投稿者 dembo 日時 2001 年 10 月 24 日 15:16:11:
米国は世界の兵器スーパーマーケット
『ロサンゼルス・タイムズ』紙 1999年10月13日
ジム・マン
米国の外交政策で1つだけ冷戦後も変わらないもの、それは圧倒的な力を持つ米国の兵器輸出産業である。1999年10月初め、米上院・下院共同会議委員会は、核兵器プログラムに関して制裁対象国であるインドとパキスタンに対して、米国からの兵器輸出の道を再開し得る表現の使用を密かに承認した。
インドとパキスタンが世界の引火点の1つであっても構わない。1998年に両国が核実験を行ったことも、また1999年はカシミール問題で一触即発の事態になったこともどうでもいい。米議会も行政府も、兵器輸出の前に立ちはだかる障害をそれほど長い間放置しておくことはないだろう、というものである。
過去5年間、米国の兵器輸出額は他の国を大きく引き離してトップであった。ストックホルム国際平和研究所によれば、1994年から1998年の米国の兵器輸出額を合計すると539億ドルにものぼり、第2位のロシアが123億ドル、第3位フランスは106億ドルであった。実際、2位から15位(ロシア、フランス、イギリス、ドイツ、中国、オランダ、イタリア、ウクライナ、カナダ、スペイン、イスラエル、チェコ共和国、ベラルーシ、ベルギー)の輸出額をすべて合わせても532億ドルであり、米国の539億ドルにはまだ及ばない。
さらに、米国の輸出額が減少する気配はまったくない。この記事を書いている1999年10月には、アラブ首長国連邦が米国からF-16戦闘機を購入するところであり、トルコも近々米国から米国製ヘリコプターを購入すると見られている。「今後数年間、米国の兵器輸出額は年平均100億ドルになるだろう」と語るのはワシントンの非営利団体“住みよい世界のための教育基金委員会”の兵器輸出担当者トーマス・A・カーダモネ・Jr.である。
中国の人民解放軍に対する防衛準備で忙しい台湾は、過去5年間、米国の最大のお得意様であり、主に米国とフランスからこの5年間で133億ドルの兵器を購入した。米国の兵器輸出相手国は2位がサウジアラビア、次いでトルコ、エジプト、韓国と続く。これらの国々が兵器の購入に投じた何十億ドルもの資金は、多数の学校や病院、道路の建設に充てることもできたことはいうまでもない。
もちろん、米国の防衛産業や国防総省が主張するように、個々の兵器売買についてはそれぞれいい分があるだろう。北朝鮮やイラクを封じ込めるために必要だ、中東や台湾海峡の力の均衡を維持するためには兵器の購入が欠かせないといった具合だ。時にはこれらの主張にも価値がある。しかしながら、米国の兵器輸出に関する外交政策上の理由には、ますます経済的論拠が付随するようになっている。米国内の製造工場を稼働させ続け、産業基盤を維持するために、さらには、新しい兵器の単価を下げるためには海外に兵器を売り続けなければならない。
ロシアが国内の防衛産業の景気を押し上げるために、ほかの国、例えば中国に兵器を売るといったら米国政府はそれを快く思わないであろう。しかし、米国自身、同じ理由で兵器を輸出しているのだから、米国のロシア非難はうつろに響く。
日本政策研究所のチャルマーズ・ジョンソン氏は、「こうした構図は軍事社会主義に等しい。輸出される兵器の多くは米国民の雇用維持を狙ったものである。米国は今日、世界に平和を広める原動力ではなく、兵器拡散の原動力になっている」と語る。
すっかり定着した米国の兵器輸出のパターンは、必然的に継続せざるを得ないようになっている。元コスタリカ大統領でノーベル平和賞受賞者でもあるオスカー・アリアス氏は、米国防総省がF-16戦闘機の全世界への輸出を最初に認めておきながら、今度はすでに輸出されたF-16に勝る優位性を確立すべく次世代戦闘機F-22の開発の必要性を主張していると、米国に批判的である。
米国政府と防衛産業は、海外において考え得るあらゆる政治的な不測の事態を見つけては、それに備えるためだとして、たとえ主張に矛盾が生じようとも、兵器輸出を正当化しているようである。
米国は、サウジアラビアという極めて非民主的な王国が中東という危険な地域で生き延びるために必要だという理由から、大量に兵器を売っている。しかし、クリントン政権は最近、中南米が民主政権から成り立つようになった、つまり全体として以前よりも安全になったという、サウジアラビアの場合とは正反対の理由から、同地域への兵器輸出の道を開いた。つまり危険であろうが、平穏であろうが、どのような状態でも米国の兵器輸出の理由になり得る。民主政権でも、圧政者の政権でも、軍備増強の必要があるとして兵器輸出が正当化される。
全体として、こうした米国の拡散的な兵器輸出は、ソ連崩壊以来発達した米国中心の国際体制の特徴の1つとなった。『ニューヨークタイムズ』紙のコラムニスト、トーマス・L・フリードマン氏は、『The Lexus and The Olive Tree』(レクサスとオリーブの木)という題名の最近の著書で、世界経済制度とそれに対抗する勢力との緊張関係を伝えようとしたが、この題名には新たな世界秩序を支える兵器の役割が欠けている。今日の世界を正しく描写するのであれば、「レクサスとオリーブの木とF-16」とすべきであったのではないか。
世界の兵器貿易(1994〜1998年)
単位:億ドル
上位輸出国 上位輸入国
1. 米国 539 1. 台湾 133
2. ロシア 123 2. サウジアラビア 97
3. フランス 106 3. トルコ 66
4. イギリス 89 4. エジプト 59
5. ドイツ 72 5. 韓国 52
6. 中国 28 6. ギリシャ 48
7. オランダ 23 7. インド 41
8. イタリア 17 8. 日本 41
9. ウクライナ 15 9. アラブ首長国連邦 33
10. カナダ 14 10. タイ 31