投稿者 あっしら 日時 2001 年 11 月 05 日 18:12:30:
表題に関する毎日新聞の記事3本
タリバン、反米連合結成へ 米に大きな衝撃
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【イスラマバード澤田克己】アフガニスタン・タリバン政権の動向に詳しい消息筋は2日、イランに亡命中のヘクマティアル・アフガン元首相とタリバンが「反米連合」結成で基本合意したことを明らかにした。元首相は、旧ソ連軍とのアフガン戦争(79〜89年)でのリーダーの一人で、数万人の兵士を動員し得るという。両派の連合結成は、米国や反タリバン連合(北部同盟)に大きな政治的打撃となり、米英軍のアフガン攻撃作戦の遂行に支障を与えるのは必至だ。
消息筋によると、元首相は最近、パキスタン北西部ペシャワルに特使2人を派遣してタリバン側と接触し、基本合意に達した。両者は現在、戦争終結後の権力配分などについて、詰めの協議を行っている。元首相は、タリバンの最高指導者オマル師と直接会って最終的な合意を交わす意向だ。
同筋は「ヘクマティアル派の兵士は、タリバンに合流する準備を始めた。最終合意は近いだろう」と話している。
ヘクマティアル派は最盛時10万人の兵力を誇ったが、タリバンの首都カブール制圧(96年)で元首相が亡命した後、活動停止の状態にあった。大半の兵士はアフガン国内に残留している。
同派の現状には不明な部分もあるが、同筋は「数万人は動員可能だ」と語り、カブールやタリバンの本拠地カンダハルの防衛力が飛躍的に高まると指摘した。旧ソ連との戦いで鍛えられ、地形を知り尽くしたアフガン人ベテラン部隊は米軍にとって強敵となる。
元首相は、タリバン、北部同盟の双方と反目してきたが、今回は「アフガン人と米国との戦い」と位置づけ、タリバンとの共闘に踏み切ったという。
[毎日新聞11月3日]
タリバンとヘクマティアル派の「反米連合結成」 背景に民族対立も
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【イスラマバード福原直樹】アフガニスタンのタリバン政権がヘクマティアル元首相と「反米連合」結成で基本合意した背景には、民族間の確執から元首相が反タリバン連合(北部同盟)と長年、敵対関係にあったことがある。元首相としては北部同盟が政権奪回した場合、新政権に入れないので、「敵の敵」タリバンとの合従連衡により、最後の生き残りを図ったとみられる。元首相とタリバンとの連携は、タリバン崩しを狙う米国に大きな障壁になる。
北部同盟はタジク人のラバニ前大統領派、ウズベク人のドスタム将軍派、ハザラ人のイスラム統一党派に分かれる。これら3派のうち、ヘクマティアル元首相は、ラバニ前大統領派とは犬猿の仲で、両者をはじめ各派の連合でできた暫定内閣成立半年後の94年1月、強硬派の元首相は前大統領派への攻撃を開始。内戦は泥沼化し、その後のタリバン政権の登場を招いた経緯がある。
この対立には、元首相がタリバン同様、アフガンの多数派民族パシュトゥン人であるのに対し、前大統領らの北部同盟がいずれも少数民族出身という背景がある。著名なアフガン研究家ザイダン氏によると、アフガンの「主流」であるパシュトゥン人は、歴史的に外敵に一致団結して立ち向かう伝統があるといい、今回の動きもこの流れに沿ったものだ。
[毎日新聞11月3日]
「反米連合」をパキスタン、イランは黙認
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一方、隣国パキスタンとイランが「反米同盟」を黙認できるのも事実だ。タリバンを支援してきたパキスタンは、北部同盟とは敵対関係にある。さらに同国は米国の要請で、非タリバン・非北部同盟の「第3勢力」の結成に動いたが、その中心人物、アブドル・ハク氏の処刑によって難航している。国内のタリバン支持派の動きも強く、パキスタンは「現在、静観するしかない」(政府筋)という状況だ。
イランは北部同盟を支持してきた。しかし、米が支援する北部同盟が政権を握り隣国に親米政権ができるのをイランが避けたいのは間違いない。
タリバン陣営切り崩しが挫折する中、タリバンとヘクマティアル派の「反米連合」結成は、米国にとって大きな誤算であり、アフガン情勢を泥沼化させる契機になりそうだ。
[毎日新聞11月3日]