係国と協議すると報じた。パウエル長官の議会証言はこの報道に関連したもので、イラク攻撃の可能性をめぐる国際社会の緊張をやわらげる狙いがありそうだ。
フライシャー米大統領報道官も同日、「軍事行動は差し迫っていない」と述べ、アフガニスタン攻撃に続いて「テロとの戦争」の第2幕が近く始まるとの見方を否定。イラク攻撃について「ブッシュ大統領はいかなる決定も下していない」と強調した。
ロシアのプーチン大統領は11日付の米紙との会見記事で、イラク攻撃に反対する見解を表明。これに対し、フライシャー報道官はイラク攻撃に関してロシアとの協調は必ずしも求めない姿勢を示していた。
[毎日新聞2月13日] ( 2002-02-13-10:43 )