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荒波の東シナ海で二十二日、海上保安庁の巡視船と銃撃戦を繰り広げ、沈んだ不審船。ハングルが書かれた救命胴衣を着た男性の遺体などが引き揚げられた。同庁では、朝鮮民主主義人民共和国(北朝鮮)の工作船の可能性が高いとみているが、そうだとすれば、何が目的だったのか。識者に聞いて推理してもらった。
「追いかけられると逃げ、船が沈む際にも命を救ってもらおうという努力もしない。そういうところをみると、北朝鮮の工作船と考えるのがすんなりします」。静岡県立大学国際関係学部の伊豆見元(はじめ)教授も同庁の見方に同調する。
伊豆見教授は、米国同時多発テロ事件後の自衛隊法改正などの動きに対し「北朝鮮が日本の軍事活動の活発化を懸念していることは、公開資料からでも読み取れる」と指摘する。「反テロのための法改正が、北朝鮮を視野に入れているのは間違いない。朝銀東京信用組合事件で朝鮮総連の強制捜査に踏み切るなど、北朝鮮に対しての対応が厳しくなってきていることにも神経をとがらせている。軍事情報の収集活動が活発化している可能性はあります」と推測する。
「コリア・リポート」編集長の辺真一氏も「北朝鮮という前提に立てば、過去のケースから、偵察か麻薬の取引かのどちらか」とする。「偵察とすれば、日本をターゲットにした可能性のほかに、南に大きく迂回(うかい)したうえで韓国の南端に潜入するということもあり得る。いずれにせよ、北朝鮮は今は冬季の軍事訓練の時期に入っており、偵察の実地訓練を試みたという可能性があります。麻薬取引なら相手は日本でしょう。北朝鮮では、外貨獲得のために軍関係者が麻薬取引に携わっている。だから発見されたときに、逃走、発砲と工作船と同じ対応をするのは、不思議ではない」と言う。
一方で、伊豆見教授、辺氏ともに首をかしげるのは船のスピードが遅かったことだ。「一九九九年三月に日本海で発見された不審船よりも遅い。北朝鮮は警告射撃を受けたこの事件のショックから、撃たれることもあり得ると、慎重になっていました。今回の銃撃の対応からも、それがうかがえるのに、なぜスピードの遅い船を使ったのか」(伊豆見教授)と疑問視する。
沈没した場所は水深一〇〇メートルほどという。伊豆見教授は「船体後部に上陸用の小型船を収容しているかなど、工作船かどうかを確認するために、船体を引き揚げるべきだ」と強調している。
また、軍事評論家の熊谷直氏も「今、この近海でこのような不審な行動を取り、追われると銃などで強く抵抗するのは北朝鮮ぐらいしかいない」と、船は北朝鮮籍の可能性が高いと指摘。そして「北朝鮮工作員は見つかった場合、自決することが多い。今回船が沈没したのも船を自ら浸水させた自決行為とみることもできる」と北朝鮮の何らかの工作船ではとの見方を示す。
では、工作船だとすると目的は。「九九年の騒ぎや最近の米テロ事件の影響で今、日本海側や九州から日本に潜入するのは難しくなった。だから、警備の薄い奄美地方からの上陸を狙った可能性がある」としたうえで、「沖縄近辺の自衛隊や米軍の情報収集、朝銀事件後の善後策を日本国内の工作員やスパイと協議することなど、いろいろ考えられる」。さらに「海上保安庁が相手船を攻撃できるようになったので、その“本気度”や実際の対応の仕方を探る意味もあったかもしれない」と話している。
「いずれにしても、北朝鮮だとすれば、日本の情報や日本で米軍などの情報を収集することが大事。今後は今回の日本の攻撃を踏まえて対応を考えるのでは」と、仮に北朝鮮の船だとしても今後も出没が続くとみている。