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【イスラマバード29日=大内佐紀】
ともに核兵器を保有するインドとパキスタンの間の軍事緊張が高まる中、パキスタンの著名な核問題専門家カマル・マティヌディン退役陸軍中将は29日本紙に対し、戦時下で自国がインド通常戦力に押され窮地に陥った場合、核で反撃する可能性を示した。ムシャラフ政権は核使用の意思を打ち消しているが、総兵力や航空機、戦車などの通常戦力面でインドが明白な優位に立つ現状を踏まえれば、退役中将の指摘には無視出来ない現実味がある。
マティヌディン退役中将は、「パキスタンはどのような状況下で核を行使するか」との本紙の問いに対し、「通常戦力の大半が破壊され、パキスタンの重要な戦略拠点が落ちそうになった時に核兵器に頼る可能性がある」と答えた。一方、英国際戦略研究所(IISS)発行のミリタリー・バランスによると、インドの兵力約126万人、主力戦車約3400両に対し、パキスタンは兵力約62万人、主力戦車約2300両。国内総生産(GDP)はインドの4710億ドルに対し、パキスタンは同628億ドル。押しまくられた同国が、起死回生をかけ核を使う事態も全くの絵空事とはいえない。
他方、パキスタンの核兵器の現状について退役中将は、「インドが75―100発の核爆弾を所持するのに対し、パキスタンは25―40発を保有、すでにミサイルに搭載できるよう弾頭化にも成功した」゜と分析。兵器運用の意思決定、命令伝達体系に関しては、「米国ほど系統だった指揮・統制体系ではないが、大統領を頂点に複数のチェック機能が働くシステムが存在する」と見る。
パキスタンのムシャラフ大統領は29日、対印「先制攻撃」の意図を報道機関を通じて強く否定して見せたが、この「先制攻撃」が核によるものも含んでいることはいうまでもない。強く否定して見せなければならないのは、それだけ、核使用の可能性をめぐる国際的懸念が強いからでもある。だが、大統領にとっては、実際に核を使って国際社会で孤立したり、インドの反撃で自滅したりするより、自制を示すことで国際社会から支援を引き出す方が得策なのも自明の理だ。
サッタル外相が同日の記者会見で、印パ国境の軍事緊張は「危険なまでに高まっている」としつつも、「いかなる国も核使用を考えるべきではない」と強調して見せたのも、その狙いと読める。
ムシャラフ大統領を支持する退役中将は、大統領の意図を代弁するように、「軍や情報機関にシンパが多かったアフガニスタン・タリバンを切り捨て、国民の多くが心情的に支持するカシミールの『自由のための戦士』(分離・独立派イスラム民兵組織)を摘発し、大統領は難しい内政のかじ取りを強いられている。国際社会が経済支援などで、彼の立場を堅固にする必要がある」と主張した。
(12月29日23:31)