投稿者 倉田佳典 日時 2001 年 12 月 02 日 19:13:46:
12/02 16:09 タリバン去って略奪、虐殺 報復恐れるパシュトゥン 外信37
共同
「タリバンが去り、恐ろしい日が続いた。ウズベク人は凶暴にな
り、パシュトゥン人の家を略奪、多くの人を殺した」。パキスタン
西部のアフガニスタン国境にあるキリ・ファイゾ難民キャンプ。仮
設テント入居の登録を待つマザリシャリフ出身のラーズ・モハマド
君(14)は恐怖から解放されて安どしたのか、笑みを浮かべた。
顔はほこりと砂にまみれ、両手は白く干からび、長い逃避行の跡を
残していた。
北部同盟のドスタム将軍率いる部隊が支配するマザリシャリフか
ら逃げ、同キャンプに来たパシュトゥン人難民は、北部同盟兵士の
残虐ぶりや民族浄化が行われている状況を口々に訴えた。同じパシ
ュトゥン人のタリバンがかつて無差別虐殺した報復なのか。国境で
は米軍の空爆を恐れる南部の住民に加え、北部同盟支配地域からの
パシュトゥン人難民も後を絶たない。
モハマド君の周囲には登録を待つ女性や子どもが体を寄せ合って
順番を待つ。約五十メートル背後の有刺鉄線の向こうには到着した
ばかりの家族が疲れ切った様子でへたり込み、うらめしそうにこち
らを眺めた。だが、パキスタン政府の方針でテントに入れるのは病
人や女性、老人、子どもだけだ。
モハマド君の家も北部同盟兵士の略奪に遭い放火された。「タリ
バン兵の父は一カ月前に北部同盟との戦闘で死んじゃった。マザリ
シャリフにパシュトゥン人の居場所はもうないよ」。母と兄との計
三人で徒歩や車で約一週間かけ十一月末にパキスタン国境へ。
マザリシャリフから同キャンプにトラックで到着したばかりのノ
ーハンさん(46)も「パシュトゥン人狩りが行われている。今着
ている服以外は何も持って来られなかった。みな危険を感じて五日
間、車を降りずに荷台で寝た」と話した。「パシュトゥー語を話し
たため、北部同盟に舌を切られた人もいた」とモレム君(16)。
アフガン各地に食料などを運んだトラックが帰りに難民を乗せて
キャンプに到着する。運賃の相場はカンダハルからだと一台三千五
百ルピー(約七千円)という。家族で分けたとしても、難民にとっ
ては高価だ。
「私にも話をさせてくれ」。白いひげを蓄えたシェリム・ハーン
さん(60)に肩をつかまれた。マザリシャリフがあるバルフ州の
チェムタルで虐殺を目撃、約二百人でトラック数台に分乗して避難
したという。「国王ザヒル・シャーが国を去り、パシュトゥン人は
悲劇に直面した。女は子どもを産んでも、その子がいずれ殺される
のを待つだけだった。国王が戻らなければ殺し合いは続く」。(パ
キスタン西部チャマン共同=田辺宏)
(了) 011202 1608
[2001-12-02-16:09]