投稿者 FP親衛隊国家保安本部 日時 2001 年 12 月 08 日 15:17:02:
【イスラマバード福原直樹】
アフガニスタンのイスラム原理主義勢力タリバンの通信網や兵たん部門の実態が7日、分かった。アフガンで戦ったタリバン司令官や外国人義勇兵ら10人が毎日新聞に証言したもので、タリバンは3系列の無線連絡網を持ち、最高指導者オマル師はその一系列を使用している。軍事指令のほか、戦闘中にも宗教的指導を行っているという。無線機器はすべて日本製だが、傍受が可能で、米軍は通信内容を把握しているとみられる。
義勇兵らの証言を総合すると無線通信は、(1)全国連絡用(2)車両搭載用(3)個人用の3系列。
機器はすべて日本製で、パキスタン北西部ペシャワルなどで売られている密輸品も購入していた。車両搭載用無線のアンテナは28000ルピー(約5万6000円)だった。全国連絡用の無線機は、200人の兵士を統率する現場司令官に1台ずつ支給されている。
オマル師は全国連絡用の無線を使用し、午前7?9時の間に指令を流していた。同師は細い声でゆっくり「必要な金や車、武器を報告せよ」「空爆の対象になるので、車の移動は避けよ」など軍事的指令や「祈れ」「正直であれ」「善行をせよ」などの指導もしている。無線では、ウサマ・ビンラディン氏や支援組織「アルカイダ」との連絡は、行われなかったという。
一方、タリバンはアフガン南東部のスピンブルダックに20人規模の物資供給基地を設置。各地からカンダハル経由で物資請求が行われ、軍靴や食料などを全土にトラックで運んだという。だが、供給基地は11月下旬に空爆で破壊された。武器の保管所はカンダハルにあるといい、取材に応じた大部分のタリバン兵士が、内戦時代に獲得したロシア、中国製の武器を使用していると証言した。
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【イスラマバード澤田克己】
アフガニスタンのタリバン司令官らが毎日新聞に証言した3系列の無線連絡網は、日本製の民生用機器を転用した可能性が高いもので、世界最高水準の電子戦能力を誇る米軍にとって通信妨害(ジャミング)は簡単だ。しかし空爆開始後もタリバンの無線網は機能し続けている。米軍はタリバンの無線連絡をあえて妨げずに傍受し、ウサマ・ビンラディン氏の所在などの情報収集を狙っている可能性が高い。
証言によると、200人の部隊を率いる司令官に1台ずつ、日本製の無線機が配備されていた。数万人規模のタリバン軍の連絡用に使うには少なくとも数百台が必要だ。入手し易さを考えると、高度な秘話装置などは備えていない民生用機器と考えられる。
カブールで情勢分析を行ってきた軍事専門家の平可夫氏によると、民生用無線機を使った場合、米国の偵察衛星や偵察機は簡単に傍受でき、タリバンの交信内容は完全に把握されたはずという。
一方、米軍はEA6Eなどの電子作戦機で空から妨害電波を発信し、無線連絡を不可能にすることができるが、今回はこれを控えている模様だ。
平氏は「イラク軍の通信網を完全に麻痺させた湾岸戦争と今回の戦争は全く違う。米は情報戦に重点を置いている」と指摘。米軍は通話傍受を通じて、ビンラディン氏の所在▽同氏の支援組織「アルカイダ」とタリバンの関係▽タリバン部隊の状況▽タリバンの最高指導者オマル師の動向――などを探っていると分析する。
米軍は空爆開始から2カ月後の現在もビンラディン氏の所在を特定できていない。タリバン司令官らは「ビンラディン氏やアルカイダは無線通信していない」と話しており、平氏は「ビンラディン氏がタリバンとの無線連絡を一切絶ち、タリバンもビンラディン氏に関する情報を無線で流すのを停止した」と見る。
英国情報筋によると、ビンラディン氏とオマル師は子供らを伝令役に連絡を取り合っているという。11月中旬の時点で、米英軍は両者の間を伝令が片道2―3日かけて行き来していたという情報をつかんでいた。
[毎日新聞12月7日] ( 2001-12-07-23:58 )