投稿者 倉田佳典 日時 2001 年 12 月 07 日 20:00:59:
12/07 16:10 アフガン派兵に割れる世論 対米配慮で旗見せるトル 外信76
共同
米軍のアフガニスタン軍事作戦に協力するため、トルコはイスラ
ム諸国の中で唯一派兵を決めたが、国内世論は大きく割れている。
貢献度の低かった湾岸戦争への反省。米国への外交的配慮―。経
済危機の中、対米関係最優先の立場から「旗」を見せようとするト
ルコ政府の姿勢には日本と通じるものがある。
北大西洋条約機構(NATO)加盟国で米国に次ぐ兵力を誇るト
ルコのエジェビット政権は十一月、特殊部隊九十人の派遣を決定。
ひそかにアフガンに送られ要人警護の訓練に当たっているとの情報
もある。政府は、カブールなどの治安維持に当たる多国籍部隊にも
三千人規模の部隊を参加させる準備を進めている。
狙いは、米国に貸しをつくり(1)欧州連合(EU)加盟に向け
米国に仲介役を務めさせる(2)経済危機打開のため国際通貨基金
(IMF)から追加融資を得る―といった見返りを引き出すことに
加え、中央アジアへの影響力拡大にある。
このほか、湾岸戦争で多国籍軍に参加せず発言力を失った結果、
国連の一方的な対イラク制裁によりイラクとの貿易が制限され四百
億ドル以上の損失を被ったことへの反省。米中央情報局(CIA)
の協力で一九九九年に反体制組織クルド労働者党のオジャラン党首
を逮捕、自国のテロ壊滅に借りをつくったという事情もある。「動
機はすべて米国絡み」(首相府筋)というのが実情だ。
米国にとっても「イスラムとの戦争」という印象を避ける上で、
トルコの派兵は大きなプラス。アフガニスタンの暫定政権樹立が合
意に至った四、五両日、十カ国歴訪中のパウエル米国務長官がトル
コを訪れたのも、対米協力方針を再確認するのが主な目的だった。
しかし、イスタンブールの外交筋は「国民の60%は派兵に反対
。政府の思惑と国民の意識に大きなずれがある」と指摘する。反対
の急先ぽうのイスラム政党支持者らは「同じイスラムの国に派兵す
るのは良くない」「空軍基地を米軍に貸しているが、何も見返りが
ない」と主張。通貨トルコ・リラの対ドル為替レートの急落や高失
業率、年率68%のインフレなど経済悪化も政府批判に拍車を掛け
る。
IMFは十一月、百億ドルの追加融資の可能性を示唆し、政府、
財界は゛派兵決定の配当″に期待を高めているが、「借金を増やす
だけ」(経済専門家)との厳しい見方もある。
「批判があろうと、西側世界の一員を目指すトルコがアフガンで
何かしなければならないのは確かだ」と有力紙ヒュリエットの編集
幹部は語る。分裂した世論をよそに、トルコは今その国旗をアフガ
ニスタンに翻そうとしている。(イスタンブール共同=福田泰教)
(了) 011207 1609
[2001-12-07-16:10]