オサマはまだまだ遠い 「廃墟」への無意味な空爆

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投稿者 今週のAERA 日時 2001 年 10 月 17 日 17:52:21:

回答先: 米軍地上作戦展開へ 投稿者 KOZY 日時 2001 年 10 月 17 日 10:42:21:

今週のAERA
オサマはまだまだ遠い
「廃墟」への無意味な空爆

2001年10月22日号
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テロから始まった経緯は、第一次世界大戦の勃発に
似ている。空爆に軍事的効果はなく、戦いはこれか
ら。大戦は4年を費やしたが・・。
編集部 田岡俊次


 ニューヨーク、ワシントンでの大規模テロから4
週間後の10月7日、米英は事件の首謀者とみなす
オサマ・ビンラディンの引き渡しを拒否したアフガ
ニスタンに攻撃を開始したが、ここに至る経緯は第
一次世界大戦の勃発に似ている。1914年6月2
8日、オーストリア皇太子と皇太子妃は、同国がそ
の6年前、強引に併合したボスニアのサラエボでの
陸軍演習の視察に訪れ、交差点で車が停まったとこ
ろをセルビアのテロ団「黒手組」の青年に拳銃で射殺された。

●湾岸戦争より小規模
 当時の大国オーストリアは激昂し、セルビアに対し犯行の背後にいる首謀者
の処罰、裁判にオーストリアの代表を加えるよう要求し、セルビアが「外国人
を審理に加えるのは無理」と回答すると、事件の1カ月後の7月28日宣戦布
告し、セルビアに侵攻した。オーストリアを支援するドイツ、一方セルビアと
縁の深いロシア、さらにフランス、イギリス、日、米までが参戦し、ヨーロッ
パの衰退を招いた4年間の大戦争に発展した。

 テロに怒ったオーストリア、それを支持した親族国ドイツの気持ちは理解で
きるが、戦後のベルサイユ条約では「大戦の勃発の責任は一切ドイツにある」
とされた。この「戦争責任条項」を起草したのは米国の外交官ジョン・F・ダ
レス(第二次世界大戦後の国務長官)だ。いま皮肉にも米、英は、当時の墺、
独と同じ立場となった。

 だが、第一次大戦とちがい、今回の攻撃はきわめて小規模だ。攻撃の初日に
は米本土ミズーリ州の基地と、インド洋の英領ディエゴガルシア島から出た爆
撃機が計15機、空母2隻からの艦載機25機のほか、海上から巡航ミサイル
「トマホーク」50発も発射されたが、これは各318キロ爆弾一発だから、
50発で戦闘・攻撃機約6機分の爆弾に匹敵する。91年1月の湾岸戦争の初
日の出撃2400機とは比較にもならない。

 攻撃すべき目標がイラクよりはるかに少ないのも一因だが、パキスタンはテ
ロ対策に協力する、として経済制裁の中断、援助再開の条件をとりつけなが
ら、基地使用については言を左右にし、国王が親米的なサウジアラビアも、
「イスラム国への攻撃には基地を使わせない」
 と明言し、米本土から空軍の増援を送り込めないことが根底にある。空母2
隻(カールビンソン、エンタープライズ)がアラビア海にいるが、空母は防空
用戦闘機F14を各14機、戦闘攻撃機FA18を36機積むから、2隻で計
72機のFA18が攻撃兵力だ。

 攻撃は初日に31カ所、2日目に13カ所に対し行われ、ラムズフェルド米
国防長官は10月9日、
「攻撃は成功し、アフガニスタン上空で絶対的な航空優勢を得た」
 と発表した。だが同国タリバーン軍の航空戦力は元々無きに等しい。旧政府
軍から接収した旧式のMiG21戦闘機と対地攻撃機Su22の計約20機し
かなく、この10年以上ロシアから部品が入らないため、可動機は5機程度と
見られていた。大型の対空ミサイルも79年のソ連侵攻前に、社会主義政権が
ソ連から供与されたSA2、3しかなく、ロケットの推進薬が劣化し発射不能
と言われていた。米軍が「制空権を確保」したのは事実だが、元からそうだっ
たのだ。

 対ソ戦後期に米国が供与した肩撃ち式の対空ミサイル「スティンガー」(射
程5キロ)は少なくとも数十発が残っていると見られ、これは爆撃では壊せな
い。なお耐用年数が若干残っている。

●爆撃はスタンドプレー
 攻撃でオサマ・ビンラディンのゲリラ訓練所やカブールの大統領官邸、国防
省なども破壊した、とされるが、人間はとっくに退避していたはずだ。日干し
レンガの小屋や、軍閥の内戦でほぼ廃墟と化していたカブールを爆撃してもほ
とんど軍事的効果はなく、国内向けのスタンドプレーだ。

 きわめて限られた兵力を分散し、日本の1・7倍もあるアフガニスタンの各
地を攻撃したことは、米国がビンラディンの所在を全くつかめていないことを
示している。国防長官も所在は不明、と認めた。

 空母の弾薬庫は約1週間の攻撃でカラになるから、多分4千キロ南のディエ
ゴガルシア島へ戻って補給する必要があり、空襲は一段落となる。米統合参謀
本部議長マイヤーズ空軍大将は、
「今後は見えない戦争となる」
 と述べて、特殊部隊による捜索、攻撃に移ることを示唆している。だが、ま
ずビンラディンのおよその所在が分からないことには捜索計画も立てられな
い。アフガニスタンの中央部、5千メートル級に達する山塊は長さ約1千キ
ロ、幅300キロ、津軽海峡から琵琶湖の距離に匹敵する。タリバーンと対立
する北部同盟の支配地域を除いても約500キロだ。

●特殊部隊による捜索
 これまで現地に入った米特殊部隊は約50人と言われ、これではとても捜せ
ない。第10山岳師団の1千人も北隣のウズベキスタンに送られたが、爆撃で
墜落した航空機の乗員救出用、とされる。多数の特殊部隊や山岳兵を送ること
は可能だが、現地はパシュトゥン語、ウズベク語、タジク語、モンゴル系ハザ
ラ語が使われ、通訳に頼って情報収集することになる。

 カブールの北約40キロのバグラム空軍基地は北部同盟が確保し、特殊部隊
輸送用の大型ヘリコプターMH47Eは行動半径が560キロもあるから、全
山塊への部隊投入は可能だ。だが攻撃ヘリAH64の行動半径は250キロ程
度で、護衛ヘリなしの降着作戦で損害を出す場合もありうる。

 地球をほぼ南北に1周90分で回る偵察衛星は目標地域上空をほぼ1日1
回、昼間に通るから、衛星が上に来た瞬間に捜す人物が表にいてくれないと写
らない。解像力が最良でも15センチだから顔までは判別できない。

 ビンラディンが携帯電話や無線機を使えば発信源をつきとめられるが、相手
も用心しているだろう。機械的捜索手段としては盗聴機を山道に仕掛けてアラ
ビア語を話す集団を捜す、とか山道を見下ろす地点にテレビカメラを設置す
る、無人偵察機や観測ヘリコプターで常時監視する、などの方法が考えられ
る。冬になると特殊部隊の行動は困難になるが、一方、山中に隠れている側に
も高山の冬は辛く、気温が低い方が人体や炊事の火が出す赤外線がはっきり出
て、空からの捜索が楽になる面もある。

●作戦長期化は不可避
 米国は北部同盟にテコ入れしてタリバーンを倒し、新政権を樹立することも
考え、73年以来イタリアに亡命中のザヒル・シャー元国王とも接触している
が、パキスタンはこれまでタリバーンを育成し、北部同盟はパキスタンと仇敵
のインドとイランの支援を受けてきたから、米国が北部同盟を支援しすぎれば
パキスタンは硬化し、領空通過も拒否する可能性がある。長期化はまず避けが
たい形勢だ。

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