早く勝っては困る? ブッシュ政権の大いなる矛盾(ロバート・ライト,Slate)

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投稿者 dembo 日時 2001 年 10 月 23 日 10:37:28:

早く勝っては困る? ブッシュ政権の大いなる矛盾(ロバート・ライト,Slate)
2001 年 10月 19日
10月7日に米英軍がアフガニスタンへの攻撃を開始してから約2週間が過ぎた。だが、ブッシュ大統領がかかえる矛盾が解決したわけではない。イスラム諸国に吹き荒れる反米感情を悪化させないために、戦争はできるだけ早期に終了しなければならない。しかし隣国のパキスタンは、最も簡単に戦争を終わらせる方法、つまり「反タリバン勢力・北部同盟がカブールを制圧するのに加担する」という形での戦争終焉(えん)には反対している。タリバン後の体制の見通しもたっていない。これは、まさに終わりのみえない戦争だ。


ブッシュがタリバン軍の拠点であるカブール北部を爆撃しないのは、パキスタンへの配慮だけではないだろう。
ブッシュ政権としても、北部同盟にアフガニスタンの支配権を与えることを懸念しているのだ。北部同盟には、同国の最大の人口を占めるパシュトゥン人が含まれていないからである。北部同盟が勢力を拡大する前に、安定した多民族政権を樹立するのがブッシュの狙いだ。とはいえ今のところ、次期政権の母体がどんなものなのか、は見えてこない。
つまりこういうことだ。
「この戦争に早く勝ちたいが、早すぎるのは困る」
タリバン政権を壊滅し、穏便に政権交替が行われるのが理想というわけだ(残念ながら、タリバン後の体制の青写真はまったく描けていないのだが)。
となると、しばらくはさらなる攻撃を続け、イスラム世界が憎しみをつのらせるのを傍観するしかないのだろうか。

●空爆によって米国のマイナスイメージが増強
空爆がタリバンにとって優位に働く可能性もある。
重要拠点といわれる攻撃対象をほぼ破壊した後に空爆を続けても、戦略的な効用は小さい。逆に民間人に犠牲が出るたびに、タリバンにいい宣伝材料を与えることになる。いったんはアフガニスタンから追放された西側メディアも、空爆地域の取材に入国を許可されている。犠牲になった子供たちの映像が今後も、イスラム各国で繰り返し流されることになるだろう。
パキスタン情勢の悪化も懸念される。反米デモによる死者が日常化し、イスラム原理主義者ではない国民にも反米感情が高まっていると、ワシントン・ポスト紙は報じている。
「野蛮な国アメリカ」は、空爆によってさらに卑劣さを印象づけた。ブッシュ大統領は9月20日に下院で行った演説で、「今度の空爆は、地上戦の投入がなく、米軍に1人の犠牲者も出なかったコソボ自治州に対する空爆とは異なるものになるだろう」と語っている。
しかし今のところ、今回の戦争はコソボへの空爆とまったく同様の展開を見せている。
豊かなアメリカ人が空高くから爆弾を投下し、貧しい市民が吹き飛ばされる、という構図だ。それに、あの食料物資の投下ときたら!(地雷原の真ん中で、ビネガードレッシングを味わいたいと思うだろうか)。

●北部同盟の勝利で終わらせたくない、という矛盾
地上軍の投入がベストだと言っているわけではない。必要以上の地上軍を投入すれば、パキスタンのムシャラフ大統領が支援を撤回する可能性もある。
それに、米軍から犠牲を出すべきだとも思わない。
それでも、低空飛行の攻撃機を用いることは、タリバン軍のスティンガー対空ミサイルという危険を上回る効果があると考える(この記事を書いてから、米軍が低空飛行のAC130対地攻撃機を投入したとの報道があった)。
なぜなら、第1にオサマ・ビンラディンをかくまうタリバン軍を壊滅させるのに効率がいいということ。第2に、地上戦が始まり泥沼化すれば、タリバン軍の戦士に離脱を促すメッセージを突きつけることができる。「4500メートル上空からの空爆を生き延びることができても、今度は助からないぞ」と言うわけだ。アメリカにとってタリバン軍の弱体化は願ってもないはずだ。
そうそう、忘れていたことがある。タリバンから北部同盟に大量の戦士が寝返れば、終戦は早いかもしれない。だが、北部同盟の勝利に終わるのはアメリカにとっては好ましくない。
対タリバン戦につきまとう矛盾を、茶化しているわけではない。実際に根深い問題だといっているのである。北部同盟がカブールを掌握するようなことになれば、パキスタンはこの戦いを長引かせるだろう。アフガニスタン南部に住むパシュトゥン人がタリバン側に加担する可能性もある。
しかしブッシュは、こうした矛盾を予見していたはずだ。対タリバン戦争は、当初からこうした問題を内包していたのではなかったか。

●終わりのみえない戦い
政府当局者は、こうした見方を否定するかもしれない。アフガニスタン内部の抗争がすさまじく、政権交代が一筋縄ではいかないと理屈をこねるだろう。しかし、タリバン後の明確な構想があるのなら、各勢力に支配力を分配すればいいだけの話だ。
問題は、勢力を拡大できないとなれば、北部同盟にとってカブールを制圧する動機がなくなるということだ。すべてをうまく解決するのはむずかしい。タリバン後に北部同盟が政権を握れないのなら、どうして彼らにタリバンと戦う意欲が生まれるだろうか。
空爆が始まる前、軍事介入は最小限にすべきだと私は主張した。戦争反対論者がなぜタカ派に転じたかと、疑問に思うかもしれない。私が軍事介入に反対したのは、アメリカに対するイスラム世界の憎悪が吹き出し、さらなるテロリズムを生むことになると考えたからだ。実際、憎悪は日々拡大している(イスラム諸国では反米デモは激化し、ビンラディンTシャツが飛ぶように売れている)。
最悪の戦争とは、まさにこの戦いではないだろうか。終わりの見えない戦いだ。
しかし、私がまちがっているのかもしれない。同時多発テロの発生で気づかされた地政学の根がもっと複雑なことを、神は知っているだろう。それに複雑な世界事情を甘く見ていたのは、私だけではないはずだ。
(ロバート・ライトはペンシルベニア大学客員教授。著書に「The Moral Animal」「Nonzero: The Logic of Human Destiny」がある)


Heightened Contradictions
Slate
By Robert Wright
(訳:吉田多佳子、MSNジャーナル編集部)

http://journal.msn.co.jp/articles/nartist2.asp?w=76982


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