投稿者 FP親衛隊国家保安本部 日時 2001 年 10 月 31 日 18:59:10:
米英軍によるアフガニスタン攻撃の長期化を受けて、世界最大のイスラム人口を抱えるインドネシアのメガワティ政権がジレンマに陥っている。米国や日本の経済支援に頼る現実と、イスラム連帯を訴える国内世論との板ばさみ状態にあるためだ。【ジャカルタ中坪央暁】
メガワティ大統領は9月の同時多発テロ事件後に訪米し、ブッシュ大統領のテロ撲滅作戦に支持を表明した。「最大のイスラム国」の支持取り付けを演出したい米政権の意向に沿った形だった。10月7日に米英軍のアフガン攻撃が始まると「軍事行動が限定的で、市民の犠牲が最小限になるよう望む」と述べ、軍事力行使にぎりぎりの理解を示した。
しかし有力誌「テンポ」が攻撃開始直後に行った世論調査では、89%が米英軍の攻撃に反対。最高機関「イスラム導師評議会」などは、米国との聖戦や断交を訴え、政府の「弱腰」を批判して連日大規模な抗議デモを繰り広げた。一部強硬派が外国人襲撃を叫んで治安が悪化したため、大統領は14日「テロに対して暴力で応じることは許されない」と報復攻撃を間接的に非難して軌道修正を図ったのだった。
インドネシアは人口2億1000万人の9割がイスラム教徒だ。だが、その規範は緩く、アラブ中心の「イスラム諸国会議機構」(OIC)における発言力は弱い。しかし、イスラム回帰を志向する流れは厳然としてあり、今年1月の「味の素」豚肉成分事件、相次ぐテロ事件や宗教抗争など、異なる次元でイスラム回帰の動きが噴出する傾向がある。一連の抗議行動は「依然として女性大統領を嫌うイスラム保守派が、政権をけん制する政治的意図もある」(政治評論家)と分析され、メガワティ大統領はそうした勢力に配慮する必要にも迫られている。
過激な抗議行動はこのところ沈静化し、最大のイスラム団体「ナフダトゥール・ウラマ」のハシム・ムザディ議長は「米国などの支援を失えば経済は破たんする。インドネシアの国益を考えるべきだ」と提言した。一般市民も強硬派を冷ややかに見ているが、アフガンのイスラム同胞への強い同情と連帯意識が根底にあることに変わりはない。
インドネシア国立イスラム学院のアズマルディ・アズラ博士は「インドネシアで聖戦を訴える強硬グループは少数派に過ぎない。抗議行動は必ずしもウサマ・ビンラディン氏やタリバンへの支持ではなく、米国のごう慢さに対する国民の反感の表れだろう」と分析している。
[毎日新聞10月31日] ( 2001-10-31-18:12 )