投稿者 倉田佳典 日時 2001 年 11 月 22 日 18:47:05:
11/22 15:01 献身とねたみが同居 人心むしばむ戦乱と貧困 外信446
共同
最前線の野営地でも、取材で食事時になれば゛客人″としてごち
そうを振る舞ってくれる。夜の山間部で途方に暮れても、住民が見
ず知らずの外国人を家に招き、一夜の宿を与えてくれる。その一方
で、他人のもうけをねたみ、激しく足を引っ張り合う。同じアフガ
ニスタンで目撃した矛盾に満ち、理解に苦しむ光景だった。
「二十日以上雇った運転手は解雇し、外務省が登録した運転手を
新たに雇え」。「北部同盟」外務省が十月下旬、アフガン北部の同
盟拠点で活動する外国人記者団に一方的に通告してきた。各国の記
者たちは当然これを拒んだが、通告の背後にはアフガン社会特有の
事情があった。
米中枢同時テロ後、アフガンには世界のメディアが殺到。゛テロ
特需″のにわか景気となり、月収せいぜい数十ドル(数千円)の社
会で記者に雇われる運転手の日当は一日百ドルに高騰。仕事にあぶ
れた運転手がうまく稼ぎにありつけた運転手をねたみ「おれにも仕
事をさせろ」と外務省施設前でけんかを始める騒ぎになっていたの
だ。
通訳と称し、おぼつかない英語で記者に付きまとい平気で一日百
ドルを求め、荷物運びを百メートル余り手伝って五十ドルを要求し
てくる゛外務省関係者″もいた。アフガン取材経験の長い記者は「
北部同盟を束ねてきたマスード元国防相が九月上旬に暗殺されてか
ら、顕著になった傾向」と嘆く。
物不足の前線兵士や一般市民の家庭から精いっぱいのもてなしを
受け、献身的な精神に心を打たれることもあった。その一方、徹底
した拝金主義、しっとが渦巻くさまも目の当たりにした。農業や、
イラン、中国などからの輸入衣類を売るほか、これといった産業は
ない。二十年以上続いてきた戦乱と貧困が人心をむしばんでいるの
だ。
「勇敢で堂々として、名誉を重んじ、寛大で客に親切、優雅でハ
ンサムなアフガン人は、曲折した、卑しい、残忍な心の持ち主でも
ある」。二十一年間アフガンを取材した著名パキスタン人ジャーナ
リスト、アハメド・ラシッド氏は話題の著作「タリバン」でアフガ
ン人をこう評した。
四十五日間の経験でアフガンを語るのはせんえつかもしれないが
、全く同感だ。多様な民族、軍閥で構成する北部同盟に、ザヒル・
シャー元国王派を加えた新政権づくりが今後活発化する。九○年代
初めのような足の引っ張り合いが繰り返されれば、国際社会は二度
とアフガンを振り向かなくなるだろう。(モスクワ共同=及川仁)
(了) 011122 1500
[2001-11-22-15:01]