投稿者 いがらし 日時 2001 年 10 月 31 日 09:27:58:
米政権、攻守に試練 アフガン展望開けず、炭疽菌対応ふらふら
(2001/10/30 朝日新聞)
【ワシントン29日=三浦俊章】アフガニスタンでの戦況が、はかばかしくなく、炭疽(たんそ)菌対策にも決め手を欠く。国内外の二つの「戦線」で、ブッシュ米大統領が指導力を問われている。一方、空港の保安要員を連邦職員化する航空安全法案をめぐっては、政治的駆け引きから、民主・共和両党のイデオロギー論争が再燃。米国民の団結に少しずつ亀裂が入り始めている。
●議会結束ほころびも
誤爆事件、イスラム世界の反米デモ、米国に協力的だったアフガン指導者の処刑などが重なり、米国は、タリバーン政権を崩す展望を開けないままだ。ギャラップ社の最近の調査でも、4分の3が、多数の犠牲者が出ても軍事作戦を支持すると答えるなど、国民の士気はまだ高い。しかし、「関心が持続しないことで有名な米国人が『永遠に続く戦争』にどこまで献身できるか」(26日付クリスチャン・サイエンス・モニター紙)との危ぐ感も出始めている。
炭疽菌危機への対応は、より深刻だ。事務所で菌が発見された翌16日、ダシュル民主党上院院内総務は「非常に強力な菌だ」。17日には、ゲッパート民主党下院院内総務も「高純度の兵器級」と認めた。ところが、リッジ米国土安全保障局長は19日に「兵器級」を否定。しかし、郵便局員2人が死亡するに至って、対応を怠っていた郵便職員2千人に対する治療が始まった。ブッシュ政権は、国民に対して警戒心と安心感のどちらを与えるかとの判断に引き裂かれている。
そのちぐはぐぶりに、大統領に近いニューヨーク・デーリー・ニューズ紙のデフランク記者も、「メッセージが混乱している上、情報を出し惜しみしている」とかみつき、政権内からも批判が出ていると指摘した。カード大統領首席補佐官は28日、NBCテレビで、「だれも予想できない新しい危機だ。ほとんど証拠がないのだから」と反論するのがやっとだった。
議会は24日に、下院共和党が民主党の反対を押し切って、1千億ドルの政府減収に結びつく総合経済対策法案を2票差で可決。さらに、空港の保安要員を民間から連邦職員に切り替える法案にも、反対の方針だ。いずれも「小さな政府」を目指す保守の考えに基づくものだが、後者は、上院が満場一致で可決したものだけに、下院共和党のこだわりが目を引く。民主党は大統領支持の条件として、政策上の歩み寄りの努力をあげており、こうした動きは、内外の戦線の苦境と相まって、今後、大統領の指導力の土台を崩しかねない情勢だ。
●パキスタンと戦略協議 米司令官、支援拡大を要請か
【イスラマバード29日=宇佐波雄策】パキスタン国防省筋が明らかにしたところによれば、米軍のアフガニスタン攻撃の指揮をとっているトミー・フランクス米中央軍司令官が29日イスラマバードに到着し、ムシャラフ大統領や国軍首脳らと会談した。
フランクス司令官はムシャラフ大統領との間で、来月中旬から始まるラマダン月にアフガン攻撃をどのようにすべきか意見を交わした模様。
さらにパキスタンの領空・空港使用に加えて、新たにパキスタン領土を使用してアフガンに米軍の地上部隊を投入することの可否についてパキスタン政府に検討を要請した模様だ。しかし、国境を米軍が越えてアフガン領に進撃するような事態はムシャラフ政権にとってはリスクが大きすぎることになる。
●米高官「アルカイダと関係」 パキスタン情報機関
【ワシントン28日=ニューヨーク・タイムズ特約】パキスタンの情報機関「国防省統合情報局(ISI)」が、オサマ・ビンラディン氏のテロ組織「アルカイダ」との間に間接的ではあるが、長年にわたって関係を保ってきたと、米高官が明らかにした。ビンラディン氏とアフガニスタンのタリバーン政権との関係が深まるのを傍観するとともに、インドに対するテロ活動に向けた工作員の訓練のために、アフガン内のアルカイダの拠点を利用してきたという。
ISIはカシミール紛争を戦うゲリラとも直接関係を保ってきたとされ、昨年、米クリントン前大統領のパキスタン訪問にあたって、大統領の警備を担当するシークレットサービスが強く反対した。