投稿者 いがらし 日時 2001 年 10 月 31 日 09:25:11:
米英アフガン攻撃で揺らぐサウジ王政（世界発２００１）
（2001/10/30 朝日新聞）
米英のアフガニスタン攻撃で、イスラム教２大聖地を抱えるサウジアラビア王政の足元が揺らいできた。異教徒の米軍を１０年以上も駐留させ、アフガン作戦を容認するサウジ政権に対し、「反イスラム的だ」と、統治の正統性を問うファトワ（宗教見解）を国内の宗教権威が出した。米当局は同時多発テロの実行犯１９人のうち、１５人がサウジ人だと発表し、米マスコミは「２国関係を見直すべきだ」と批判攻勢をかけている。
（外報部 定森大治）
■禁断のデモ
イスラム教の安息日である２６日の金曜日夜、サウジの２大都市リヤドとジッダでそれぞれ約１００人が黙々と街頭をデモ行進した。あらゆる集会が禁止されているサウジでは異例のことだ。関係筋によると、同日の金曜礼拝で、サウド家が国教とする厳格なワッハーブ派の宗教学者２人が、「アフガンのイスラム同胞攻撃を支援するのは反イスラム的」とのファトワを出したことに呼応した動きだった。
体制批判は重罪だが、反サウド家のビラも各地に出回っているという。
当局はデモ隊をすべて一時拘束したが、それ以上の措置はとらなかった。従来だと宗教学者もデモ隊も厳罰に処せられるはずだが、「いま、それをやると反サウジ王政の動きに火を付けるから、できなかった」（サウジ情報筋）わけだ。
■公然の秘密
９１年の湾岸戦争以来、サウジに駐留し続ける米軍は公称３千人。兵器調達にかかわる米国防産業関係者を入れると、その倍はいる、とされる。米軍の主要任務は国連安保理決議に基づくイラク警戒だが、リヤド南東にあるプリンス・スルタン空軍基地を実質管理する米軍の指揮統制センターが、今回のアフガン作戦で中心的な役割を果たしているのは、「公然の秘密」（サウジ在住西側軍事筋）である。
今月６日、サウジ東部のダーラン中心部で自爆テロが起き、米人１人と犯人の２人が死亡、英国人ら数人が負傷した。犯人はパキスタン系とされるが、サウジ内務省は公表していない。９６年に同じダーランで起きた米軍宿舎爆破テロで米兵１９人が死亡した事件でも、サウジ側は米との捜査協力を拒否し、迷宮入りとなった。
米連邦捜査局（ＦＢＩ）は今月中旬、同時多発テロの実行犯１９人のうち、１５人がサウジ人であると発表したが、サウジ側が捜査に協力する兆しはない。「パスポートを盗まれただけ」とか、「別人の可能性がある」などとして、サウジ人の関与自体を認めていないからだ。
■「時限爆弾」
米紙ニューヨーク・タイムズは「米サウジ関係の再検討を」との社説で、「石油と引き換えに非民主的な政権を黙認してきた米政策のひずみを正すときだ」と主張した。
テロ資金源となる疑惑組織の資産凍結についても、サウジ政府はこのほど、「国内には対象となる組織が存在しない」と、無関係を装っている。
サウジのアブドラ皇太子は２５日、「西側メディアの邪悪な攻撃は、イスラムに対する歴史的な敵意に根ざすものだ」とサウジ紙に語った。ブッシュ米大統領も相前後して、「サウジとの友好関係は変わらない」と発言した。しかし、「アフガン作戦は、矛盾だらけのサウジ王政のあり方に疑問を投げかける“時限爆弾”になりうる」との見方が、中東専門家の間では支配的だ。
○過激派台頭に責任／誤った教義から脱却を
戦闘的で暴力的なイスラム組織の台頭に責任があるのは、貧しいアフガンより途方もない金持ち国サウジである。
西洋の最も退廃的な部分を吸収してきたサウジの金持ちエリートが、美徳を口実に、イスラム世界の貧しい大衆を近代化との不毛な戦いに駆り立てる状況は、受け入れがたい。同様に、米国が貧しいアフガンを攻撃しながら、世界の混乱を引き起こしたサウジ王政を放置しているのは、偽善的だ。
（１６日付ロサンゼルス・タイムズのコラム）
◇
イスラムの名の下に我が国の安全を脅かす者たちを排除せよ。不幸にもそうした者たちに同情するグループがいるが、彼らには素朴で誤った教義から脱し、社会責任を全うできる者たちに身をゆだねよ、と警告する。
アフガンでは今日、少数グループが同国とその資源を悪用し、火だるまをつくっている。その結果どうなるかは神だけが知っている。
（１８日付サウジ紙が伝えたナエフ内務相のテレビ演説）
題名には必ず「阿修羅さんへ」と記述してください。