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【ブリュッセル森忠彦】人道に対する罪などを裁く国連の国際刑事裁判所(ICC)をオランダ・ハーグに開設するための条約批准が、来年後半の発足に向けて順調に進んでいる。一方で、米国は今月初め、ICCについて協力ボイコットを表明し、欧州側からは米国の身勝手さに対する不満が相次いでいる。
ICCは大量虐殺や戦争犯罪、人道に対する罪などを裁く常設機関が世界にないことから、98年にローマで開かれた外交会議で設立条約を採択した。60カ国が批准した段階で発効する。これまでに47カ国が批准し、国連当局者は「来年夏にも活動が始められるだろう」という。
しかし、米国は軍事行動にかかわった米兵が起訴されるのを警戒して、当初から消極的。クリントン政権時に条約に署名はしたものの、今月7日には上院がICCへの協力に反対する法案を可決した。ブッシュ政権も同調している。
これに対して英国やフランス、ドイツ、イタリア、オランダなど欧州主要国は批准を終え、ICCの早期開設を積極的に呼びかけている。特にハーグには国際司法裁判所(ICJ)や旧ユーゴスラビア国際戦犯法廷(ICTY)など、国際法による司法機関が集中していることから、オランダは最も熱心だ。
今月19日にハーグで開かれた準備会合ではオランダのファンアールツェン外相が「テロへの世界規模の団結を図るためにも米国はICCに参加すべきだ」と米国を批判。欧州諸国もこれを支持した。米国代表は「ICCが発足しても、米国は参加しない」と述べるに留まった。
米国はミロシェビッチ前ユーゴ大統領らが裁かれている旧ユーゴ戦犯法廷には積極的に関与し、政治的な圧力をかけ続けているが、ICCが開設されればアフガニスタン攻撃などで米軍が起訴される可能性もある。これが慎重論を増幅させている状況だ。
一方、米国が「テロとの戦い」で打ち出した軍事審問委員会(特別軍事法廷)には各国から疑問の声が強い。しかしウサマ・ビンラディン氏やタリバンの最高指導者オマル師を裁くのに適当な国際法廷はなく、ICCの早期設立への期待は高まっている。
[毎日新聞12月25日] ( 2001-12-25-23:45 )