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テロとの戦いと人権の関係は
(11月29日)
タリフ・ディーン著
【国連本部IPS】
テロとの戦いを優先するあまり、各国政府が市民の基本的自由を侵害しないよう、3つの主要な国際的人権機関の代表者が要請した。11月29日に発表された異例の声明は「反テロ対策の目的は人権と民主主義を守ることであり、これらの価値を損ねるものであってはならない」と西側先進諸国、特に米国、カナダとイギリスで進行中とされる自由な市民活動に対する抑制策を暗に批判している。
この声明は国連人権高等弁務官メアリー・ロビンソン、欧州評議会事務局長ウォルター・シュウィマー、欧州安全保障協力機構(OSCE)民主制度と人権事務局長ジェラルド・スタウドマンの連名で発行された。9月11日の同時多発テロ以来、米政府当局は主にイスラム教徒と中東出身者を中心とする1,000人以上の市民を取り調べのため、拘束した。この措置は「人種選別」によるものであり、憲法上の手続きや保護を侵害していると一部の公民人権団体は抗議している。
米国はさらに、テロに関与している疑いのある外国人を通常の民事法廷で必要とされる手続きを経ずに、軍事法廷で裁こうとしていると批判されている。また、捜査当局にはテロの嫌疑のある者の電話やEメールの傍受の権限が新たに認められた。イギリス政府も米国にならって、新たに一連の反テロ措置を導入した。先週、デービッド・ブランケット内務大臣は欧州人権協定に基づき、テロ容疑の外国人を裁判なしに無期限に拘束できるようにする計画を明らかにした。しかし、米国のように軍事法廷で容疑者を裁くことはしない、と同大臣は強調した。
カナダ政府は10月、国内の外国人テロリストを対象にした同様の厳しい立法措置を導入した。新しい法律は警察と入国管理局に容疑者から取調べ中に強制的に供述を引き出す権限を与え、容疑者に黙秘権を認めていない。
カナダはまた、亡命者や難民受け入れ政策を厳しく改正し、移民に身分証明書を常時携帯することを義務付けた。「われわれはテロリズムの脅威に対抗するには特別な措置が必要であることは認めるが、各国政府に基本的自由を侵害し、合法的に異議を唱えることまで規制する行過ぎた政策を採らないよう要請する」と声明は述べている。
声明はまた、いかなる状況においても侵害されてはならない権利があると指摘し、その例として、生命の権利、思想の自由、良心と信教の自由、拷問または残忍で非人道的、屈辱的扱いを受けない権利、刑法の正確性と非遡及性の法則(ただし、その後成立した法律がより軽い刑を定めている場合を除く)などを挙げている。
声明の発表に先立って、ロビンソン国連人権高等弁務官は名指しは避けたが、一部の国では基本的人権の保護策に明らかに抵触する措置を採っていると批判、それらの国は、暴力的手段に訴えることなく異論を唱える者までテロリスト扱いし、個人の権利を抑制する「過剰な対策」を採っている、と言った。このことに触れ、マレーシアのハスミ・アガム大使は同時多発テロ事件以降頻発しているイスラム教徒に対する差別行為を厳しく非難し、ロビンソン氏に国連人権高等弁務官事務所の権威の下、反イスラム感情がこれ以上広がることのないよう対策をとるよう要請した。
エジプトとシリアの外相もこれに同調。特にイスラム教徒や中東出身者に対する「人種選別的」テロ容疑の取り調べが行われることのないよう申し入れた。国連人権高等弁務官事務所、欧州評議会、OSCEの三者はテロ対策の立法措置を講じる国に協力する用意があることを明らかにし、今後も反テロ法制の実行の監視を続けるといった。