【カイロ10日=久保健一】
13日のイスラム教の巡礼月入りを前に、聖地メッカを抱えるサウジアラビアでは、イスラム原理主義過激派の流入を極度に警戒、過去最大レベルの厳重な体制を敷いている。
世界各地から集まる巡礼者は今年、250万人に達すると見られている。メッカへの表玄関、同国西部ジェッダのアブデルアジズ国際空港の巡礼者専用ターミナルには、今年から、巡礼者の眼球と指紋のデータを採取する最新鋭電子機器が設置され、不審人物チェックを実施しているほか、偽造パスポートを判別する機器も導入された。巡礼月に配置される治安部隊の数は数万人に及ぶと見られている。
サウジでは、同国に米兵約5000人が駐留していることへの民衆の反発が、米軍のアフガン攻撃で一層強まっている。巡礼は、イスラム聖地からの米軍撤退を叫ぶイスラム過激派にとって、格好の宣伝の場になりうる。サウジ政府が、世界のイスラム教徒が結集するこの時期を狙って、過激派がテロや政治的宣伝などの挙に出るのではないかと懸念するのはそのためだ。1987年には、メッカで反米デモを行ったイラン人巡礼団がサウジ治安部隊と衝突、400人以上が死亡する事件も起きている。
巡礼の総責任者であるアブデルマジド・メッカ州知事は「巡礼は神を崇拝する期間であり、(反米デモなどの)逸脱は許さない」と述べ、巡礼中の政治活動には断固とした態度で望むと強調している。
巡礼は、全巡礼者がメッカ郊外の「アラファトの野」で一同に会して礼拝する、今月20日から22日にかけてクライマックスを迎える。
(2月10日20:17)